見出し画像

2泊3日キシナウ(モルドバ)観光

夜行列車プリエテニア号に乗ってブカレストからキシナウまで出てきました。モルドバの首都キシナウです。いい意味で斜め上の方向に期待を裏切ってくれました。


【なぜキシナウ】

プリエテニア号に乗ると行きつくから、どうせならちょっと覗いてみようかな。最初はこれだけ。ランドマーク的な教会や凱旋門などはあるのですが、とくにこれを見たいというものもなく。でも、物価が安いからとか通り道にあったからというだけで滞在してつまらないとか文句言うのはワシの主義に反するので、自分ならどう楽しめそうかググりました。どうやらモルドバはルーマニアに近い文化を持っていて、ワインが美味しくて、キシナウの街はゆっくりお散歩できそうで市場がある。よし、ワシルーマニア好きだからモルドバ料理も気に入るかも、散歩して市場を見学しよう。機会があれば普段のまないワインも挑戦してみようかな。旅の終わりに異国でゆっくりするのもいいかもしれない。それでデュッセルドルフへのフライト(毎日運行ではない)まで2泊することに決定。

【早速旧ソ連味を感じる】

まずは街中の宿まで移動です。せっかく物価の安い国なのだしタクシーに乗れば楽々悠々なんだろうけど、現地の公共交通機関は大好物。しかしルーマニア同様に車内でカードタッチで決済は……期待できなさそう。でも券売機や券売所は見当たらない。はい、そのへんの人にききます、下手くそなロシア語で。どうやら車内で買えるとのこと。その言葉を信じて乗ってみると、チケットと現金を手に持った女性がいた!これあれだ!中央アジアとかでよくあるパターンらしいやつ。運転手から買うんじゃなくて、チケット担当者が車内をウロウロしているやつ!そして釣銭に余裕ないから小銭持ってないといけないやつ!ただしATMは50DMLと200MDLしか吐いてくれなかった……運賃は6MDL。「ゴメナサイ、ワタシ、ナイ、小サイお金」幸い釣銭の余裕があったようで無事お釣りをもらえました。チケット2枚切られたのはなぜかわからない。スーツケースの分かな…?(6MDLは€0,3なのでまあいっかと)

チケット。トイペみたいに巻かれてて、ゴムか何かで指に指輪のようにつけている。

車内は満員。そしてロシア語しか聞こえてこない(少なくともワシの耳にはロシア語にしか聞こえない)。そしてみんな仏頂面というか、ドイツとかだとよくある目があったら軽くニコッみたいなのは皆無。あー、なんかこれまでドイツ語コースとかで知り合った、ドイツに来て日の浅いロシア人思い出すなぁ。別に敵意とかがあるわけじゃなくて、デフォルトでこうなんだっけ。でもジロジロ見てくるとかあえて目をそらすとかそういう素振りはナシ。満員で真ん中に立ってしまったせいで、どのつり革にも手すりにも手が届かない。「Девушка(ジェーブシュカ:ねえちゃん)!」と聞こえ「え、ワシ?」おっちゃんが場所を代わってくれた。やさしい。観光客か、どこから来たんだ?ときかれる。おお、早速実践ロシア語じゃないか。「ニポン人、でもドイツ住ンデル。ツーリスト!」「モルドバは初めてか?」「モルドバ、まだいたことない。今日、最初ノ日」その後も話は続いたがわからないので「ワタシ、ワカラナイ。ロシア語、とてもチョットだけ」満員なので降りるのも大変。道ができるのを待ってたら多分発車される…「イズビニーチェ!スクーザ!エントシュルディグング!エクスキューズミー!」もう叫ぶしかない。叫んだらどうにか降りれた。この時点で恥ずかしいとかそういう心のブレーキは壊れた

【なんか居心地がいい】

大通りで下車して、宿へ歩きます。わき道に入って2本目で曲がったらすぐなのね、余裕余裕。じゃなかった。通りと通りの間が広い!しかも歩道はボコボコ。スーツケースはほぼ浮遊状態で運ぶ羽目に。歴史的な石畳の道で転がしにくいとかじゃない、ただ舗装がボコボコなだけ。しかも路上にめちゃくそ人がいる。

