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ニュージーランドから男鹿へ。与えられたチャンスに挑戦する──ジョエル・バーナさん

ニュージーランド出身のジョエル・バーナさんは、漢方のプロフェッショナルである妻の愛さんとともに稲とアガベへ入社し、東京から男鹿へ移住しました。

当初は英語の担当として採用されましたが、現在のメインの業務は酒造り。異国の地でさまざまな困難と向き合いながら成長を目指すジョエルさんに、お話を聞きました。

妻の愛さんをきっかけに稲とアガベへ

ジョエルさんと妻の愛さん(中央)

──ニュージーランド出身のジョエルさん。稲とアガベで働くことになったきっかけを教えてください。

ジョエル:僕の妻※1が、漢方養生指導士として活動しているんですが、彼女が岡住社長の活動に感銘を受け、コンタクトを取ったのがはじまりです。SNSのダイレクトメッセージで「私ならこうしてサポートができる」と彼にDMを送ったところ、すぐに返信が来たんですが、そのとき、夫の僕が英語とピラティスの講師をしていることを伝えたら興味を持ってくれて、二人とも会うことになったんです。

※1 同じく稲とアガベのスタッフであるバーナ愛さん

──男鹿や稲とアガベには海外から観光客が来るでしょうし、英語ができるスタッフが必要だったのかもしれませんね。

ジョエル:そのとおりで、当初は英語担当として採用されたんだと思います。外国から来たお客さんたちに、スタッフみんなが対応できるよう教育する役割も任されています。でも会社全体が忙しいので、ほとんどは蔵の醸造スタッフとして働いていますね。

面接のために初めて訪問したとき、男鹿は近年稀に見る大雪で、電車が止まって道路が閉鎖されるような状況でした。面接後にお酒を持ち寄って飲み会がおこなわれたんですけど、みんなが酔っぱらっているあいだに僕がすべて掃除したんですよ。ニュージーランドにいたときに、酔っている間に片付けるのがベストだと学んでいたので。片付けたことは記憶にないのに、朝起きたらきれいになっているから、お得な感じがして(笑)。その能力が認められて採用されたのかなと思ってます。

──酒蔵の仕事はほとんどが掃除ですし、即戦力になると思われたのかもしれないですね(笑)。もともと東京で英語とピラティスの講師をしていたとのことですが、男鹿という見知らぬ土地に来るのは大きな決断だったのではないでしょうか?

ジョエル:僕はクリスチャンなんですが、そのころ、「自分にとって必要なチャレンジがあるなら与えてほしい」とお祈りしていたんです。講師としての目標には既に到達していたので、新しい挑戦がしたかったんですよ。今の職場は、もちろんすごい努力が必要ですけど、大きな成長の機会になっています。

──働いていて、最も大変だと感じるのはどんなことですか?

ジョエル:コミュニケーションですね。会話は全部日本語でおこなわれるし、日本人でさえ知らないような醸造用語や日本ならではの文化にも慣れなければいけないので。自分がしたミスについて、みんなの前で指摘されたときはショックでしたね。地元ではそういうことはないので……。

──確かに、日本では同僚の前で注意されることは一般的ですが、アメリカなどの国ではとても失礼なこととして避けられていますよね。そのあたりの習慣の違いを受け入れるのには時間がかかりそうです。

ジョエル:そういうときに、聖書を読むんです。イエス・キリストは、愛と赦しとともに、人々のために亡くなり、蘇った。僕にとって必要なのは、自分自身が強くなること。キリストの言葉は、謙虚さと展望を見出す手立てを与えてくれます。

岡住代表のユニークなリーダーシップ

──岡住代表のことをどう思っていますか?

ジョエル:彼が取り組んでいること自体もですが、興味深いのはその手法です。歴史の中ではモハメド・アリ、ビル・クリントン、ダライ・ラマなどいろいろなリーダーがいますが、みんな違うカリスマ性を持っている。岡住さんは、自分の夢を信じ、追いかけさせることができるリーダーですね。他の人たちに「この夢なら叶えられる」と思わせることができるのが彼が持つ人一倍の魅力だと思っています。

──ほかに尊敬しているスタッフはいますか?

ジョエル:齋藤さんですね。齋藤さんと岡住さんは二人とも稲とアガベのブレインなんですが、岡住さんが風にそよぐ草だとしたら、齋藤さんは彼が飛んでいかないようにそれを支えている根。齋藤さんは3、4人分の仕事をしているし、会話をしているとその頭の回転の速さを実感します。話を振ると、ポイントをすぐ箇条書きにして、すべて迅速に処理してくれるんです。

あとは、村田さんの人柄も尊敬しています。いつも穏やかなんですよ。また、荻原さんが自然に、しっかりリードしてくれるおかげで、酒造りについて学べています。

──稲とアガベのお酒は好きですか?

ジョエル:はい、大好きです!そうじゃなかったら売るのも難しいですよね。僕は嘘をつけないタイプというか、下手なので(笑)、ここのお酒が好きでよかったと思います。

──特にお気に入りの商品はなんでしょうか?

ジョエル:全部好きですが……どぶろくを特におすすめしています。

英語を教え、日本語を学ぶ

──稲とアガベで働く中で、今後の目標を教えてください。

ジョエル:日本語をきちんと使いこなせるようになることですね。もっとエレガントに話せるようになりたいんです。そのお客さんにとって、このお酒のどんなところがおすすめなのか、その商品がどのように男鹿の魅力を反映しているのか、稲とアガベが日本の中でどんな存在であるのかを、もっとうまく説明できるようになりたいです。

──このインタビューは英語でおこなっていますが、ジョエルさんは、的確な表現ができるように、一つひとつの単語を丁寧に選んでいる印象を受けました。言葉にこだわるジョエルさんだからこそ、母国語でない言葉を自由に扱えないのはフラストレーションを感じるかもしれませんね。

ジョエル:ここに来て、2週間のうち、ひと言も発言しなかったことがあるんです。リスニングは言語を覚えるのに重要ですが、話すことも、ミスをすることも大切です。でも、ミスをし続けるのは相当な精神力が必要ですよね。言葉がわからなければ、僕はいちばん底辺だし、みんなから指示を受けるだけの存在になってしまう。自分の心がどんどん小さくなっていくような気持ちがしました。自分に腹が立ってくるんです。

乗り越えるためには、自分が強くならなければいけません。神様に祈ったんです──「私にチャンスを与えてくれてありがとうございます。自分に変化をもたらすこの挑戦こそが、私が生きていることの証です」。それからは、仲間たちにも、自分にもソフトに向き合うことができるようになりました。

──英語をみんなに教えるためにやってきたジョエルさんが、日本語を真摯に学んでいる。ジョエルさんがいるからこそ、稲とアガベの多様性が保たれているのだと思います。

【岡住代表コメント】
いつも穏やかで優しく、自分の身体のことを最も心配してくれるのがジョエルです。この会社にジョエルの能力を活かした、活躍できる場所を作らなければと思いつつ今の所は甘えてしまっています。ここが居場所だと感じてもらえるような仕事を作るので少しお待ちください。

取材・執筆:Saki Kimura

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