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鈴木貴男選手インタビュー① 「一つのスタイルを貫くことについて」

全4回にわたって、鈴木貴男プロが、次世代の選手に伝承したいことをテーマにインタビューした記事をご紹介します。毎週月曜更新予定です。

第1回の今日は、「1つのスタイルを貫くこと」について聞きました。鈴木選手といえば、サーブアンドボレー。そのスタイルを極めていく中でどんな葛藤があったのか?お楽しみください。^^^^


稲本 なぜサーブアンドボレーを極めようと思ったのか?まずそこから聞いてみたいです。

鈴木プロ 単純に憧れの部分が大きいです。ジュニアの時にテレビで見た、エドバーグやベッカーの影響が大きいです。男ってかっこいいもの好きじゃないですか?今でも当時の若い2人がウインブルドン の決勝で争っている映像を思い出せるくらい、ずっと憧れていました。

稲本 小三から全国小学生に出ていたと思いますが、その頃はさすがにやっていないですよね?

鈴木プロ いや、練習の中では、少しずつですがやり始めていました。試合で使うようになったのは、4年生頃だったと思います。まだフォアもバックも両手打ちでしたけど。僕は会員制のテニスラブで練習していたので、大人の人とも練習をしていました。ですからすでにサーブアンドボレーを目にしていたし、その頃からチャレンジしていたと思います。当然まだ、ストロークの方が多かったですけど、5年生くらいからは自分のプレイとして表現できるようになっていました。他の人たちから見ても、そういうスタイル(サーブアンドボレーを使ってスライスのアプローチを使ってというプレイ)だとわかるようになったのは5年生くらいからだと思います。

稲本 今は小学3年生でもすでにフォアを片手で打っている選手が多いですが、いつ頃両手から片手に変えたんですか?

鈴木プロ 僕は、フォアハンド バックハンド共に両手打ちでテニスを始めました。ただしバックハンドのスライスに関しては、かなり早い段階から片手で打っていました。エドバーグやベッカのーの真似をするのが好きだったので、バックハンドは半分以上は、片手のスライスを打っていました。

両方片手に変えたのは中学2年生の春頃で海外遠征中に変えました。両方とも一緒のタイミングで変えました。

稲本 今で言うと、かなり遅いタイミングで両方片手に変えたんですね。小学生からサーブアンドボレーで、ストロークは両方両手って、かなり独特なスタイルですね。
小学生の頃、全国に出ている小学生でサーブアンドボレーをしていた選手はいましたか?小学生は保守的なプレイスタイルの方が勝ちやすいです。地区大会を勝ち残るには攻撃的なスタイルでは厳しい面もあるかと思うのですが。

鈴木プロ 僕は、(関東などと比べるとレベルが高くない)北海道でしたので、サーブアンドボレーでも通用したと思います。サーブアンドボレーをしても勝てるので、成功体験を多く積むことができました。ですからサーブアンドボレーを辞める理由にならなかったし、コーチがするなとかいうこともありませんでした。全国大会に行ってひとつ上の岩渕さんなどと対戦して負けることはありましたが、サーブアンドボレーをやって損というか、自分に合っていないとかいう風に感じたことはなかったです。

稲本 小学5年生当時の鈴木貴男を見たことがないのですが、サーブアンドボレーは、しっかり形になっていたものなのでしょうか?

鈴木プロ 困った時、ポイントが欲しい時は、スピン系のサーブをバックに入れて前に出るというエドバーグスタイルを行っていました。サーブはある程度スピードを出すことができていたので、エドバーグのようなスピン系の速いサーブを使ったり、ベッカーのようなフラット系を使ったりしてポイントを組み立てていました。

稲本 当時、指導者にもう少しネットプレイを減らせば、岩渕選手にも勝てるんじゃないの?というアドバイスはなかったですか?

鈴木プロ なかったです。5年生の時にテニスクラブを変えているのですが、実家の近くの会員制のテニスクラブから、テニススクールに変わりました。そこのコーチは北海道選手権などに出場するなどよく練習するコーチ陣でした。20〜30歳くらいのそれらのいろんなタイプのコーチ達と、レッスン以外のところで試合をさせてもらえた。パワーで押してくるタイプや後ろで粘るコーチなど色々なタイプの選手がいたけど、北海道で1年の半分はインドアコートということもあり、どれだけネットを取れるか?ということを主軸に練習していました。良いタイミングで良い環境を選択できたと思います。コーチ達もサーブアンドボレーをしていたし、世界のトップもしていたので、辞める理由はなかったです。

稲本 大人の少し固めで安全なテニス相手でも果敢にネットをとって行ってた感じですか?

