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彼方の炎が導べ也

俺と徳さんの取り止めもない立ち話は、突如響き渡った轟音で打ち切られた。思わず身を縮こまらせた俺たちは、恐る恐る音の方角を見やる。見慣れた駅のホーム、終点の車両止め、遠くに見える緩やかな山体、その向こうから禍々しい爆煙が立ち上っていた。

「なんじゃ…ありゃなんじゃ?!」

「とりあえず車内に入ってろ!動くなよ!」

慌てふためく徳さんをよそに俺は無線を鳴らす。何を呼びかけても帰ってくるのは雑音ばかり。そうこうしているうちに爆煙は更に巨大化していく。あまりの威容に青空も色を翳らせたように思えた。いや、気のせいではない。空が闇に包まれていく。ホームに留まった列車からは菊さんが不安げに空を見上げている。

「列車に入ってろって!」

「駐在さん、あれ!」

菊さんの指さす先を見上げると、闇夜に見慣れない物体が多数浮かんでいた。いや、その丸みを帯びた形や、機体から伸びる4本の降着装置自体は見慣れたものだった。向こうとこちらを繋ぐ、ありふれた乗り物。

精霊馬しょうりょうば…?」

茄子の形をしたそれらは爆撃機の如く上空を飛び、人型の何かをばら撒いていった。そのひとつがこちらへ急速に落下してくる。

「おい!列車から出ろ!」

乗客がホームへまろび出ると同時に大音響が鳴り響き、車体が凹の字状にへこんだ。俺は列車をへし折った存在に向けて跳躍。右手に力を集中させる。やるしかない。

拳を叩き込む刹那、ようやく相手をしっかりと視認できた。どこからどう見ても地獄の鬼。俺は恐怖を堪えて拳を振り抜く。鬼の頭部は一瞬で消滅した。勢いに任せて鬼の横を通り過ぎる俺の脚を何かが掴んだ。振り返る。鬼が俺の脚を掴んでいた。その首の切断面には骨肉ではなく、火花散らす機械があった。凄まじい勢いで引き戻された俺の身体が地面に叩きつけられる直前、突撃銃を引き出した徳さんたちが駆けてくるのが見えた。やめろ。帰る前に消えちまうぞ!

【続く】

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