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羨ましいクリスマス

 サンタさんだって時には子どもたちが羨ましい時があるのです。
 子どもたちがすやすやと眠る顔を見ながらサンタの家系に生まれた自分にはこんなイベントはなかったぞと少しは妬いてみたりするのです。

 さて、今年もこのイベントがやってきました。子どもたちの希望に従い間違いなくプレゼントを配り回らないといけない。今年は桜町一丁目からひまわり台五丁目までが彼の担当です。
 サンタさんはケンタくんの家にやってきました。ケンタくんはサングラスが欲しいと願いを掛けていました。
「シブい!」
 いったい何がこのチビさんとサングラスを結びつけたのだろう。
 明日の朝、彼はサングラスを掛けて父親と母親に見せびらかすのだ。間違いない。
 おどけるのだろうか。真面目にポーズをとるのだろうか。それともアイドル気取りで斜に構えてマイクを振りまわすのだろうか。
 ああ、羨ましい。そういうのが羨ましい。
 クリスマスのある子どもたちが羨ましい。また自分の父親がサンタだったので自分にクリスマスがなかったことを思い出してしまいます。
 一年で一番忙しいと相手にしてもらえませんでした。それどころじゃないってずっと言われ続けてきました。

 そうそう、それどころじゃない。ええと、次はミキちゃん。
 ミキちゃんは、クマのお人形さん。
 ああ、やっぱり羨ましい。羨ましい。サンタさんはクマのお人形さんを抱き締めて身もだえします。
 今夜はあまりに夜空の色が美しくて、素敵なクリスマス過ぎて。
 ああ雪が降ってきた。まあるいぼたん雪。
 このまま降り続くと明日の朝はホワイトクリスマス。
 クマさんと雪は似合いすぎる。
 ああ、羨ましい。羨ましい。

 サンタさんだって本当は子どもたちが羨ましいのです。
 子どもたちがすやすやと眠る顔を見ながらサンタの家系に生まれた自分にはこんなイベントはなかったぞとクマのお人形さんを抱き締めて身もだえしたりするのです。