鈴木プロ そうですね。いろんなタイプのコーチがいたので、その相手に応じてどうやってネットを取るのか?考えるのが楽しかったです。左利きだったり、ひたすら深く粘ってきたりする相手にどうするのか?またタイブレークに入ったらどう勝負するのか?考えるのが好きでした。コーチ達にはテニス経験だけでなく、人生経験もありその辺りの駆け引きも使ってきてくれました。コーチからすると小学生には負けっれないですから。でもそうやって本気で相手をしてくれたのは嬉しかったです。

稲本 鈴木さんが持っていたサーブアンドボレーへのこだわりのようなものを今の子供達からも感じますか?

鈴木プロ 今はインターネットが普及して情報がたくさん取れるので、その情報にアクセスする子もいれば、あれはあっちの世界と(ネットを)見ない子もいる。でも単純な憧れやかっこいいと思える選手を見つけられた方がいいと思う。今の子は恥ずかしがっているのかな?と思うことはある。錦織が好きっていう割にプレイは似ていないことも多いし、伊藤竜馬が好きな割にそんなに強く打たなかったり、笑。勝つことだけじゃなくて憧れるような選手やショットを大切にできるといいと思う。

稲本 鈴木選手は勝つためにもやっているけど、自分のスタイルを貫くことに重きを置いている様に見えていました。僕が好きな全豪のフェデラー戦は、まさにその集大成である様にも見えていました。そういう何かを貫く大切さ、かっこよさは今の子供達にも響くと思います。鈴木選手の様にスタイルを貫く上で大変だったことはどんなことですか?

鈴木プロ 高校生になるとオムニの試合が一気に増えたことは大変でした。全国大会がオムニがほとんどで、僕はクレーは問題ないんですが、オムニになるとネットでの動きという点でどうしても難しくなるんです。ハードコートでは6161で勝つ選手にオムニだと64 75などとせってしまいます。サーブもスピードが出ないし跳ねないし、スライスもハードコートほどキレません。それでも最低限の結果、全国優勝ができたのでよかったです。それくらい他の選手とは実力差をつけられていたのだと思います。負けそうな試合(腹筋を肉離れしていたり)を何試合が乗り越えることができました。ただ、自分には自信も十分にあったし、高校卒業したらプロとしてやっていこうと思っていたので、ハードコートになれば圧倒的な力を出せる自信はあったので、負けたらプロに行かずに大学に行こうなどとは考えずにやっていました。

稲本 鈴木さんは高校生の頃は世界に積極的に出ていく方ではなかった(時代的に)ですが、もっと出ていけばよかったと思いますか?

鈴木プロ 確かに今の高校生や大学生は、自力でATPをとっていますが、私は高校生の時には自力ではATPポイントは取れませんでした。ワイルドカードで得たポイントのみでした。それを考えると今の学生の方がすごい。時代は30年違うのでなんとも言えませんが、あの当時は、日本の大会をしっかり出るということで、海外遠征の学校の休みをもらえたりとかいう暗黙の了解もあったので、日本の試合にしっかり出たことは後悔していない。インターハイに出ることが、マイナスになるとは思っていなかったし、プロとは違うルールや一見理不尽に感じることを経験できたのはよかったと思っています。

稲本 国内でしっかり基本を作っても十分世界で戦っていけるということですね。よくジュニアITFに出ないといけないですか?という質問が来るんですけど、そんなことないですよね?海外遠征費をを簡単に出せるならいいけど、グレード5で1点とってもそれだけで終わってしまってはきつい。それに僕はレベルの高いヨーローっぱに行って欲しいけど、ポイントが欲しいと出場するのがどうしてもアジアの大会になってしまい高いレベルも経験できなくなる。鈴木さんはジュニアの時、ヨーロッパ遠征とか南米遠征とかは結構勝ってたんですか?。

