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攻殻機動隊SAC2045シーズン1をネタバレ全開で考察:ep01 ~ポストヒューマンは人類の敵では無い~

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(画像引用 :www.ghostintheshell-sac2045.jp/ 攻殻機動隊 SAC_2045 公式サイト より)


まず最初に。一連の記事はカウンターです。顔無し達へのカウンターです。
そして風潮に流されず、攻殻機動隊SAC_2045を面白いと評価している人達に自信を深めてもらうための記事です。楽しいでもらえれば。  嬉しい。

【逆転する認識、価値観の変容による再解釈】

ポストヒューマンは悪ではなく
公安9課も正義ではない
そして戦争とは平和である

劇中の描写や、神山健治氏の発言、SACが貫いてきたコンセプト等から新らしい攻殻機動隊を再解釈する

時代に追いつかれた攻殻機動隊という世界から見る現在はどんな姿をしているだろうか。

あなたが悪いと思っているものは本当に悪いものなのだろうか。

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(画像引用 :www.ghostintheshell-sac2045.jp/ 攻殻機動隊 SAC_2045 公式サイト より)

【前書き】
この記事では、主に以下の点について考察した内容を語りまくる予定全開だ。あくまで考察に基づいた予測や解釈なので話半分で楽しんで頂ければ嬉しくてたまらない。

・多くの人が間違えてるそもそもの前提(本記事ep01の内容)
・1984という使い古された題材を選んだ理由(ep02予定)
・サスティナブルウォーとはなにか。変容し逆転する価値観
(ep02予定)
・ジョン・スミスの正体と名前の意味
(ep02予定)
・ポストヒューマンの正体その1(ep03予定)
・ポストヒューマンの思想と目的
(ep03予定)
・シンクポルとはなにか
(ep03予定)
・郷愁とはなにか
(ep03予定)
・大衆や社会という「全」と、個人という「個」
(以下予定は未定)
・新しい個の在り方
・今作におけるS.A.C.(スタンドアローンコップレックス)とは
・ポストヒューマンの正体その2 

順番が入れ変わったり混ざったり増えたりするかもしれないが概ねのテーマが上記である。

 この記事だけでもクソ長いのに、全てをまとめて書くとトンデモナイ長さになってしまうので「ep01」とさせて頂いた次第だ。ジョン・スミスの正体は「ep02」ポストヒューマンの正体については「ep03」で語れると思う。念のためこの「正体」はスミスはマトリックスのオマージュとか言う当たり前で面白くない「正体」ではないので安心して欲しい。もっと本質的に物語に関わる正体だ。
ポストヒューマンの思想と目的については、本記事(ep01)でも目的の部分にはちょっとだけ触れるので御一読願いたい。

ここからは視聴済みの方に向けた記事として細かい説明は避け、ネタバレは全力でしつつ、なぜ以下のような事が言えるのかお話ししたいと思うので、お付き合い頂ければ幸いだ。
(ちなみにこのユーザー名にも実は意味がある。出来ればある予想を語る時に言いたいので頑張る。)

我々は、攻殻機動隊SAC2045を
地続きの仮想未来という世界から現在の世界そのものを描く、
重厚かつ正統なS.A.C.シリーズの後継作品と考える。


前書きここまで!
そして「ep01」お品書き!


【軽薄で残酷な「顔無し」たち】

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(画像引用 : https://www.netflix.com/ 攻殻機動隊 SAC_2045 ep10 より)

まず最初に今回の攻殻機動隊に対してはこんな声が目立つ

・一般向けになりストーリーが解り易くなった
・話の流れが単純で内容がスカスカ
・敵もただのインフレで薄っぺらい
・前作のまでのような深みがない
・使い古された陳腐な題材を使った○番煎じであり、新しさが無い
攻殻機動隊は終わった


本当にそうだろうか?
我々としては今、ストーリーがとても重厚で多面的な為、書きたいことが多すぎて吐きそうになっているぞ。

↑の箇条書きのような事を言ってる方はこれから示す前提など当たり前に理解し、考えた上で言ってるのだろうか?そうじゃなければ彼らはシンクポルの「顔無し」や、プリンが遭遇したブヒブヒいってる豚と同じような存在だ。

