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『Il Cantico del Sole』誕生秘話


第4話 リトアニアに昇る太陽


 湯田宛に楽譜が送られてきてから、インフィニは多くのカルツァス作品を演奏してきた。そして、インフィニは2017年にリトアニア演奏旅行を催行した。団としては初めての演奏旅行であったにも関わらず、行先をリトアニア一国に絞り、現地の合唱団と深く交流することを目的に、1週間の中で4回のコンサートを行うという強行スケジュールを組んだ。練習、本番、練習、合間に少し観光、また練習、それから本番! といった調子で歌い続けた。旅行中には、カルツァス氏が教鞭をとる学校を訪れ、指揮法の授業の見学、学内見学、校内の立派なホールをお借りして練習をさせていただいたこともあった。

 現地で5つの合唱団と共演し、リトアニアの芸術、合唱から多くの刺激を受け、迎えた最後の演奏会。リトアニアでの全ての演奏会を終え、現地合唱団やカルツァス氏との交流が大いに盛り上がった打ち上げパーティーの中で、インフィニは動いた。

 インフィニにはずっと、カルツァス氏に伝えたい想いがあった。「私たちに曲を書いてほしい」それはいつか叶えたいと思っていた願いのひとつであった。答えを待つ間、一同は緊張した面持ちで耳を澄ませていたが、カルツァス氏はすぐに快く引き受けてくれた。その答えを聞いて皆が喜び、場が沸き立った。そこでテンションが上がってしまった湯田は「組曲がいい」と軽く発言したが、その時点では誰も予想していなかった。翌2018年の夏、10曲からなる組曲「Il Cantico del Sole」が手元に届くことになるとは。湯田は仰天しひっくり返った。想像していたよりもかなり早くにこのような大曲が送られてくるなんて! その知らせは団員にも大きな衝撃を与えた。

 楽譜を手にしたインフィニには新たな夢が生まれた。いつか日本でこの作品をカルツァス氏と演奏したい。こうしてプロジェクトは動き出した。

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