回想録 0才名前

"和枝ちゃん"
だったはずのお腹の子は入れ替わった。
そこからは。もう呼ばれなかったよお見事です。

「なにかが違う」と感じたそうだ。
かといって別の名前も思いつかず、わたしはなにとも呼ばれなかった。

その通りだよ、そうだよね。
母の勘ってすごいよね。

みんなどこかで。あらゆるすべてをわかってるんだ。

わたしは予定日よりも出来る範囲で早く産まれてきた。ひかりの消える新月に。

肉体から離れてしまった、その年のうちに戻ってきた。

(しかし戸籍は翌年になっている。後ろめたい気持ちもあったけど、このことでわたしがどれだけ護られたのか、どれだけの護りを受けたのか、今ならわかる)

生まれても、まだ名前はつかなかった。
いわく「わからないままだった」から。
困った両親は届けの期限ぎりぎりに、名前を神社に聞きにいった。

"直美"

("聡美"の提示もあったけど、近くに同じ名の子がいるので半ば自動的にそうなった)

直美の「直」は、直ぐにの直だ。
その通り。わたしは直ぐに生まれてきた。
しんだまま、そのままここまで来てしまった。

しかもルツ記の由来じゃないか。
かみさまって、なかなかみている。


ほんとうだったらこうはならない。

あれがはざまだったから?
やれてしまったのだ。

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