このような易きに流れる「大衆」という存在は今作でも大きなテーマの一つになっているが、その事を語る為にもまずは

そもそもの前提を掴むために重要な描写がある1話(ep01)と6話(ep06)を主に参照して考えてみたい。


【主人公勢力は正義という思い込みに始まる間違い】

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(画像引用 :www.ghostintheshell-sac2045.jp/ 攻殻機動隊 SAC_2045 公式サイト より)

攻殻機動隊SAC2045の世界ではサスティナブルウォー(持続可能戦争)により世界が混乱していることが最初に示されている。ではこのサスティナブルウォー(以下SWとも表記)はそもそも正義であろうか?ここでは正義ではないという向きが一般的として話を進めよう。そもそも本当は正義も悪も無いのだけど、そうしないと話が進まないのでそうしよう。
 SWが悪であるならばSWに積極的に参加し、戦争という産業の一部となっている9課の面々は全くもって正義ではないという事になる。
ただSWという概念が示している戦争とは皆が思っている戦争でない。戦争という概念もまた逆転しているのだ。なぜそう言えるのかついては別に記そうと思う。

シーズン1の時点で公安9課メンバーは、常にサスティナブルウォーという民衆を統制する体制。の側にある存在だ。


【サスティナブルウォーはポストヒューマンが起こしたものでも無ければ運営しているものでも無い】

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(画像引用 : https://www.netflix.com/ 攻殻機動隊 SAC_2045 ep01 より)

SWを起こしたのはポストヒューマン(以下PHとも表記)ではなくG4であり1A84であることが上記のOPでも本編でも語られている。しかしアニメを見ているとSWを仕掛けているのがPHであるかのように見えてくるのではないだろうか?しかしはっきりと違うのである。

戦争(SW)を起こし、運営しているのは1A84だ。
PHが起こしたのは2044年の世界同時デフォルトであって、2042年に始まったSWでは無いのだ。(この点は次項を参照)
そもそも2042年にはポストヒューマンは存在していないと思われる。

 にも関わらずPHがSWの媒介者かのように見えるのは、確実に制作側の意図でそう見えるよう見事に演出されているからだ。
 ここまで明確にSWの首謀者を示しているのに、見ているうちに1A84の存在を忘れ、いつの間にか戦争を起こしているのはPHだと錯覚してしまう。

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この点に関しても目を盗まれた方が多いのでは無いだろうか

「ポストヒューマンは人類の敵である」と言う思い込みが、
SWを起こしたのはポストヒューマンではない。
と言う当たり前の前提を忘れさせる。


【世界同時デフォルトはサスティナブルウォーの一環ではない。ポストヒューマンが起こしたもの】

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(画像引用 : https://www.netflix.com/ 攻殻機動隊 SAC_2045 ep01 より)

まずこの世界同時デフォルトもSWと言う戦争行為の一環。思いがちだが、それは確実に違う。
なぜならばこの場合の戦争とはサスティナブルウォー指すからだ。

先の項でもちょっと話したが、2044年の世界同時デフォルトを引き起こしたのはPHだジョン・スミスも「世界同時デフォルトは彼ら(PH)によって引き起こされたものだ」と言ってる。
これはサスティナブルウォーによって世界同時デフォルトが起こったのではない。という事を意味している。
 

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(画像引用 : https://www.netflix.com/ 攻殻機動隊 SAC_2045 ep06 より)

そもそもSW側の勢力がそんな事件を望むはずがない。SWを開始し、運営していた勢力にとっては世界同時デフォルトは望むはずのない最悪の出来事だった筈だ。なぜならばSWとは経済を持続的に回すためのシステムだからだ。
 そのシステムにとって、経済そのものが破綻するという出来事は最悪の事態と言える。SWが世界同時デフォルトを仕掛ける理由が無いのだ。

ではポストヒューマンはなぜ世界同時デフォルトなんていう事件を起こしたのか。その理由はスミスが教えてくれる。
「彼ら(PH)の目的は既存の社会構造の転倒だ」
なんて単純明快な答えだろうか。単純明快なくせになんて分かり難い答えなのか。

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(画像引用 : https://www.netflix.com/ 攻殻機動隊 SAC_2045 ep06 より)