反対側に移動したらいくらか空いていた。この路上市をみて「チャンマダン」という語が浮かぶのはワシだけではないはず。

スリとか押し売り怖いなと思ったけれど、怪しい人もおらず地元の人が集まってモノの売り買いをしているだけでなんでもなかった。ほー、スーツケース抱えて旅行者か、くらいでジロジロガン見とかもなし。国際的な街とか多様性とかそういう形容はされているところを見たことがないけど、みんな意外といろんな人間がいることになれているのかなんなのか、中央アジア系と思われて旧ソ連圏だと珍しくもないのか。居心地よかったのは確実。

その後宿に帰って地図をチェックして気づいたのですが、この通りは中央市場脇で、おそらく市場のながれでそのまま路上販売スポットになっているのでしょう。売ってるものは衣類や野菜、フルーツから自家製と思しき乳製品や手編みの靴下まで何でもあり。その日はもう市場は閉まっていたのですが、翌日再挑戦すると開いていた!

市場の中はこんな感じ。展示方法がアジア。
初日の通りとは別のところ。市場の外ではあるがお店が連なっている。店主が歩道で昼寝してるくらいのどか。

路上販売、市場、お店通りと徘徊に徘徊を重ねる。こういう雰囲気からしか接種できない栄養がある。そして「さっきも買ったよね?」「いつ使うの?」の自問自答しながらも色々買ってしまう。刺繍柄のテーブルクロス、おばあちゃん家にありそうなベタな花柄の食器や鍋、おばあちゃんが肩から掛けてそうな布、おばちゃんが頭に巻いてそうな布とか。
ちなみに路上販売も市場もお店通りも、よそ者だからと邪険にされることもなく普通に買えます。売り手も客も中高年がほとんどなせいもあって英語はほとんど通じないけど、下手なロシア語でもどうにかなったし、指差しでもイケるかと。値段は電卓に打ってもらいましょう(というか、あコイツあんまロシア語できなさそうと察して電卓で見せてくれる人もいる)。

なんだろう、この、イスタンブールとルーマニアを混ぜてソ連(概念・イメージ)エッセンスを垂らして田舎にした感じ。カテゴリ的には地元の東北の田舎の鄙び街と同じ雰囲気。すごいしっくりくる。心象風景ってやつなのかな。シビウやブラショフもしっくりくるのだけど、ここもしっくり。大通りに出るときれいに整備された道や公園や建物が出現するのですが、このローカルエリアが最高です。グーグルマップで「Piața Centrală」で検索すれば出てきます。この一帯この雰囲気です。

【ロシア語】

どこに行ってもロシア語で話しかけられました。おそらくワシがロシア語話しそうに見えるというよりも、こいつルーマニア語・モルドバ語*は通じなさそうだな、そうだインターナショナル言語ロシア語で話しかけよ、っていう流れなのかと。多分、我々の中での英語のポジションにあるのがロシア語。まあこちらとしてもルーマニア語・モルドバ語よりはわかるのでありがたい。
*言語的にはほぼ同じらしいですが、政治的な理由でモルドバ語と呼ぶ場合もあるそう。ほぼ同じといっても、ルーマニアのルーマニア語とはいろいろな意味で違いがあるそう。
ルーマニア語・モルドバ語はバリバリ現役で母語として話されているそうですが、街中でも聞こえてくるのはロシア語(に聞こえる言語)ばかり。メニューや看板、広告などはルーマニア語でも。ソ連世代の中高年だけではなく子供や若い人でも。もしかしたら、モルドバはウクライナがすぐそこなので、今の情勢的にロシア語やウクライナ語(聞き取りではワシには区別がつかない)を話す人が増えたってのもあるのかも。なんにせよ、英語はほぼ通じない。もちろん英語を話す人もいるしコーヒーの注文くらいなら英語でイケましたが。ロシア語に対する現地の人々の感情はどうなのかわからないけれど、ロシア語で話しかけられるしロシア語のほうが意思疎通できるならと常にロシア語でした。

【ローカル食堂と総菜パン】

モルドバご飯が食べたい、できればローカルところがいいな、とググって出てきた食堂に突撃しました。ママリーガ、パン、チョルバあたりが並んでいる風景を想像していたのでしたが基本ロシアっぽいメニュー構成のようで、目に飛び込んできたのはソバの実のカーシャ。お前、グレーチカではないか!以前寮で一緒だったロシア人とウクライナ人が分けてくれたことがあるのですが、とてもおいしかった記憶があって。迷わず注文。一緒に肉の煮込み(後にツイッタでгуляшではないかと)も注文。うん、美味しい!

