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【終活と不動産】
『国に取られるくらいならお前にやる』
先日私が衝撃を受けた売主様の最期の言葉で、売主様にとって特別な女性に遺した言葉です
私はご年配の客層が多いこともあり “終活” として不動産売却のご依頼が多くあります
急に施設に入ることになり子供が戻って来ないのが確定的なので遠方にいるお子さんが仕方なく売却される方、東京などに住んでるお子さんの所に引き取られる為、長年お住まいになった自宅の売却をされる方…
そこにはいつもリアルなドラマがあります
そんなエピソードをひとつ、ご紹介したいと思います
『家の売却についてを相談したいんだが…』
そんなご依頼があったのはGWを過ぎた初夏も近付くちょうど気候のいい頃でした
物件は商業地にも近く、最近開発が進んでいる利便性も高い立地
複数の不動産業者に相談してるらしいが、なかなか売主様の納得のいく内容でまとまっていない様子…
なんでも先日癌を発症し、だいぶ進行しているらしく、ご家族もいないため先々のことを考え、医療の整った施設に入るため早急に売却したいとのこと
でも本人はまだまだ生きる意志があって、終活は先のことと考えているぐらい気力はこの時はありました
『ご期待に副えるように精一杯やらせていただきます』
この時にはどんな展開になるか想像もしていませんでしたが、そこから半年以上に亘る長いお付き合いが始まりました
いくつものパターンの販売計画に路線価法、取引事例比較法による値付け
商業向け、住宅向けの値付け、業者の買取価格の打診や、解体等の見積もり作成、一般への販売の際の想定期間…etc
その間も病状は進行し、ついに在宅で酸素吸入も始まりました
食事も十分摂っていない様子で、みるみるうちにやせ細っていきました
(だ、大丈夫だろうか… 早く売却までいかないと このままでは…)
数年前に私の叔父がちょうど同じ状況になり、まもなく亡くなったことがあることから不安がよぎる…
そうこうしていると季節は秋になり、買主様が見つかって価格もまとまり
事前審査さえ通れば いよいよ契約となったある日の夕刻、売主様から一本の電話が…
『今、…○○病院に担ぎこまれたところで、しばらく帰れそうもない
次の打ち合わせは悪いんだけどこっちに来てもらえないかな… 』
電話口の息が荒い… かなり病状が悪化しているようだ
『かしこまりました。先日買主様の諸費用が出揃い、事前審査に入りました。結果が出るまでもうしばらくお待ちください』
今回は通常の住宅ローンではなく時間がかかります
勝手が違うこともあり、不安だけが募る…
またこんな時に限って多数の売却査定依頼が入り、集中できない
(まだか、まだか……)
一週間後、銀行より承認が降りたとの連絡が入る
急いで売主様に契約の打ち合わせの電話連絡を入れる
が、なかなか電話を取らない…
売主:『… ハィ…○○(売主様の名前)です』
私:『お世話になっております! やっと承認が降りました
ご契約に望めます おめでとうございます』
売主:『よかった……… そしたら…来てもらって……打ち合わせしましょう』
私:『大丈夫ですか?!、前よりかなりお辛そうですが、明日でも大丈夫ですか?』
売主:『明日は検査だから……… 土曜でもええかネ?』
私:『は、はい。では土曜の14時にお伺いします』
売主:『あ、それと… 家にある雑貨を… 買い取ってもらう業者さんもお願いできますか…』
私:『かしこまりました。手配します。お辛そうなので もぅお休みください』
それが私と交わした最後の会話となりました…
その2日後の金曜日の夕刻、お亡くなりになった連絡が私の携帯にありました
亡くなったのは電話をした半日後、次の日の未明でした
(間に合わなかった…)
約半年におよぶ私と売主様の販売活動が終わりました
ご親戚のお話によると、最後まで家の売却の件を気にしてて、話がまとまったことをとても喜んでいたそうです
本人は最後まで生きる意志がおありでしたが、
いよいよ病状が悪化して引き渡しまでどうなるかわからない状況になった際、独り身のため 引き渡しができなかったら国庫に入ってしまうこともあり、かねてよりお付き合いのあった女性と亡くなる一週間前に籍を入れられたそうです
そして冒頭の言葉を遺されました
お亡くなりになったのち、主を失った家にご親戚、買主、私が集まり、売主様との思い出話をしたのち、新しい奥様から契約を続けるとのお言葉もいただきました
現在、売主様の遺していただいたこの契約を進めています
本当に、本当にありがとうございました
心よりご冥福をお祈りいたします
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