PHが転倒させたい社会構造とはSW(持続可能戦争)そのものの事である。
あくまで「人間の世界」や「人類そのもの」ではなく、「SWという特定の社会構造」の事だ。

PHの目的がSWの転倒であることが、はっきり示されているのだ。
あからさまにPHはSWを潰しに来てるのである。


【産業としての戦争、本物の戦争。ポストヒューマンは社会構造そのものに敵対する者】


スミスの発言に対しバトーさんが「サスティナブルウォーも奴らの仕業だって言うのか!」と聞く

(このセリフがミスリードとなってSWはPHが起こしてると思ってしまう。ホント脚本上手い。この場面が前項で言及した「ポストヒューマンは人類の敵である」と言う刷り込みの代表的な例だろう。)

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(画像引用 : https://www.netflix.com/ 攻殻機動隊 SAC_2045 ep06 より)

 この問いにスミスは「確かに我々は、世界経済を持続可能にするために産業としての戦争を始めたが、それはあくまでもコントロールされた経済行為だった。」と答えるのだが、このセリフをもっともっと分かり易く雑に言い換えるとこうなる

「我々の戦争(SW)と、今の(PHが混乱させた)戦争は違う」

スミスの言う産業としての戦争(SW)はあくまでコントロールされた経済行為であり、プロ同士「戦争ごっこ」なのだ。
一話に出てきたレイディストとか言う、一般人が命を賭けて行う収奪行為は「ガチの戦争」であってコントロールされた産業(SW)では無い。

 この産業としての戦争という概念を補完するのが続く少佐とスミスのやりとりだろう。
実弾が飛んでこない来ない所に暮らすからすれば、どんな戦争もコントロールされた経済行為と言えるだろうな。」

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(画像引用 : https://www.netflix.com/ 攻殻機動隊 SAC_2045 ep06 より)

という少佐の言葉に対してスミスはこう返す。
「まったくだ。ポストヒューマンにより戦闘は日常化し、一般人にまで被害が拡大してしまった。」

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(画像引用 : https://www.netflix.com/ 攻殻機動隊 SAC_2045 ep06 より)

どういう事かと言うと、以前のサスティナブルウォーはプロ同士の戦争ごっこであり、一般人にとっては自分が暮らすところには弾丸が飛んでこない、管理された平和な経済行為だった。その状態が本来のSWだったのだ。

一話でも少佐やバトーはサスティナブルウォーを「戦争ごっこ」と呼んでいる。レイドと呼ばれる収奪行為をしかけるレイディストに対し「最近のレイディストは可愛げがないのよ」と言うのは、戦争ごっこの枠に収まらない行為であることを表している。

ポストヒューマンが介入した事でSWは、一般人(レイディスト含む)を巻き込み経済行為としての枠を超えた本物の戦争へと変容しつつある、もしくはしている。という事だ。

「プロ同士の戦争ごっこという経済行為を望んでいるSW(社会構造)に対して、ポストヒューマンが「ガチの戦争」を仕掛けているのだ。

ポストヒューマンが敵対するものとは、「既存の社会構造そのもの」であり、その目的は「既存の社会構造そのもの」を変える事だ。そしてその「社会構造」こそサスティナブルウォーそのものなのだ。



【あとがきと次回】

・シーズン1時点で主人公勢力(9課)は戦争を起こしている悪と戦う存在ではない
・サスティナブルウォーはポストヒューマンが仕掛けたものではない
・世界同時デフォルトはサスティナブルウォーの一環ではない
・PH介入前と以後のサスティナブルウォーの違い
・ポストヒューマンは人類の敵ではない

という事を説明するだけでこの文量である。なのに説明しきれていないのである。しかし無理もないのである。

・1984という使い古された題材を選んだ理由(ep02予定)
・サスティナブルウォーとはなにか。変容し逆転する価値観(ep02予定)
・ジョン・スミスの正体と名前の意味(ep02予定)
・ポストヒューマンの正体その1(ep03予定)
・ポストヒューマンの思想と目的(ep03予定)

最低限これらの事が分かって初めて全てが繋がるからだ。
マジでこのストーリーのどこら辺が解り易くてスカスカなのかむしろ教えて欲しい。

次回は1984をどういう意図で題材としたのか。を話したいと思う。
その意図が分かれば実際の立場とぱっと見の立場が逆転している理由分かると思う。

そしてサスティナブルウォーという社会活動がいったいどのような産業なのか。
このサスティナブルウォーという概念が分からなければ「戦争ごっこ」という理由も、ポストヒューマンの目的も分からないだろう。

この辺りを語るにはスミスの正体も語らなければ語れない。

語りまくりたいと思うのでお付き合い頂ければ幸いだ。

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