見出し画像

法人成した方がお得?!メリットデメリットについて解説!

みなさん、こんにちは!スタッフの長沼です!

個人事業主としてビジネスを始める人が増える中、事業規模が拡大してくると「個人ではなく、法人成(法人化)した方が良いのか?」、「法人成をするとどんなメリットがあるの?」という疑問が出てくるかと思います。

法人成には、税制面社会的信用などで多くのメリットがありますが、一方で、手続きや設立にかかるコストといったデメリットも存在します。

この記事では、法人成のメリットデメリットについて詳しく解説し、どのようなケースで法人化が有利になるのかを見ていきます。



1. 法人成(法人化)とは?

まず初めに「法人成」とは、そもそもどういったものなのでしょうか?
「法人成」とは、個人事業主として事業を行っている場合に、株式会社や合同会社などの法人を設立し、事業を法人に移行することを指します。
法人成することで、事業主と会社(法人)を独立した別の存在として扱うことが可能になり、法律上や税制上の扱いも変わってきます


2. 法人成のメリット

法人化の最大のメリットは、主に税制面社会的信用の向上にあります。それぞれのメリットについて見ていきましょう。

~2.1 税制面でのメリット~

経費計上の範囲拡大
法人の場合、経費として認められる範囲が広がることもメリットです。
例えば以下の例が挙げられます。
役員報酬:経営者(社長)への報酬を経費として計上できます。個人事業主の場合は自分の労働報酬は経費にはできませんが、法人ではこれを経費とすることで課税所得を抑えることが可能です。
家族への給与:家族を役員や従業員として雇用し、その給与を経費にすることができます(ただし、適正な給与額である必要があります)。これにより所得を分散し、個人にかかる税金を抑えることができます。
生命保険料、退職金:法人契約の生命保険や損害保険なども、一定の条件下で経費として処理できることがあります。経営者や社員に退職金を支払う場合、その金額も経費として認められます。法人として生命保険や退職金の積み立てを行うことで、法人税を減少させつつ将来的なリスクヘッジが可能になります。
上記のような事業に関連する多くの費用が経費として計上できるため、結果的に利益を圧縮し、課税所得を抑えることができます。

・新たに消費税が最大2期免除になる。
法人成りをすると、最長2年間は消費税が免除される可能性があります。
消費税は過年度の売上規模に応じて納税義務が発生するのですが、個人と法人は別人格であるため法人は過年度の売上高が無いことになり、結果的に最長2年間消費税を納めなくてよくなる場合があります。
※インボイス制度や他の事項によって1期目から消費税の納税義務が発生する場合があります。

出典「freee 会社設立の基礎知識」
https://www.freee.co.jp/kb/kb-launch/consumption-tax-exemption/

欠損金(赤字)の繰越期間が10年間に延長される。
個人事業主では3年間であった欠損金(赤字)の繰越期間ですが、法人では10年間の繰越期間が設けられています。
※欠損金の繰越とは、赤字であった年度の損失を、将来の黒字年度に繰り越して相殺できる制度です。過去の赤字(欠損金)を将来の利益と相殺することで、税負担を軽減する仕組みです。

~2.2 社会的信用の向上~

法人化することにより、社会的信用が向上するという大きなメリットがあります。社会的信用の向上は事業拡大や新規取引の獲得、資金調達など、様々な面でビジネスにプラスの影響をもたらします。
〇資金調達の観点:金融機関から資金調達する際には、法人化していることで「しっかりとした事業基盤を持っている」という印象を与えやすくなります。財務情報の透明性が高まり、銀行が融資の判断をしやすくなります。
〇取引機会の拡大:一部の企業、特に大企業は個人事業主との取引を制限し、法人であることが取引条件となるケースも多くあります。法人化することで、このような制限を受けずに新たな取引機会を得られる可能性が高まります。
以上のことから、法人格を持つことで、より大きな取引や長期的な契約を結びやすくなる場合があり、融資を受ける際にも法人の方が有利な場合があります。

~2.3限定責任について~

株式会社の場合、原則として出資額を限度とする有限責任となります。個人事業主の場合の無限責任と異なり、経営者の個人資産は保護されます。

〇リスクの軽減:事業で大きな損失が発生しても会社の債務に関して、経営者の個人資産までは影響が及びません。これにより経営が行き詰まっても、個人の生活基盤を守ることができ、事業の失敗が即座に個人の破産につながるリスクが軽減されます。
〇積極的な事業展開:個人資産へのリスクが限定されるため、より積極的な事業展開や投資判断が可能になり、新規事業への挑戦や規模拡大などの意思決定がしやすくなります。

