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本の海を、今日も渡る



本を読むことは、人と出会い仲を深めていくプロセスとよく似ていると思う。


最近またたくさんの本を読んだ。
気になっていた小説に、仕事に関わる知識を得る本。その中のひとつ「博士の愛した数式」は私にとって思い出の本だ。読書好きのお父さんが小さい頃に進めてくれて、実は読むのは3回目。
歳が離れていても、仕事を通して出会うお客様でも、病気や障害を抱えていても、
どんな状況で出会っても、友達になり心を通わせることはできるんだと思った。



私と博士とルート、登場人物3人の関係に明確な名前はなかったかもしれないけれど、確かに心で繋がっていたし愛し合っていた。
この世界は思った以上にそういう関係で溢れているのかもしれない。

それから、この本を読んであんなに大嫌いだった数学にまた触れたくなってしまった。
博士は数学を手の届かない偉大で絶対的なものとして扱う。けれどその中にも数字への敬意が込められていて、普段は気に留めない数字があたたかく、人間味溢れたものとして感じられる。




こういう驚きに出会う時、自分ひとりでは考えもしなかった世界が見えたりする。


人は皆それぞれ心の世界を持っている。
本を読む時、私たちは作者の心の世界の住人になるのだと思う。その世界で何を感じるか。
それによって、皆に開かれた物語が自分だけの意味を持つものに変わっていく。そのプロセスはたまらなくわくわくする。


もうひとつ、最近心に残った本「流浪の月」の2度目を読み終えた。


1度目に読んだ時はただただ衝撃的だった。
優しさを懐疑的な目で見るこの小説に自分を否定されたように感じた。けれど、2度目を読み終えて「他者を完全に理解することはできない」と強く思った。どれだけ近くにいても。分かり合えていると思っていても、その人にしかわからない苦しみや喜びがある。人は皆、自分の物差しでしか人を判断できない。だからこそ、誰もが誰かを傷つけうるのだと思う。


それでも人は、ひとりで生きていくことに苦しさを感じる。誰かに自分を分かってもらいたい、気持ちを共有したいと願っている。人は孤独だけど、孤独じゃない。


やっぱり私は本を読むのが好きだ。
経験や価値観の変化を経て、一つの物語の受け取り方が変わっていく。
心に残る一文に出会った時の喜び。
そういうのがあるからなんだろうな。


今は双子の相棒にプレゼントしてもらった本を読んでいる。本のプレゼントって、相手をよく知ってないとできないと思う。だから余計に嬉しい。


これからも私のペースで、広大な本の海を渡り続けたい。

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