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魔王の気持ち

生きとし生けるもの、すべての願いが叶う世界であってほしいが、そうは問屋が卸さない。魚が飛べるようになるかはまだ本人の頑張り次第で一縷の望みがある。問題は誰かの願いが別の願いを妨げるケースだ。自由はときに競合し、争いを生む。

破壊と混沌を願う魔王がいて、それを望まない人々がいる。一方の願いが叶えば、もう一方の願いが叶わない。おとぎ話だと、力で支配しようとする魔王に対して、勇者がそれ以上の力でねじ伏せるというマッチョな展開で大団円を迎える。

まあ、力づくで我を通そうとした魔王が悪い。頭を使えという話でもない。自分の自由のために他人の自由を奪おうと考えた時点で、自分の自由が他人の自由に阻止されても文句は言えないのだ。では、どうすれば良かったのか。

海辺で砂の城でも作って壊していればいい。混沌は知らん。

わかってるよ、それじゃあ満足できないってことは。でも、どうしようもない。他人を巻き込むタイプの自由は相手がそれを望む場合にのみ許される。破壊と混沌を望んでしまった運命を呪うしかない。

世界は魔王を愛さなかった。生まれる世界を間違えたのだろう。勇者に討伐されるのは本望だったかもしれない。次は破壊と混沌が皆に歓迎される世界に生まれるといいね。