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時短で浮いた時間の使い方

倍速再生による情報の損失はほぼないと考える。ゆっくり食べても急いで食べてもお腹にたまる量は一緒のはずだ。情報の摂取という観点で見ればタイパ重視は理に適っている。

一方で体験の質は確実に低下する。知識を得ることと体験することは似ているようで大きく違う。体験は何を得たかではなく、何を感じたかに重点が置かれる。それはすなわち自分を知るということである。

映画の主人公が沈黙して再び話し始める1秒の間に視聴者の感情は揺れ動く。それが倍速再生で0.5秒になっても情報は損なわれないが、感情の振れ幅は小さくなるだろう。倍速再生は受け取る人間の脳までは高速化してくれないからだ。

よし、それなら標準速度で観賞しよう!

とはならない。映画ならおよそ2時間もの間、ずっと感情が最大限に揺れ動いているわけではない。感情を揺さぶるには緩急が必要になる。制作者は当然そのことを知っているし、視聴者もそのように制作されていると信じている。

だからやはり全体を倍速再生で観る。その代わり、観て終わりにはしない。人間には記憶という能力があり、好きなときに好きな場面を思い出して再体験することができるのだ。

脳内再生なら2倍速にすることも1/2倍速にすることもできる。感情の揺らぎを何度でも思う存分に味わえる。