※以下の点には注意が必要となります。
・金融機関からの借入時に個人保証を求められる場合があります。
・法人の債務に関して経営者が第三者保証人となっている場合は、個人資産への影響が生じる可能性があります。
限定責任は法人成りの大きなメリットの一つですが、完全な保護ではないことを理解し、適切な経営判断を行うことが重要です。


3. 法人成のデメリット

上記のようにメリットが多く見える法人成ですが、もちろんデメリットも存在します。法人化には、初期コストや手続きの複雑さ、経理・税務の負担増など、個人事業主に比べて多くの面で負担が増える点に注意が必要です。以下で詳細について説明していきたいと思います。

~3.1 法人設立にかかるコスト~

まず、法人を設立するためには一定の初期コストがかかります。
株式会社の場合、設立時に必要な支払として法人の登録免許税、その他に定款作成公証役場での手続き費用などの諸々の支払いを合計するとも少なくとも20万円以上かかります。
また、資本金も貯めておく必要があります。資本金は1円から設定可能ですが、会社運営の元手となる資金ですので適切な金額を設定することが重要です。小規模な個人事業主からの法人成りですと100万円程度が具体的な金額の目安となります。
上記のように法人設立は個人事業としての開業に比べると、初期費用が大きくなってしまう場合があります。

~3.2 維持費用の増加~

法人を維持するためのコストも個人事業主に比べて高くなります。
〇社会保険への加入義務:個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入しますが、法人化すると役員、従業員の社会保険への加入が義務付けられ、保険料負担が増加するケースが多いです。社会保険が未加入のまま放置すると、最終的には罰則が課せられる可能性があります。
〇赤字でも発生する税額(7万円):法人になりますと例え赤字経営で利益が出ていなくても発生する税金があります。利益が出ていなくても毎年約7万円の支払いが必要です。事業が低迷していても、この固定費は支払わなければならないため、事業が安定していない場合は負担となることがあります。

~3.3 手続きや経理の煩雑さ~

法人化すると、個人事業主には必要がなかった業務や手続き、経理等の事務作業等が増加する傾向があります。
〇税務申告の複雑化:法人の場合、税務申告が複雑化し、個人事業主に比べて専門知識が必要になります。決算書の作成や税務署への申告は法人税や消費税だけでなく、様々な項目が加わります。税理士や司法書士などの、社会保険労務士等のサポートが必要不可欠となり、結果的にコストがかさむ場合もあります。
〇法人特有の手続き:株主総会や取締役会の開催、議事録の作成。また、定款の作成や変更、役員の選任・解任などの手続き、登記簿の管理など法人特有の手続きも必要になってきます。
〇社会保険関連の手続き:前述のように、法人成することによって社会保険の加入義務が発生しますので毎月の従業員の保険料計算とその保険料についての納付であったり、新規に該当する人を採用した場合や、該当者が退職した場合の手続きなどが都度発生します。


4. 法人成が適しているケースとは?

ここまで、法人成のメリットとデメリットについて解説してきましたが、実際にどのような場合に法人化が有利になるのでしょうか?
以下のような状況の場合に法人成が有利になってくると考えられます。

~4.1 所得が一定以上の場合~

一般的に法人成りの目安となる所得の範囲として、個人事業主の所得が年間800万円〜900万円を超えると、法人化することで税制面でのメリットが大きくなると言われています。
所得税は累進課税所得が増えるほど税率が高くなる制度)に従います。具体的には、所得に応じて5%から45%の税率が適用されます。(下図参照。)事業が成功し、所得が増えるにつれて、税負担が重くなるという問題が生じます。
一方で、法人の場合、法人税の税率は一律であり、所得が800万円以下の場合15%、所得が800万円を超える場合は23%の税率で課税されます。このため、所得が年間800万円〜900万円付近になりますと個人事業主よりも法人化した方が税負担が軽減されるケースがあります。

所得税税率
出典「国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm」

~4.2 社会的信用を求める場合~

大手企業との取引や融資を受けたい場合、法人化することで社会的信用が向上し、ビジネスチャンスが広がる可能性があります。個人事業主では信頼が得にくい場合、法人化は強力なツールとなります。

~4.3 事業リスクが高い場合~

事業が拡大するに従い、リスクも高まります。個人事業主では事業に失敗した場合、個人の資産が全て差し押さえられる可能性がありますが、法人化することでそのリスクを軽減できます。特に、借入や大規模な投資を行う場合は、限定責任のメリットが重要です。


まとめ

法人成は税制面や社会的信用の向上といった多くのメリットがある一方、手続きの煩雑さや維持費用の増加などのデメリットも存在します。特に、事業の規模や将来の成長を見据えた上で判断することが重要です。税金や保険料、社会的な評価などを総合的に考慮し、適切なタイミングでの法人化を検討する

会社設立に関してお悩みの方はぜひ当事務所のHPからお問い合わせください!