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古着を藍染めする1

 商品やご依頼いただいているサンプル染めの合間の作業に、練習を兼ねて私物の古着を染めています。
 今回はTOMMY HILFIGERの白いジップアップパーカーの古着を入手したので染めてみました。
 お手元のお気に入りアイテムのリストアに藍染めはいかがでしょう。ってお勧めしたいリポートです。

1、TOMMY HILFIGER のジップアップパーカー(白)

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 古着の状態で入手。着用年数は不明です。
 生地の状態は毛玉などが元々できにくい仕様になっているためかとても良く、目に見えるダメージはほとんどありませんでした。
 素材は本体生地が綿80%、ポリエステル20%。リブ部が綿100%です。
 本体部分の生地はスウェット生地ですが伸縮性はどちらかというと少なめのキッチリとした質感。裏面は起毛されていて温かく着られそうな作り。フード部分に通された紐は取り外し可能だったので外しました。特別に記載はありませんでしたが、おそらく綿100%です。
 
 前身頃の胸の部分にブランド名がガッチリと刺繍されているのと、生地の縫い合わせられている各部分がとてもしっかりとした縫製のため、おそらく色が入りにくいだろうと想定。部位をしっかり頭に入れて、染色の際の重点作業ポイントとします。
 フード部分は本体と同じ生地が二枚重ねとなっているので、ここもしっかり色を入れておきたいポイントです。
 袖口のリブ部に着用による汚れ、前身頃右下のポケット部分に小さな茶色のシミ有り。白いままで着用を続けるのは難しいコンディションかな、という雰囲気ですが、藍染めリメイクでどのように変身するでしょうか…

2、精錬後に下染め

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 繊維に残っている余分な汚れを落とすために精錬した後、パーカー全体を灰汁に充分浸からせてから染色に入ります。
 まずは下染め作業。突然濃い色に染めるとムラが入りやすくなります。優しい薄い色で数回重ね染めをしながら可能な限りムラを無くし、最後に濃い色で仕上げる方法を取ります。(上の画像は下染め2回を終えたところの状態)

 繊維に染まりついた藍の色に甕の中の藍が引き寄せられるような性質があるのか、下染めでムラのない状態に整えておくと仕上げの本染めで大きな失敗をすることはほとんど起こりません。そのため、一見地味に見える下染めは仕上がりに大きな影響を及ぼしかねない大切な作業。ここを丁寧に進めることで、満足のいく色にグンと近づくことができます。

 最初に観察したときに気になった汚れの部分は下染めの時点でほぼ気にならない状態になりました。
 刺繍部分と生地が縫い合わされている部分は、全箇所を染め液の中でゆっくりと指でつまみながら染め液を浸透させました。
 意外なところで綿100%のリブ部が曲者でした…目がしっかりと詰まっているので、指と手の平を使って何度も染め液を浸透させましたが、発色に必要な酸化を進めるのが困難な部位であることが分りました。ポリエステルを20%含む本体部分より染まりにくい状態だということが確認できました。
 もう一つ、外しておいた紐。これも目がギュッと詰まっていて染まりにくく、仕上げに向けてゆっくり丁寧に染め液に浸さなくてはならない印象でした。

 様子を見ながら2週間かけて下染めを6回繰り返し、灰汁抜きを繰り返しながら約1ヶ月時間を開けました。空気酸化は充分に進んだと思います。
 甕の状態は終始良好で、あまり重たい作業を重ねないように調整し、手入れを続けておりました。


3、仕上げの本染め

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 下染め終了後の空気酸化に1ヶ月かける事ができたので、発色がよく進んだ状態で仕上げの染めにかかれるのは嬉しいことです。甕も本染め前に手入れを念入りにして、一層良い色が染められるように調整しておきました。
 この染め作業に使用した甕は2020年4月に藍建て(染められるように調整すること)した甕です。今回の下染めを始めたのが2020年11月下旬でした。甕には化学染料や化学薬品を一切投入せず、昔から使われてきた素材(染料のすくも、麩や貝灰など)だけを使用して調整を重ねています。本染めに取り掛かったのが2021年1月に入ってから。とてもよく働いてくれている甕です。ありがとうね。

 本染めはやはり2週間かけて、4回繰り返しました。下染め終了時に気になったリブ部を重点的に手のひらで挟んで染め液を染み渡らせるようにして作業を進めました。
 フード用の紐はゆっくり甕の中に沈ませて、時間をかけて染め液を染み込ませるようにしました。

 イメージしていた澄んだ青色に染まったところで、もう一回だけ色を重ねて染め作業は終了。最初に確認した袖口リブ部と前身頃右側ポケットの汚れは全くわからない状態となり、人前で着用しても大丈夫な仕上がりになりました。
 これからしっかりと空気酸化が進み色が安定するまで、半年ほどは屋内のみでの着用とし、できるだけ洗剤を使わずに熱湯のみで灰汁抜きを兼ねた洗濯を繰り返すようにして管理します。
 そうした方が色がより鮮やかに深まって、さらに色褪せや色落ちもしにくくなるから。
 今から半年…というと7月の終わりですか。暑くて着ていられないなぁ。天然の藍染めは染めあがると遠赤外線効果が加わるので秋になってから外へ着て出られるようになっているイメージですね。

 ああ〜〜〜、楽しかった!!
 次は何を染めましょうか。

◇ あなたのお気に入りの服(シャツ)を藍染めいたします
https://indigoinc.thebase.in/items/37037096


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