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48-1.CBTとユング派の対話は可能か☆事例検討の可能性

特集:心理支援技能を磨く

下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.48-1

体験講習会オンデマンド配信

『セルフ・コンパッションを体験し、習得する』

*8月9日より、講習会動画オンデマンド配信開始*


【構成】全4回 各回約90分
第1回『マインドフルな気づき』
第2回『共通の人間性』
第3回『しんどい感情との付き合い方』
第4回『他者へのコンパッション』

【講師】中野美奈(福山大学准教授)
【講師書籍】マインドフルネスのすべて
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=295083

【申込】8月8日(木曜)までに下記より申込
第1回のみ(1200円):https://select-type.com/ev/?ev=kSEsspm2_lg
第2回のみ(1200円):https://select-type.com/ev/?ev=DablP4OTsig
第3回のみ(1200円):https://select-type.com/ev/?ev=k_wTUyUlnTU
第4回のみ(1200円):https://select-type.com/ev/?ev=OpwDPeg5JlU

全4回全て(4000円):https://select-type.com/ev/?ev=Tz-Q4rJo3nQ

【費用】各1回分1200円、全4回分4000円

【視聴期間】2024年8月9日(金曜)〜9月10日(火曜)

中野美奈 先生

事例検討による技能研修会

パニック症の事例検討によるケースフォーミュレーション技能研修
―認知行動療法とユング心理学との対話を通して―

【日程】7月28日(日曜)9時〜12時
【プログラム】
◾️事例「慢性化したパニック発作で苦しむ30代後半の女性の心理支援」
−幼児期に「一人になる恐怖」「悪夢」「貰い子想念」のあった事例−
◾️事例発表 下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)
◾️指定討論1「認知行動療法の観点から」田中恒彦(新潟大学准教授)
◾️指定討論2「ユング心理学の観点から」大塚紳一郎(大塚プラクシス主宰)
【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=JfVKAZnid7M
[iNEXT有料会員以外・一般](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=LJNroITK6do
[オンデマンド視聴のみ](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=P6SbOairOEk




1.      最近、満足できる「事例検討会」に出ていますか?

心理職の技能向上に欠かせないのが事例検討会です。ところで、皆さんは、事例検討会というと、ご自身が所属する職場、大学研究室、学派などの固定メンバーのカンファレンスを想定してないでしょうか?あるいは、初心者が発表し、ベテランの心理職がコメントをするスーパーバイズ型のカンファレンスを想定していないでしょうか。

考えや経験が同じ集団の事例検討会は、安心できる反面、その場の枠を超える発展性のある議論が起きにくいという限界があります。また、スーパーバイズ型事例検討会では、発表者は受身的になるだけでなく、ベテラン心理職のコントロールを受けることにより、自由な議論ができない可能性が出てきます。このような事例検討会は、古いタイプの、限界のあるカンファレンスです。

本来、事例検討会には、心理職の学びを豊かにし、新たな心理支援の方法を開発する豊かな可能性があります。事例検討会では、自分がケースを出して検討してもらうだけでなく、他者のケース発表を聞き、そこでの議論に参加することで多くのことを学び、習得できます。自身とは異なる経験や方法を知ることで視野が広がります。事例検討会での出会いによって人間関係も広がります。現場の実践から新たな方法を発展させる豊かな可能性が事例検討会にはあるのです。


2.      臨床心理iNEXTが提供する多様な事例検討会

臨床心理iNEXTでは、このような古いタイプの事例検討会の限界を超えて心理職が多様な学びができるオンライン事例検討会を提供しています。本誌でも冒頭でご案内している「パニック症の事例検討によるケースフォーミュレーション技能研修」は、比較的ベテランが事例を発表し、認知行動療法とユング心理学の立場の中堅心理職がコメントをし、新たな心理支援の可能性を議論する新しいスタイルのカンファレンスです。
https://note.com/inext/n/n93ab2493c71a

臨床心理iNEXTは、これまでもこのようにベテランやエキスパートと呼ばれる心理職が事例発表をして若手がコメントするといった権威フリーなカンファレンスを提供しています。
このような権威フリーな、学派を超えたiNEXTカンファレンスの記録は、書籍化もされています。
◾️事例検討会で学ぶケース・フォーミュレーションー新たな心理支援の発展に向けて
https://tomishobo.com/catalog/ca178.html

