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機械式時計のカラクリ(第4編)

こんにちは!前項から「時計の顔」ともいえる文字盤について話してきました。今回もその続きとして、文字盤の機能的な意味合いと情緒的な意味合いの両方を詳しく解説しながら、その魅力に迫りたいと思います。

基本を逸脱する3つの方向性

前項のおさらいをクイックに。時計の本質的な役割は時刻を知らせること、それは時・分・秒を伝えることが基本形と、お話しました。色んな時計の表現の仕方、クリエイティブな工芸品としての側面がある中で、ベーシックなものから複雑なものまであります。ただ、複雑化すると言っても、一色単にそうなるのではなく、「複雑性の持たせ方」があります。具体的には基本形から逸脱する3つの大きな方向性があり、今日もその続きを話していこうと思います。

  • 何時何分何秒が、“今”という基本概念。日付や曜日、月の満ち引きも”今”の延長線上にあり、その情報の深さを表現

  • “今”の時刻を示すという腕時計の基本的な機能。ストップウォッチ機能やアラーム等を加えることによって、(”今”という概念以外の)情報の幅を表現

  • 3本の針で時刻を示すのが基本系。同じ情報でも異なった見せ方で、技術や個性、クリエイティビティを表現


世界◯大複雑機構

本題戻る前に、一つだけ。旅行が趣味の皆さんが、世界三大夜景や世界三大美術館を追うように、機械式時計にも、その複雑さと精密さを称える「世界◯大複雑機構」というものがあります。耳にしたことがあるものも、あるのではないでしょうか。

色んな呼び方がある

機械式時計の歴史は、15世紀の塔時計から始まり、携帯可能な懐中時計、精度を高めたペンデュラム時計を経て、産業革命による大量生産と技術革新により進化しました。20世紀には腕時計が広く普及し、クオーツ危機を経て機械式時計は高級品市場で復興を遂げ、今では技術と美学の象徴としての地位を確立しています。その技術の進化の偉大さが、「世界〇大複雑機構」というフレーズに表れていて、時計がこんなに愛されるアクセサリーとなったきっかけを作り出したと、僕は捉えています。


基本からの逸脱 × 7大複雑機構

話を戻しましょう。冒頭で話した通り、今日のトピックは機械式時計の「顔」となる文字盤について。ベーシックな文字盤に複雑性を加える方向が3つに分類されます。それぞれの中に機構が含まれ、これに先ほどの7大複雑機構を重ねてみたのがこちら(複雑機構は赤字)

赤字は7大複雑機構

前回は"今"を知らせる機能について話しましたね。なので今日は残りを。

"今"以外の情報の幅

  • パワーリザーブ(Power Reserve): 時計の巻き上げから次に必要な巻き上げまでの残り稼働時間を示す機能で、電池満タンが100%、時計が息絶えてしまうのが0%。例えば、IWCのポルトギーゼ オートマティックは7日間という長いパワーリザーブを持ち、小さな窓を通してその残り時間を表示することが特徴

  • クロノグラフ(Chronograph): 独立した秒針を使ったストップウォッチ機能で、一般的にはスポーツや計時が必要な活動に使用されます。ロレックスのデイトナはその精確なタイミング機能と耐久性で知られており、レーサーに愛用されている

  • スプリットセコンドクロノグラフ(Split-Second Chronograph): 2つの秒針を使って複数のイベントを同時に計測できる高度なストップウォッチ機能。特にスポーツイベントで同時発生する異なるアクションの「ラップタイム」の測定で便利です。パテック・フィリップの5370P-001はこの機能を備えた時計の一例で、精密かつエレガントを表現

  • パルスメーター(Pulsometer): 心拍数を測定するための目盛りが文字盤の縁に付いていて、医療従事者が患者の脈拍を計るのに便利(15秒で20回だったら、脈拍80という具合)。ロンジンのパルスメーター・クロノグラフは、この医療関連機能をクラシックなデザインで提供

  • テレメーター(Telemeter): 観測者から、とある事象の発生場所までの距離を計測するための機能。雷が見えてから音が聞こえるまで10秒経ったら大体3km先という具合。オメガのスピードマスターは、その実用性と時計製造における歴史的背景で有名

「情報の幅」かつ「7大複雑機構」(公式HPより。IWC / Rolex

おわりに

時計の魅力はその複雑さ。時計一つをとっても、そこに込められた工夫と技術の進化には、深い敬意を表さずにはいられません。最後に普段使用としても、レーサーのツールウォッチとしても愛されている定番、ロレックスのデイトナの動きを動画にてどうぞ。

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