10海

話を聞かない多動の兄弟に『観える化』は有効なのか。海での小さな挑戦。

先月9月、海に行きました。

一応目的は、妻を迎えに行くこと。
ついでに、ちょっと早く出てお迎え場所の近くで子供を遊ばせることが出来ればいいなーなんて思って海に行きました。

だがしかし、私一人で多動の二人の面倒を見るためにはいくつもの工夫が必要です。

というのも、この『多動』、極端に注意力を欠く突発衝動的な動きをする発達障害で、目を離した一瞬の内に目の前から姿が消えてしまいます。

つまり親が気を抜く事は、すなわち死に直結する事となります。

なので、そんなメンズを一人で連れ出して外出するのには、様々なアイデアと工夫が求められるのです。

なので、まずは行先のアイデア出しをしていくことに。

条件は『誰もいないor人に迷惑が掛かりにくい場所を選ぶ』こと

色々な施設や公園なども視野に入れましたが、その条件を満たすと考えたのが、9月の海辺。

海辺は危険では?と感じるかもしれませんが工夫次第なのですよ。上手くいく確証はないんですけどね。

ということで、成功イメージだけ持って現地に向かいました。

しかし!!

私は自分の目を疑いました。

何と、見たこと無い程の沢山の人が海辺にいる・・・(’Д`)

「お盆過ぎたら海に入っちゃダメ!」って言うの、うちのお母さんだけなのかい?

私のイメージとしては、9月の海は淋しく風が吹きすさみ、荒波が立っている、誰もいない場所という感じでした。

にも関わらずこの賑わい。時代は刻一刻と変化しているんですね。我々の来る場所ではないのかも。

と思いながらも、海辺まで来られる機会もあまり無いので、深呼吸をして車のドアを開け、何気なくチャイルドシートを外しました。

その瞬間、次男猛ダッシュ。

「しまった。順番を誤った!」

本来は手順があったんです。

それは、

『多動兄弟を自由にする前に自分の準備を完璧にしておくこと』

この類の子を育てる親にとっては、あるあるネタですよね。

この場面で言うと、荷物を背負ってから、二男のチャイルドシートを外すこと。
多動を押さえつけながらだと、荷物を背負うのが大変です。

次男は私の左脇下を滑るように抜け出し、音速で駐車場へと飛び出していき、海に向かって一直線。

「ひかれて死んでしまう!」

そう思い、必死で次男を捕える。

そして私は再び車へ戻り、荷物を左手で持ちながら、しっかりと次男の手を握って海辺へと歩き始め…

「長男はどこだ?」

となった、ちょうどその時。

「ゴーッ!」

大きな音を立てて数メートル離れた所を駆け抜けていく列車。

長男は茫然とそれを見ていました。

自閉症の特徴の一つに「大きな音が苦手」というのがあり、長男もその傾向があります。良いか悪いか、長男のテンションは下がり、一緒に近くを歩いて海に向かってくれました。

3分後、海辺に到着。

辺りを見ると、人混みに溢れてはいるものの、漁師さんの小屋?の前ががら空きでした。

立入禁止とはなって無いんですが、何となくここで遊ぶと怒られるかなという感じを受けます。

でも、我が家にはここしか無い。

「漁師さんが来たら避ければいいだろう。」

そんな気持ちでひとまず陣地を確保。隣の家族ともかなり距離を空ける事が出来ました。

そしてすぐさま多動対策としての工夫を実践。

『機動力を可能な限り奪う事』

子供達の機動力を奪うため、2人とも裸足にさせる。
ここの足場はゴツゴツして痛いので動きが鈍るのです。

「我が子が痛い思いをして心が痛まないのか!」

と、お叱りを受けそうですが、多動は俊敏で理性に乏しいことから、命の危機というものがいつも隣り合わせです。

なので我が家ではこれも愛情なのです。

さて、さっそく小石を海に投げて3人で遊びました。

以前来た時、2時間ほどひたすら小石を投げる作業を繰り返していた長男と次男。

今回も同じパターンだろうと思っていたところ、

「海に入ってもいい?」

と長男が言いました。一応想定していたので、着替えは多めに持ってきてました。なのでひとまずOK。

ちなみに次男は水が少し苦手。

でも足だけ海に入ります。

でも結局2人とも海の中で転び、全身ずぶ濡れ。

好き放題させてあげる事もたまにはいいですよね。
きっと「自己肯定感」とやらも芽生えるのでしょう。

しかし夢中になると何も聞こえなくなる2人。

一応浅いですが、ここは海です。
夢中になり過ぎず時々我に返って私の近くに戻ってきて欲しい。

しかし、夢中になってる時は「戻ってきて」「オヤツあるよー」「新しいオモチャあるよ」などの声掛けはほとんどムダです。ADHDの子は、普通以上に声掛けに気が付かないんです。なので、この様な呼びかけは親の発声練習程度にしか意味をなしません。

そこが不安。

そこでADHDに効果がありそうな工夫として、興味対象を『観える化』してみようと思いました。

①オヤツを見せる。

②新しいオモチャを見せる。

③新しい遊び方を見せる。

ある程度遊んだら、これを順番に実践して定期的に戻らせようという魂胆で、準備もしてきました。

まずは①を試してみる。

次男が、続いて長男が戻ります。作戦成功!

私が捕まえた小さなカニを観察しながらオヤツを食べます。

つかの間の平和だ。

オヤツタイムは戦時中のオリンピックみたいなものなんですよね。

その後お腹が満たされた二人は、おもむろにテトラポットに登り始めました。

「隙間に落ちたら出られなくなって死ぬかもしれない!」

そう思い速攻で二人を捕らえに行きました。

しかし、何度引き戻してもテトラポットに行く2人。
しつこいんですよね。
悠長に②と③を試している場合ではなくなりました。

そして再び次男を捕らえている間に、長男はテトラポットの低い位置から海に転落。隙間側じゃなくて本当によかったですが、

「こらアカン、すぐ帰ろう!」

そう決心し、カバンを肩に掛け、次男を左手で抱きかかえて、右手で長男の手を引き、車に戻りました。

限界を超えた力を引き出せた瞬間です。(我が家ではよくあるんですが・・・)

そして車に到着。二人とも砂や泥が付いてましたが、ひとまず車に押し込みます。

車が汚れはしますが、なにより命の危険は無くなりました。一安心。

全然計画通りに行かないのが我が家。ドキドキしましたが、私以外の約2名は楽しめた様子で、わめきもしません。本当に良かった。

知識がない、時間がない、そんな人に理解させるための『観える化』
見ようとしなくても自然に目に入り理解できてしまう、そんな工夫のことを言いますよね。

なので、本来子供にも効果はある発想だとは思ったんですが、差し迫ったピンチの場では力技しか対応策は無いのかもしれません。

その後妻を迎えに行き、無事帰宅。

風呂に入れる時、子供の足を見た妻は、

「足、キズだらけじゃん!今度からサンダル履かせろよ!」

色々考えた結果、子供の足にキズが付いたわけですが、言い訳するといい事はありません。私からはただ一言。

「はい。」

とだけ答えます。過程より結果を求められる、そんな環境に慣れたサラリーマンの処世術ですね。

今後も、ビジネスシーンでの発送を子育てで試すことがあればご紹介します。

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