もちろん、それだけでなく、心理職を目指す院生や若手心理職のための学習のための事例検討会も企画しています。例えば、今年(2024年)の8月28日の夜(午後7時〜9時)には、クライエント中心療法の創始者のカール・ロジャーズがグロリアという女性と面接をした動画を事例とする事例検討会を開催し、共感技能の学習を目指すカンファレンスも実施予定です(参加募集は臨床心理マガジン48-3号で告知します)。


3.    事例検討会を支える理論及び体験学習も提供します!

また、上述のような共感技能の習得に役立つセルフ・コンパッション講習会も並行して提供します。これについては、本誌の冒頭でご案内しているオンデマンド版体験講習会「セルフ・コンパッションを体験し、習得する」がそれにあたります。セルフ・コンパッションとは、自分に対して“思いやり”や“慈しみ”を持って接することを意味します。

そうすることで自分を否定したりすることなく、ありのままを受け入れて自己肯定感を高めていきます。さらに、セルフ・コンパッションでは、自分への思いやりだけでなく、他者への思いやりも大切します。つまり、「自分を大切にし、他者も大切にする」という共通の人間性という意味を持っています。まさに共感技能を高めるために必要な知識と体験を習得できるのがセルフ・コンパッション講習会です。

このように臨床心理iNEXTでは、心理職の専門性の中核技能を磨くための多様な事例検討会と、そこでの学習をサポートするための理論、知識、体験を提供する研修会や講習会を提供していきます。


4.      多様な事例検討会がある!

身内で固まりやすい日本では、心理職も同じ大学、学派や職場のメンバーのグループ内に閉じた事例検討会が多くなっていないでしょうか。安心を求めるのは良いのですが、いつも同じメンバーではマンネリ化して新たな技能や発想を学ぶことができなくなっていることはないでしょうか。

考えてみると事例検討会は、いろいろなタイプがあることがわかります。まず、「どのような構造の事例検討会か」ということがあります。スーパービジョン型や教育型では、どのようなエキスパートを指導者とするかによって、さまざまなテーマを学ぶことができます。
①スーパービジョン型:発表者が指導者からスーパービジョンを受けるのを参加者が観察学習する」
②教育型:発表ケースについて参加者が議論し、それに対して指導者が教育的な視点で指導を行う」
③ファシリテーター型:指導者は発表者と参加者の議論をサポートし、問題理解が深まるのを促す」
「④デイスカッション型:特に指導者をおかずに参加者が平等に議論し、問題理解を深める」

また、「参加メンバーをどのようにするか」ということもあります。
「①同種の経験や方法論を持った人たちを参加者とする」
「②異なる経験や学派を含む多様なメンバーを参加者とする」
「③心理職以外の他職種を含めた多様なメンバーを参加者とする」
「④事例のクライエントも参加して多様な視点を保証するメンバーとする」


5.      多様な目的の事例検討会がある!

事例検討会の目的も多様であって良いということになります。例えば、何らかの知識や技法を学ぶための事例検討会があっても良いわけです。心理実践に関連する知識や技法は数多くあるので、非常に多様な事例検討会を企画することができます。
【特定の知識学習を目的とするタイプ】例:複雑性PTSDを学ぶことを目標とした一連の事例検討会があります。精神科薬物療法を知ることを目標とした一連の事例検討会もあります。
【特定の技法学習を目的とするタイプ】例:認知行動療法を学ぶことを目標とした一連の事例検討会があっても良いわけです。知能検査の実施と解釈の技法を学ぶことを目標とした一連の事例検討会もありえます。
【柔軟な技能活用を目的とするタイプ】技法にとらわれずに問題に即して柔軟にアセスメント技能やケース・フォーミュレーション技能を磨くことを目標とした事例検討会もあって良いわけです。冒頭でご案内している「パニック症の事例検討によるケースフォーミュレーション技能研修」は、この種のタイプの事例検討会です。

また、参加者のレベルや課題に即した目的を持った事例検討会もあっても良いことになります。こちらについても、心理職のレベルや課題は数多くあるので、多種多様な事例検討会を企画することができます。例えば次のようなタイプの事例検討会があります。この他にも多様な目的があるはずです。
【初心者が直面する課題解決を目的とするタイプ】
【中堅心理職の技能向上を目的とするタイプ】
【多職種協働の課題解決を目的とするタイプ】
【倫理実践に関する技能向上を目的とするタイプ】


6.    臨床心理iNEXTは皆様の要望に基づいて事例検討会を企画します!

