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紺紙(藍染めの和紙)はどうやって作った?

 紺紙金泥経(こんしきんでいきょう)という文化財があります。紺紙とは、和紙を藍で染めたもの。紺紙に金色の墨(銀色の墨を使うこともあります)でお経や仏画を書いたものです。
 この紺紙についてちょっと調べてみました。気になってしまったのです、紺紙が蒅で染められていたのかどうかということが…


きっかけは藍墨で塗った半紙

 紺紙金泥経というものがあるということは、日本の染色について資料をあたっていた時に知りました。その時は「そういうものがあるのだな」くらいにしか思いませんでした。
 3年ほど前から趣味で切り絵を楽しむようになり、切り上げた作品の台紙にしようと藍墨で半紙の彩色に取り組んだ時、ちょっと引っ掛かることがありました。

 一度に濃い色に塗るのではなく、何度も色を重ねて濃い色の台紙を仕上げたのですが、できあがりの様子が、資料で見た「紺紙金泥経」の紺紙によく似ていると感じました。紺紙は藍で染めた紙で、私の台紙は藍墨で彩色したものだから、似ていて当たり前です。この記事のタイトル上部の画像の切り絵の背景が、私の作った紺紙(的なもの)です。

 この時頭の中に引っかかったのは、現在国内で保管されている紺紙金泥経の成立年代はいつ頃のものだろうということ。そして、その頃の藍染めはどんな作業で行われていたのだろうということが気に掛かりました。
 多分、蒅では染めていないんじゃないかなぁ…もしかしたら私がしたみたいに、藍墨で彩色したかもしれない。そんなことを考えていると、紺紙の成り立ちが分かれば、その頃の藍染めのあり方を紐づけて考えられるような気がしてきたのです。

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