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厚み “教場”、“キャプテン・フィリップス”

予告編が恐そうで 敬遠していたにも関わらず
あっという間に引き込まれた 二夜のドラマ
人間への眼差し 凄いものを書く人がいるなぁと驚嘆する
木村拓哉の 役を演じ切る圧巻の人間的厚み
様々の経験 時間層はここまで来たのかと感服して
林遣都の圧倒的な存在感 狂気の手前と遂行のぎりぎり
役者だなぁと魅せた 髪が短く判らなかった大島優子
色々の思いや家庭の事情を抱え 警察官を志願するに至った候補生たち
這い上がろうとするボクサーや 嫌悪するものに向かっていく者
同一の目標に向かう面々の 志のきっかけや背景の多彩さ
半年に及ぶ警察学校での訓練は 自分の内側を掘り下げてゆき心を錬る期間
一切の感情や疑問を差し挟まず ただ身体に浸み込ませ
圧倒的な瞬発力を身に着けることが 国民の安全を守るものの使命なのか

被害者や遺族のため徹底的に観察し 手がかりを見つけ出すこと
生きものや植物もだけれど やはり人間も観察することが第一で
警察だけでなく あらゆる職場や教室においても必要なことだろう

各々の底から まだ言葉にならない感情
表層に上がり切っていない 強い思いを引き出していく教官
反発しながらも 適切な対応やその姿に感化されていく候補生たち

教える側に完璧な人などいないことは 生徒側も承知の上
足らないものをどう捉え補おうとしているか 全力で向き合っていれば
そこから生まれ 学び合えることがあるのかなと漸く思えた

警察物では『臨場』が長く心に留まっていた ジギタリスや十七年蝉など
印象深く ドラマが素晴らしかったので原作も開いてみたい

暮れに観た海賊もの 緊張と恐怖に心臓がよじれ
目を離せぬテンポ トム・ハンクス主演の実話
極限まで追い詰められる時が続く ソマリア沖の海賊に関して
新聞で報道される以上に 踏み込んでこなかった無知さ
世界をつなぐ 資源や物資の海上輸送が
天候面の影響だけでなく 海賊に襲われる危険性も孕んでいることを
目の当たりにする 海に出るのは冒険家や航海家ばかりではない
生き死にを懸け 船を奪おうと乗り込んでくる海賊とのやりとりは
壮絶な神経戦で 画面越しであっても生きた心地がしない

大型船の航行により 自分たちの漁場を奪われたと感じる漁師たち
村を仕切る組織に差し出す お金の工面に切羽詰まり
船を襲うよう仕向けられて 必死の抵抗も虚しく大型船を追い始める
どうしてと思うことの背景には どこにも已むに已まれぬ状況があり
追い詰める側 追い詰められた側が取らざるを得ない行動が
人間を破滅に追い込んでいく アメリカは国の威信をかけ
国防のため全勢力を挙げ 人命救助にあたる

あれほどの事件の後で 現場に戻ることは想像だにしなかったが
船長は再び船へ 強靭な精神力や海 船仕事への思い
どんな暴力にもけっして屈しない勇気に 心の底が震える

“教場”(JP・’20)
『臨場』(横山秀夫・’04・光文社)
“キャプテン・フィリップス(Captain Phillips)”(US・’13)

Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