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コーラス・インフィニ☆~リトアニアを巡る合唱と親善の旅~②

Part2

 3月24日金曜日の朝、私たちはホテルからほど近いところにある、杉原桜公園を訪れた。ヴィリニュスを流れるネリス川沿いの公園には、たくさんの桜が植えられている。春にはまだ早かったのか、桜の蕾は閉ざされたままではあったけれど、公演名でもあるsakurosを目にして、なんとも言えないくすぐったいような嬉しさを味わっていた。演奏旅行三日目の今日は、杉原記念館のあるカウナスで、コンサートMūsų sakurosが行われる。バスに揺られて一時間半、インフィニ☆は杉原記念館を訪れた。日本にいる間、ずっと思いを馳せてきた地にようやく辿り着いた私たちは、日本の皆様の想いを館長さんに手渡した。たくさんの人々のお心が海を越えて届いた瞬間は、胸が熱くなった。杉原千畝さん、そしてユダヤ人の人々を救った勇気ある人々の決断とその功績は、未来へと語り継ぎ、受け継いでいきたいものである、と強く思う。インフィニ☆はこれからもこの地を思い続ける。歴史を忘れないこと、大切にしたい想いを失わないために何ができるか、いつまでも考え続けていく。

杉原桜公園
杉原千畝記念館


 記念館を出ると、私たちはチュルリョーニス美術館を訪れた。タイトなスケジュールの中ではあったが、画家であり作曲家であるチュルリョーニスの世界に心を動かされる瞬間も多く、各々が熱心に絵を見つめている姿が印象的であった。続いて訪れたのは、民族楽器博物館。民族衣装をまとったガイドさんに案内され、この地域に伝わる様々な楽器を見て、触れて、奏でることができるユニークな博物館で、古くから伝わる歌を歌ったり持っているのがやっとな長―い木製の笛のような楽器などで演奏してみたりと見学を楽しんだ。

国立チュルリョーニス美術館
民族楽器博物館にて


 辺りが暗くなり始めたころ、Mūsų sakurosカウナス公演が開演した。Chorus Viva、Cantate Domino、Varpelis。女声合唱団、室内混声合唱団、少年合唱団と性質の異なる三団体とのジョイントコンサートは、それぞれの色が濃く表れ、団体によってがらりと変わる会場の空気を楽しんだ。合同合唱では、幅広い世代の混成合唱で「瑠璃色の地球」の厚みのあるハーモニーを味わった。演奏会の最後に、カウナス市のサプライズでセレモニーが行われた。セレモニーの中でインフィニ☆は、杉原千畝を偲ぶ芸術的な取り組み、また、東京とカウナスの文化交流の発展への貢献に対して、と市章の彫られた美しいガラス製の記念品をいただいた。

Mūsų sakurosカウナス公演
カウナス市からの記念品



 演奏会後の打ち上げでは、ツェペリーナイの具がチーズやキノコのものや、ツリーのような形をした伝統菓子、シャコティスなどを味わった。とげとげした突起のある円柱状の巨大な物体を不思議そうに眺めていると、リトアニアの紳士が親切に教えてくれた。例えるならバームクーヘンをクッキーにしたような味で、リトアニアでは祝いの席などで食べられるそうだ。砕いて一口大にしたものをぽりぽりと食べているとなかなか癖になる美味しさで、お土産にといただいたシャコティスを私はその後もホテルで何日間か食べ続けた。

シャコティス



 3月25日土曜日、四日目は束の間の休息の日である。珍しく、昼前に集合というのんびりスケジュールであったので、自由時間には石畳の美しい旧市街を散策するなど、各々が思い思いの時間を過ごした。午後はヴィリニュスでの演奏会で交流する合唱団Lieposとの合同練習に向かう。生憎の空模様と連日の疲れになんとなく視線も下向きになってくるが、そこにやってきたのは穏やかな頬笑みが素敵な年上の女性たちだった。そこでLieposから歌のプレゼントのサプライズがあった。贈られたのは「夏の思い出」。日本から遠く離れた場所で耳にすることになるとは思わなかった懐かしい曲を温かな音色で奏でられ、じんわりと胸が温もった。少ない時間ではあったが、団員同士で合同曲について話す場面も見られ、充実した練習となった。

合唱団Lieposの皆さんからのサプライズ演奏


 夜はコンサート組とバレエ組の二手に分かれ、ヨーロッパの芸術を肌で味わった。学生時代の演奏旅行ではできなかった、大人の旅行ならではの楽しみであり、着飾って芸術鑑賞にやってくるお客さんたちの社交場のような、休憩時間のロビーの様子なども興味深いものであった。プログラムはどちらも大満足の内容であったようで、帰り道や翌日のバスの中でも興奮した様子で語られていた。

ヴィリニュスの夜


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