この他にもさまざまな形態や目的を持った事例検討会を企画し、実行していくことが可能です。臨床心理iNEXTでは、皆様の意見を参考にして要望の多いタイプの事例検討会をオンラインで企画していく予定です。オンラインであれば、周囲に参加できるメンバーが多くない地方の心理職や一人職場の心理職であっても、参加できるメリットがあります。

それと同時にオンライン事例検討会では、知らない人が集まりますので、発言しにくいということもあります。臨床心理iNEXTでは、そのような心配を持つ心理職のために安心して参加できる事例検討会の実施方法を開発しております。例えば、発言する必要はなく、事例検討会の議論を観客として観察学習するなど、構造化したシステムも用意してあります。その点は安心してご参加いただければと思っています。

そこで、臨床心理iNEXTでは、アンケートを通して広く皆様のご要望をお聞きし、皆様と一緒に役立つ事例検討会を企画したいと思っています。ぜひ、関心のある方は、下記のアンケートにお答えください。お答えいただいた方の中から抽選で30名の方には、臨床心理iNEXTの研修会に無料で参加できるご案内をお送りいたします。
(無料対象となる研修会は、8月以降にお知らせさせていただきます。)

【8/21〆】アンケートのご回答はこちらから↓


7.    ところで、心理職としての技能向上ができていますか?

現在、心理職ワールドでは公認心理師制度の影響が非常に強くなっています。公認心理師職能団体だけでなく、心理職の関連学会も公認心理師制度を前提とした知識や技法の研修を提供しています。心理職の皆様は、そのような研修会に満足していますでしょうか?
公認心理師制度では、心理職は早くから5分野に分かれて、その領域で仕事ができる知識と技法の習得を求められます。しかも、いずれも分野の職場でも心理職が主体的に活動を決定する権利を持つことは、ほとんどありません。多くの職場では、上司である医療職、行政職、教員、社員などの上司の指示に従って働く技術者や実務者としての仕事が求められます。
そのような特徴を持つ公認心理師のための研修会は、その職域や職場で必要とされる特定の活動を前提とした知識や技能の学習が目的となりがちです。それは、心理支援本来の専門性を高め、心理職として成長するための研修になっているでしょうか?


8.     心理職として共通する専門技能を磨く

心理職に共通する専門技能とはどのようなものでしょうか?臨床心理iNEXTでは、そのような専門技能の中核となるのは、「クライアントとの間で信頼関係を形成する共感技能」、「問題を把握するためのアセスメント技法」、「問題の成り立ちを理解するためのケース・フォーミュレーション技能」、「対象となる問題に適した支援を実践できる介入技能」であると考えます。
これらの技能は、5分野やそれぞれの職場の違いを超えて心理職に共通する専門技能であると考えます。ところが、このような心理職の専門性の中核技能は、公認心理師の非常に高い到達目標や、厚労省の公認心理師制度推進室の要請を満たすために超詰め込み教育をせざるを得ない大学院では、適切に教育する余裕がないのが現状です。
さらに心理職として就職した後も、職場で要請される仕事をこなすための忙しさや、非常勤で複数の職場を掛け持つ忙しさの中で、心理職本来の専門性を磨くことができなくなっていないでしょうか?
そのような心理職のために臨床心理iNEXTは、冒頭でご案内したように心理職の中核技能である「ケースフォーミュレーション技能」を磨くための事例検討会を提供することを主要目標としたわけです。多くの方の参加をお待ちしております。

■記事校正 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(臨床心理iNEXT 研究員)

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臨床心理マガジン iNEXT 第48号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.48-1
◇編集長・発行人:下山晴彦

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