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約束 【掌編小説/#あと100日で新型Cは終わります】

100日したらこの病気なくなるからね。
おじいちゃんが教えてくれた。
幼稚園に行けないこと膝の上でだだをこねたらほっぺ摘まんで真正面から僕を見て言ったの。

僕を子どもだと思っているのかな。
僕は子どもだけどなんでも知っているよ。
この病気を治すことってお風邪を治すより百倍くらい難しいんだよ。

お父さんとお母さんがこないだの夜お話ししてた。
おじいちゃん少し頭お休みし始めたかもねって。おとなのお話むずかしいけどたぶんそんな意味。
また一緒に将棋したいのにできなくなるのかな。
おじいちゃんの膝にのっかった。

いくらなんでも100日はムリだよおじいちゃん。
150日くらいはかかるよ。
二丁目のサカイ先生一人ではムリだと思うけど、もっともっと大きな病院のお医者さん100人が力あわせて150日くらいかけてお薬作ったらこの病気治せるよ。
僕は子どもだけどそんなことくらいわかってる。
でもおじいちゃんが100日て言ってくれたからそれでいいよ。

おじいちゃんが100日でこの病気がなくなることを教えてくれたのは僕にだけ。
おじいちゃんはこんなに大事なことお父さんにもお母さんにもおばあちゃんにも言ってないよ。
今年生まれたサクラちゃんにももちろん言ってないよ。
だって言ってもわからないもの。

だからおじいちゃんが間違っていてもそんなことかまわないの。
おじいちゃんが少しだけお休みする前に僕にだけそう教えてくれたこと。
うそじゃなくて、
本気で約束してくれたこと。
僕とおじいちゃんだけの秘密。

僕が100日も500日ももっともっと未来になっておとなになって、
おじいちゃんが忘れてしまっても僕は忘れないよ。
その時地球にどんな悪いやつがやってきても今度は僕がやっつけてあげる。
だから、
安心してね。
おじいちゃん。