私書箱の手紙

はじめまして、私は鈴です。この手紙は住所も名前も受け取る方には知らされないとのことなので名前なんて書かなくてもいいのですが……これからお話することに名前がとても大切なキーワードになるのでお伝えしました。

「鈴」と書いて「すず」と読みます。そのままです。このことに何も嫌なことはないはずなんです。わりと気に入ってます。女優で同じ名前の方がいて比べられることはあっても(ご本人になんと失礼な…!私じゃ比べ物にならないよ!)、あんなに可愛い方と同じ名前なことに誇りに思うほどです。
可愛い名前を付けてくれた両親に感謝したい。素晴らしいファーストギフトだと、そう思っていたんです。

この間(というのが先日なのか先月なのかそもそも年内のことなのか、あなたにこの手紙がいつ届くのかわかりませんので)、葬儀場の前を通ったときのことです。最近流行りのこじんまりとした葬儀を売りにした葬儀場なんですが、とんでもなく個人の方の名前の看板が大きいこと。だから、名前をつい見ちゃったんです。

三好よし子

たぶん、いや絶対に読み方は「みよしよしこ」さんでしょう。みよしよしこ。なぜ続けてよしを名乗るのでしょうか。ラッパーなのでしょうか。いや、本名ですよね絶対。年齢はさすがに出ていませんでしたが、きっとご結婚されてこの名前になったと思われます。だって、名前はファーストギフトですからさすがに韻を踏んでいると茶化されるようなものは贈らないと思うんですよ、名付ける方は。
結婚するにしても、なぜよし子さんは三好さんと結婚したのだろう。好きになった人でも一瞬は頭に浮かばなかったのかな。それとも、絶対に避けられない結婚だったのか。政略結婚?借金の肩代わり?そんな少女漫画のようなことはあるのだろうか。
カルテットの巻真紀のような名前が世の中に実在するんだと感嘆しつつ、信じられないなと思いました。ありえないって。

だけど、そのありえないと思っていたことが我が身に降りかかろうとしています。
私は鈴です。すずです。名字は鈴木でも鈴本でもありません、今は。今は、なんです。

好きな人ができました。

好きな人の名字は鈴木です。すずきです。

鈴木さんと結ばれたら鈴木鈴になります。すずきすず。まるで上から読んでも下から読んでもと言わんばかりに読みです。実際には鈴に「ずすきずす」になるのだけど、漢字にしたら見ての通り上からも下からもになります。



逆にします。



最悪です。正直最悪です!!!!もう自らからかってくれと言わんばかりの名前になってしまいました。しかも、私が好きというのも……でも好きになっちゃったんです。

実は、この鈴木さん問題は前にもありました。小学生の頃です。まだ初恋じゃないのが救いだけれど、なんでまた……同じ人ではないんですが。
よりによって、なぜ鈴木さんを好きになってしまうのでしょう。鈴木さんだから好きになったわけではないのに。なんなら、絶対に好きになってはならないと小学生の頃に誓ったのに。そんなこと忘れてましたけど(笑)

この問題、どうやったら解決できるんだろう。でも、鈴木さんは悪くないしどうにもできないですよね。婿入り?私、結婚に対して名前が変わることにちょっと憧れがあるんです。
名前って、よく考えたら自我など芽生えていないときにもらった相手の自我100%なギフトで、しかも拒否することはできないじゃないですか。だから、いろいろ手続きが大変だと聞いても結婚で得た名字って自分で手にしたような気がして……。
そんなこと考えてるけど、現状は私がただ鈴木さんを好きなだけ。結婚なんて程遠い。もしかしたら、今はもう鈴木さんのことはそれほどな状態かもしれない。どんな状態であっても、私は鈴という名前は気に入ってるので絶対に変えません!以上!

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