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農作業に向いている人の、たった一つのポイント


 「農業に向いているのはどんな人か」と聞かれたら、私は「単純作業をずっと続けることができる人」と答える。

 もちろん他にも、作物に対して愛情が持てるか、細かい変化に気づけるか、先のことを見越しながら慎重に仕事を進められるか、など色々ポイントはあると思う。しかし、まずはここが大きな「農業適正」を見極めるポイントになるのだ。

 私は東京農大での学生時代の4年間、50〜60件ぐらいの農家の方々のところで「農業実習」をさせていただいた。学生が農家の方々のところに伺い、2〜3日の泊まり込みや日帰りで作業のお手伝いをしながら、農業を学ぶという活動だ。

 バラ、タバコ、ジャガイモ、肉牛、豚、ニワトリ…。野菜や果樹や畜産など、地域や農家によって全く異なる作業を体験できる農業実習は、自分にとって何より楽しい時間だった。

 しかし、中にはこうした作業を楽しめない人もいる。一日中畑の草をむしったり、ひたすらマメの収穫で手を動かしたり、野菜を袋詰めしまくったり…。農作業は、こうした同じ作業の繰り返しが多いのだ。

 これを楽しめるかどうかで、作業に前向きに取り組めるかどうかは全く変わってくる。こうした作業が苦手な人は、「同じ作業をもう1時間やったが、まだこんなに先があるのか…」と絶望的な気分になるようだが、好きな人なら特に何も感じず仕事を進められる。

 これは別にどちらがいいというわけではなく、人それぞれの個性だ。だが、農業を本格的にやっていく(あるいは農家でのバイトや従業員としてやっていく)なら、ここがけっこう適正を見るための分かれ目だと思う。

 単純作業を楽しむコツは、「手が勝手に動くモード」に入ることだ。

単純作業は、単純だからといって何も考えなくてはいいわけではなく、色々と注意点がある。たとえばインゲンマメの収穫なら「こういう実は虫が入っている可能性があるので注意」「こういう斑点が入った実は、病気で出荷できないので捨てること」、など…。

 はじめは見るポイントが多かったり、自分の判断が正しいのか自信が持てなかったりして大変だ。しかし、農家の方々に確認しながらポイントが掴めてくると、だんだん判断スピードが上がって作業が速くなってくる。

 すると、最終的には何も考えなくても作業が進んでしまう「全自動モード」のような状態に入ってくるのだ。ここまでくると、手が勝手に作業を進めてくれるので、頭の中では別なことを考える余裕もできて、疲れにくくなる。

 こういう一種のランナーズ・ハイ的な領域に入れるから、作業が楽しくなってくるのだ。単純作業を進めていると、農家の方との会話もはずむ。楽しく話しながら、集中して作業も進められているという状態は気持ちがいいものだ。

 農作業は、単純作業の繰り返しだ。それを工夫しながら、身体に覚えさせていくことで、楽しく疲れにくく仕事ができるようになる。今日も私は、自分の畑に植えたニンニクの草取りに黙々と勤しむ。まあこれは、管理作業をサボってきた自分のせいなのだが…。笑

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