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音楽と欧州の戦争

 クラシック音楽でどなたも知っている有名作曲家が戦争にまつわる曲をいくつも作曲しています。クラシック音楽好きの方は皆さんご存じと思いますが、その他の方向けにここでいくつかご紹介します。
 まずどなたも知っているロシアの作曲家チャイコフスキー(1840年ー1893年)です。バレエ音楽の「白鳥の湖」、「くるみ割り人形」は皆さん聴いたことがあるかと思いますし、他にも有名な曲がたくさんあります。その彼の作曲で「序曲1812年」があります。この1812年はフランス革命のあと出現したナポレオンがロシアのモスクワまで攻め込んだ年です。これを題材に1880年に演奏会用に作曲された序曲です。この曲ではフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」のメロディーが出てきますが、これが徐々に消えていき大砲の音とともにロシアのメロディーにとって代わるというすさまじい構成です。野外音楽会ではこの大砲音に本物の大砲が使われることもあります。
 またフィンランドの作曲家シベリウス(1865年ー1957年)が1899年にフィンランディアを作曲しています。フィンランドが帝政ロシアの支配下に置かれていた時に、劇音楽の最終曲として当初は「フィンランドは目覚める」との曲名で作曲されました。フィンランド人の愛国心を高揚させる曲であり、当時は帝政ロシアから演奏禁止処分にもなっていたようです。今ではフィンランドでは第二の国歌と言われています。
 次にソ連の作曲家ショスタコーヴィチ(1906年ー1975年)の「交響曲第7番レニングラード」です。彼も素晴らしい作曲家で交響曲以外にも室内楽等名曲がいっぱいあります。第二次世界大戦の独ソ戦でレニングラードがドイツに包囲(1941年から1944年初め)されている最中の1941年に作曲され1942年のに初演されています。戦争と祖国の勝利(の予想)について描かれています。
 チャイコフスキーの「序曲1812年」はやや歴史絵巻的なところがありますが、シベリウスとショスタコーヴィチの曲は、その当時の侵略された立場の心情が音楽に出ていると思います。現在のウクライナでの殺戮は許されません。戦争を鼓舞するのではなく、侵略されることとは何なのかを思い起こさせることが、彼ら天才作曲家の音楽の存在意義ではないかと思います。