見出し画像

「いまさら翼といわれても」を読んで

古典部シリーズでお馴染みの米澤先生。なにを隠そう、僕は古典部シリーズの大ファンで、「氷菓」から「ふたりの距離の概算」に至るまで、欠かさず本シリーズを読んできました。

だから驚きましたよ。新刊が刊行されていると知ったときは。

古典部シリーズは「ドリフターズ」という刊行ペースが遅いことで有名な激烈面白いマンガと似通ったところがありまして、いつ発売されるかわからない故に、見落としがちになってしまうんですよね(笑)。聞けば本作、二年前には刊行されていたみたいで、盲目だった自分が恥ずかしい……。バイトに忙殺されたツケがここにきて回ってきたみたいです。

と、余談はこの辺にして、

本作も最高でした

はい。余計な言葉はいりません。この一言で十分かと。

本作はいくつかの短編を含んだ六つの話で構成されているのですが、中でも震えたのは「鏡には映らない」と「長い休日」です。まさかここにきて、奉太郎の過去が掘り返されるなんて、誰が予想したでしょう。なぜ奉太郎が少エネ主義を取るようになったのか、友達が少ないのか、そんな当然すぎて疑問にすら思っていなかった謎が、本作で明かされています。いや、驚きですよ。まさか奉太郎が昔はあんな……危ない。ネタバレは避けないと。

と、そんな奉太郎の過去を明るみにした後に、締めとして収録された「いまさら翼といわれても」は、心地良いもやもやを残してくれます。謎は解決した。でも、そのその先が気になって仕方ない。そんなワクワク感と消化不足感を与えてくれます。ここまで続きが気になるのは、鬼滅の刃の最終決戦以来ですよ。小説でここまで興奮したのは初めてかも知れません。

元は京都アニメーション制作の「氷菓」がきっかけで読み始めた古典部シリーズですが、今では僕も一米澤穂信ファンです。といっても、古典部シリーズと、季節限定事件シリーズしか読んでいないので、ここから折れた竜骨、さよなら妖精、などの名作を読んでいきながら、より米澤ワールドの沼に浸かっていきたいと思います。

……あれ? ゲームのシナリオライターを目指してるのに、ライトノベルっぽい作品をあまり読んでいないような……

まあ、文学に通じているから問題ないでしょう。ボキャブラリーが増えればそれは立派な経験なんです。

古典部シリーズの魅力は、甘酸っぱい青春と仄かなミステリーです。ノックスの十戒を始めとするミステリーの鉄則をよく理解していない僕でも、このシリーズは心から楽しんで読むことができています。

現在刊行されているのは六冊。まずは一作目の「氷菓」から気軽に読んでみてください。きっとすぐに最新作に追いつくはずですよ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?