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夢追人



大学時代の友人が古本を販売する喫茶店を開くという。

週に一日だけ、それも土曜の朝6時半から11時半の間だけというかなり攻めた時間だけの営業らしいのだが、

たまたま、オープンする日の午前中が空いていたので、ふらっと顔を出すことにした。

その友人とは卒業以来会っておらず3年近くぶりに会う。

少し前、彼がインスタグラムのストーリーズで「冷蔵庫を譲ってくれる人はいないか」という投稿をしていて、目下引越準備を進めていた私が久しぶりに連絡を取ったところ、どうやら店を出すということらしい。

聞くと、店のHPが出来ていて茶葉を販売していたり、YouTubeも始めており毎日のように古本の紹介動画をアップしていた。

大学卒業時には料理人になる、と聞いていたので、そこから考えると色々と不思議な展開ではある。

だがそもそも彼自身がインスタグラムでは作曲して演奏している様子だけがあげられていたり、突然LINEやSNSアカウントが消失して連絡不能になったりと謎多き人物なので、彼について知りたければ直接会うしかない、と思ったのだ。

久しぶりに連絡を取ったという事実からも察せられたかと思うが、彼とは大学時代もそれほどよく会っていたわけでもないし、特別仲が良いわけでもない。

それでもわざわざお店まで一人で足を運ぼうと思ったのは、当時から彼は周りとは違う異質な魅力を持った人物で、この人は将来何者になるのだろう、と思わせる人物だったから。

これは私だけが感じていたことではなく、彼の周りの誰もがその異質さに気付いていたとは思うが。

朝6:30から行ってもよかったのだが、友人のオープン日に手ぶらで行くのも憚られたので、店の最寄り駅のデパートで開店祝いを買っていくことにした。

開店祝い、なんて何を渡すのが正解だろう。
従業員も他にいないだろうし、こだわりの強い彼のことだ、花や形に残るものは邪魔になるだろう。

10時より少し前に駅に着くと、デパートの開店を待つ列に並び、そんなことを考えていた。

デパートが開くと、いつもは行かない和菓子屋のエリアへと向かった。この文の前半に気づいた人はいるかもしれないが、どうやら友人の喫茶店でコーヒーはメニューになく、煎茶を提供するらしい。歳の割に渋過ぎないか。

通販でも2種類の茶葉とお茶屋さんと話して決めた合組と呼ぶブレンド茶葉を販売しており、どうやらここにはこだわりがあるように見える。

ということはきっと彼自身も和風なものが好みだろうと思い和菓子にしたという安直な考えだ。

といってもデパ地下で和菓子を買ったことは一度もない。正直言って、洋菓子と違いどれも同じに見えてしまいどれを選んで良いか分からない。

人が集まっているところなら間違いないだろう、と近づいたのは名店とらや。分からないなら有名店で、と日持ちもいい小さな羊羹の詰め合わせを買った。

店に着くと、彼は「本当に来てくれたんだ」と驚きつつ歓待してくれた。既に客が二人おり、カウンターに座っていた。二人も大学時代の友人らしい。相席のような形でカウンターに腰掛けさせてもらった。

店はどうやらもともと彼の私物らしい古本が至る所に並べられていて、彼はカウンターに座る私たちと喋りながら、煎茶と軽食を用意してくれた。

彼が考案した煎茶はほんのり甘味を感じる飲みやすいお茶で、カリカリに焼いたマフィンに餡子ときな粉を挟んだサンドイッチも、お供としてばっちりハマっていた。

煎茶を飲みながら、彼がこの3年間どう過ごしてきたか、何を目的で店を開いたか、この後どうしていきたいかを、所々ぼかされるところもあったが聞くことが出来た。

少し抜けているところはあるが、大学時代に感じていた彼の魅力は失われることなく、夢を持つ人の言葉としての力が生まれていた。

先客2人もとても良い人で話が盛り上がり、閉店時間を過ぎても居座ってしまい、最後に煎茶と古本を一冊買って店を後にした。

多才であるからこそ、やりたいことが多く時間がないのだろう。没頭して、食事や睡眠をおろそかにしてしまうこともあるらしい。

もちろん事業も上手く行ってほしいのだが、それ以上に、純粋で優しく真っ直ぐな性格の彼が、これから先も健康で幸せにいてくれることを願うばかりだ。

無事ラジオを始められたら、いつか彼を呼んで話をしてみたい。

おわりに



今週は生糸が担当しました。

お店を宣伝したい気持ちもあるのですが、ラジオを始めてもなく宣伝力はないので、思いとどまりました。

いつかコラボという形にできたなら。


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