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忌部藍集中講座

 3年前から毎年夏に私たちの藍農園で開催しているクローズドの講習会です。メインは「ちょっと神経質で失敗しにくい沈殿藍の作り方実習」。作業の進行に合わせて座学もあり、阿波忌部と藍についての歴史の話、藍が発色する仕組みとタデアイの特徴についての話、その他藍染に関連するさまざまな調査結果からのトピックなどをお話ししています。

 沈殿藍が沈殿するのを待つ間に、関連する場所をいくつか見学に行くこともしています。タイトル画像はそのうちの一つの山﨑忌部神社です。地域の人と協力して、初めて藍づくりに産業として取り組んだ阿波忌部氏の始祖である天日鷲命(あめのひわしのみこと)が御祭神。天皇即位の際に儀式として行われる大嘗祭に必要な「麁服(あらたえ)」を調進してきた一族でもあります。この神社は、その麁服を皇室にお届けする際の出発の場所。
 麁服は麻の繊維でできた織物です。そのためこの地域一帯に麻が植えられ、この地域には麻植(おえ)と名付けられていました。

 その麻がポイント。
 麻を化学的な媒染剤を使わずに染色できる天然染料は「藍」と「柿渋」。だから、麻を染色するための染料としてタデアイが栽培されていたと伝わっています。私たちの藍畑は、その麻植郡だった場所に残る最後の藍畑です。だから、そういった歴史を伝えることも大事なことだと考えています。

 そういうこともお伝えしつつ…
 今年の忌部藍集中講座は6月に1回、7月に1回、各3日間通しで行うことになっており、先日6月の回が終了しました。
 藍と誠実に向き合おうとされている方が、東北・近畿・中部・四国から講習生としていらっしゃり、一所懸命に学びを深めておられました。また、それぞれの現場で悩まれたことを共有し、講座でその解消の糸口を得られた方もいらっしゃったようです。
 藍の作業は1人でコツコツ取り組まれている方も多く、作業中に遭遇する不思議な現象や湧いて出る疑問を、孤独の中で解決しようともがかれている方が多いです。もちろん、「まず自分で考える」ということはとても大事なことです。その上で、別の現場で起こっていることをヒントにすることが叶えば、学びを深めながらお互いにスキルを向上することができて、いい流れを作れます。この集中講座が、そのような機会の一つになればいいなとも考えています。

 とういうことで、この講座では

・沈殿藍の失敗しにくい作り方
・忌部氏と藍産業の成り立ち
・沈殿藍と蒅(すくも)の成り立ちと考え方
・沈殿藍の応用範囲のヒント など

 といったことを学んでいただけるように実技・座学・見学をコーディネートしています。沈殿藍を作ってみたけれど、うまくいかなかった、どんなふうに使えばいいのかわからない、という方がご参加されることが多いです。
 また、基本的に私は沈殿藍の作り方についてのお電話やメールでのお問い合わせにはご対応していません。本来お伝えするべき臭いや感触や色合いなど、言葉のみで伝達することが不可能なものにこそ大事な情報が詰まっているということと、ハウツーだけで伝えられる素材ではないと考えているためです。
 現場で、お顔を見ながら手渡しでお伝えしたいことが山ほどあるのです。

 講座の定員は5名ですので、メンバー同士の語らいの時間も折々にあり、和気あいあいとした雰囲気で過ごされている方が多いです。またそれぞれの現場の様子や疑問を共有し、その後の緩やかなつながりの形成に発展していくこともあります。
 今までは、口コミでのみの参加募集としてまいりましたが、本の出版をきっかけにさまざまなお問合せをいただくようになり、次回よりメールマガジンで募集のご案内をすることになりました。

 次回(来年)の開催予定日、お申し込み受付の日程とお申し込み方法等のご案内は、今年10月以降のメールマガジンで順次お届けします。ご興味をお持ちになられた方は、どうぞご登録ください。
 普段のメールマガジンの内容は、私の個人的なおすすめ情報や新刊の作業状況、そして雑感などをゆるくお伝えしている和み系(?)です。ご登録は無料ですので、よろしければぜひお付き合いください。

 基本的に毎週金曜日の配信です。出張やイベント等で曜日が変わったりお休みすることもあります。今後、緩やかな「藍染コミュニティー」をこのメールマガジンから立ち上げていく予定もありますので、楽しくご参加いただけたら嬉しいです。

よろしければ、サポートをお願いいたします。いただいたサポートは藍農園維持と良質な藍顔料精製作業に活用させていただきます。