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筆を選んで何が悪い

 どんな画材でも描けるというのはカッコイイ。でもカッコ悪くても作品をアウトプットできるのなら、カッコイイを求めるのは寄り道で、時間がないなら省略すべきだ。

 僕は同人活動を始める前から興味があって液タブを持っていた。しかし、単なる興味で本腰を入れてなかったので小さくて安いタイプだった。
 もちろん同人はその小さい機械で始めて、(見づらいな)とは思ったが、それが当たり前だと思い込んでいた。

 他の人の漫画と比べて線が太く荒いのも、単に僕の右手が大味で繊細な動きが出来ないせいだと思っていた。
 頭のどこかで(機械が悪いのかな?)とよぎってはいたが、道具のせいにするなんて絵描きとしてダサいと思い、ある種のアーティスト気取りというか、やせ我慢をしていた。

単純に雑という説もある

 1年くらい練習作を描いた後、特に必要に迫られたわけではないが、理由もなく、何となくの思い付きでデカい液タブを買った。

 そこで世界が変わった。本当にびっくりした。

 デカい液タブは画面が広いから良いと思って買ったわけだが、びっくりした理由はそこではなくて、解像度の方だ。
 僕が買ったのは4Kの液タブだった。解像度が高く絵を拡大しても線がなめらかだった。それがこんなに描きやすさに革命が起こる程のものだとは新しい液タブの画面を目の当たりにするまで全然知らなかった。

 滑らかだから等倍で描ける、等倍で描けるから細い線で描き込んでも大丈夫。


ただし拡大しすぎると却って見づらいことも学んだ

 そうして、僕の紙面は劇的に変わった。これは描き続ける経験値によって画力が向上する何倍もの変化だと個人的に感じた。

 機械の値段は忘れてしまったが、何十万もして慄いたがカードで買った。要は借金して買った。そしてその価値が十二分にあったというお話。

 その後ipadも導入したが、もうなんていうか「いつもの機械と違うから描けない」という駄々っ子みたいな体たらくだ。

 更にその後、高い腰痛椅子を買った。とても腰にやさしく、他の椅子じゃ描けなくなった。筆だけでなく場所まで選ぶ状態に。

 絵描きとしてはカッコ悪い。しかし言い換えれば、

 いつもの椅子に座っていつもの機械があれば描ける

 と言う事もできるので気にしないことにした。どんなに言う事がカッコ良くても、完成させて流通させたモン勝ち、そしてそのクォリティが高いモン勝ちがデジ同人の世界だと思うからだ。

 デジ同人をこれから始める人には、芸術家気取りでやせ我慢して不満足な道具で作るより、借金してでも筆を選べばDLサイトなどの自分のスペースに並ぶ本のクオリティが上がり、結果的に手に取ってもらえる可能性が上がりますよと声を大にして言いたい。

 形から入る事が結果として近道になった経験の紹介記事でした。

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