朝ご飯だったので軽めに。リンゴのкомпот(フルーツジュース)も。合計66MDL(€3,5)

名前がわかるもの以外、指差しで注文です。トルコのロカンタと同じことしてる。というか、店の雰囲気がまさにロカンタ。

別のローカル食堂にて。ケフィア、優しい味のザワークラウト、ほんのり甘いスープ(ゴロゴロ肉入り)、肉入りパイ的なモノ、煮込み肉とグレーチカ。131MDL(€6,8)

左下の丸いやつ、肉がちょろっと入ってるのかなくらいのテンションで頼んだらこの詰めっぷり。

景品表示法の優等生
茹でペルメニ(ちゃんとお肉入ってる!)、ケフィア、コンポット(多分イチゴ)。56MDL (€2,9)

このケフィア、ほぼ食べ物では?という飲み物の限界点にありました。スープより飲み物レベル低い。味はヨーグルト。塩入れても美味しいかも。コンポットはオレンジ、リンゴ、イチゴ、ザクロなどいろいろあり。冷たいフルーツジュースと思っていればOKです。
ちなみにどこも基本薄味でした。ドイツのメンザ(食堂。大学や会社とかにある)だと塩辛いのが常なのに。ルーマニアもだけど、こっちまで来ると味覚文化も大きく違うのかも。

街を徘徊していると、キオスク的な窓口で売ってるパン屋さんがいたるところにあります。普通のサンドイッチや揚げもの的な何かもありましたが、ワシの目を引いたのはウィンナーロールもどき。再び脳内で叫んだ「お前、ウィンナーロールではないか!

空港に行く前に買い込んでおいたレベルで気に入ってる。

お店によってサクサク生地のところやしっとり系、ゴマ付きのものなどいろいろ。20MDL(€1)もあれば買えるし、中身がぶにゅッと出てリュックの中で大惨事になる危険性もないので拾っては食いを繰り返す。ケチャップなどはかかっておらず、ソーセージ(アメリカンドックに使われてる系)の味とパンの味で美味しく完結しているのです。他にもキャベツやジャガイモ、チーズ、ジャムをパイ生地で包んで渦巻き状にして焼いたものとか、しょっぱいクッキー的なモノもあり。おやつには困らないです。

【観光地化してない】

まずキシナウ駅にATMがない。少なくともワシは見つけられなかった。けれど小さい駅なので、くまなく探しても見つからなかったってことは、多分「ない」で間違いないと思います。グーグルマップで検索しても、検索結果の場所になかったり、最寄りのATMまで割と距離あります。プリエテニア号で到着した瞬間から、ああ観光地ではないのだなと思い知らされます。(*空港にはありました。)
だからといって外国から人が来ること自体を想定していないわけではなさそうです。というのも、街中では歩けば両替所に当たるくらい両替所がいっぱい。ATMの数といい勝負かも。米ドルやユーロはもちろん、ルーマニアレウなど近隣諸国の通貨も取り扱われていました。ATMで手数料掛けて(どうしても回避できなかった)あまりよくないレートでユーロ建て口座から現地通貨を引き出すより、Revolutなど為替のいいところでルーマニアレウに替えておいてルーマニア国内で引き出したルーマニアレウの現金を両替所でモルドバレウにした方がオトクだったかも…とか。
そして土産屋がない。巨大な中央市場にも、大通りにもない。ググると一応あるにはあるのですが、どちらかというと工芸品や刺繍、民族衣装、ワインをギフトとして取り扱っているお店ばかり。モノはイイのでしょうけど、それなりにお値段もします。他の国によくあるコテコテのものをじゃらじゃら売ってる系統のお土産屋さんはなかったです。
実際街を歩いていても、観光客っぽい人は見かけなかったですね。いないわけではないんでしょうけど。

【まとめ】

市場&路上販売、ローカル食堂、総菜パンにハマるという予想外の楽しみと想定外のロシア語実践環境で、とても実りと学びの多い滞在になりました。いい意味で無関心というか、排他的な雰囲気を感じることもなく、親切な人にも出会い、下手な西欧観光地より居心地がよかったです。宿付近の停留所では小さな日陰におじいちゃんおばあちゃんおじちゃんおばちゃんとおしくらまんじゅうで座り、このことをツイートしようとしていたらおばちゃんの一人に「ねっちゃ!30番来たよ!あんた空港行くんだろ!」と声をかけられ、発車時刻と全然一致しないけど空港に行くらしいトロリーバスに乗り、おしくらまんじゅう仲間に盛大に見送られて空港へ行ったくらい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?