食券をテイクアウトした話

声が通らない。あと、無意識に気配を殺しているのか存在感が薄いようだ。おそらく前世はニンジャだったのだと思う。なので拙者、基本的に飲食店が苦手でござる。

最近のファミレスは店員呼び出しボタンがあったり、呼び出すまでもなくタッチパネルで注文できたりして便利になった。牛丼チェーンの松屋も今はモバイルオーダーが可能なようだが、昔はそんなシステムもなかったので食券を買ってカウンター席に着いた。

が、店員さんが食券を取りに来ない。「すみません」と声をかけても奥から出てくる様子がない。もう一度「すみませーん」と呼んでみるも他にお客さんのいない店内は静まり返っていた。

白昼夢か？
甲賀の幻術なのか？

三度目の「すいませーん」は強めに言ったつもりだったが、実際には心が折れていて声になっていなかったかもしれない。店員さんは最後まで現れず、ニンジャは店を後にする。

帰りに寄ったコンビニで焼肉弁当を買う気にはどうしてもなれなかった。なぜならさっき購入した牛焼肉定食の食券がまだポケットに入っていたから。家で食べた悲しみのたまごサンドはそれでも美味しかった。