鈴木プロ 僕初めてヨーロッパに行ったのが14歳なんですよ。今のTTCで行われている選抜、12歳と14歳の選抜の14歳以下で僕優勝したことで、男女2人がヨーロッパ遠征に約1カ月行くっていうのがありました。それが初めてでちょこちょこは勝てましたけど、そこで優勝を何勝もするとか全然できなかったです。ITFのジュニアもただ日本であるジャパンオープンジュニアとか当時のCoca-Colaスーパージュニア、今の世界スーパージュニアテニス選手権大会ですけど、ああいうのは優勝しましたけど、グランドスラムは僕2回戦までが最高ですからね。2回戦止まりなので、シングルスは。

稲本 ヨーロッパで勝てなくても将来自分はここでしっかりやっていけるんだみたいな手応えはあったんですか?

鈴木プロ 14歳で初めてヨーロッパの遠征に行った時には、日本だったりアジアの周りではちょこちょこ勝てるようになっていました。そうすると、もっといろんな相手、自分の同世代でも強い相手をやっぱり求めるんですよね。で、そこで初めてヨーロッパに行った時に、こんなガタイいい選手いるんだとか、こんなに力強いんだとかっていうのを感じて、この先やっぱりこういう選手たちとやっていきたいな、対戦したいな、自分のテニスがどうなるのかなっていうのを感じた時だったので。で、その辺りの時にプロになりたいな、多分プロになればこういう人たちと対戦できて、世界のいろんなとこに行くことも可能なのかなっていうのをなんとなくイメージしていました。例えば全国小学生優勝したいとか、全日本ジュニアU14で優勝したいっていうものは変わらないけど、それよりまたプラスアルファーでそれを取った上で、次のステップにはそういうとこに行きたいなあっていうのはなんとなくありましたね。

稲本 その時見た選手で、みんなが誰もが名前知ってる選手とかいるんですか?

鈴木プロ 14歳の時はいなかったです。僕は16歳の、今でいうジュニアデビスカップに中2、中3と出てるのかな。その時に他の国の選手とかではブラジルだったらグスタボ・クエルテンがいたりだとか、もう辞めちゃってる選手ばっかりですけど、ヨーロッパの選手何人かはその後100位に入ったりだとかいましたね。同世代はマーク・フィリポプーシスだとかマグヌス・ノーマンだとかそういった選手もいるし。ジュニアデ杯には各国3人ずつしか選ばれないので、それ以外の選手は16歳では漏れちゃってると出てこないですけど、グランドスラムのジュニアに行った時なんかは結構同世代の選手を意識して戦ってたっていうのはありますね。

稲本 ちょっと話戻したいんですけど(逸らしているのは僕なんですが)、サーブアンドボレーを貫く上で、やっぱり日本でインターハイで飛んでくるパッシングショットと世界で違いを感じたと思うんですよね、リターンとかも。それをこう経験する中で、気持ちの変化とかそういうのはありましたか?

鈴木プロ プロになったら年齢も関係ないですし、もうサテライト回ってても18歳、17歳の若い選手から(当時だと30幾っていう選手はいなかったですね、結構引退がみんな早かったから、いても二十五、六ぐらいの選手がぎりぎりで。海外の選手なんか結構早めに見切りをつけますから)二十歳ちょっとの選手が多かったと思うんですけど、まあサーブとボレー、バックのスライスはサテライトレベルですけど、そこそこ戦えてたかなっていうのは今ちょっと思い出せばありますね。ただやっぱストローク戦になって特にレッドクレーでガツンガツン打ってくるやつらを相手にすると、やっぱり吹っ飛ばされるし、チャレンジャーレベルに行けばもう自分のサービスゲームなんて普通にリターン返ってきて毎回ファーストボレー打たされるような局面になるし、リターンゲームに回れば早々リターンダッシュをこっちが繰り出すようなこともできなくなる相手ばっかりなので、まあそこでやっぱり本当のプロの世界を味わされたというか。ただ幸いなのはそれでも何点かずつでもヨーロッパのとこでポイントは取れたので、ヨーロッパに日本人が行ってポイントを取れるっていうこと自体はすごい価値があると思って僕はやってたので、ここからは絶対変に逃げたくないなっていうのはありましたね。

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(写真 伊藤功巳)

稲本 なるほど。ちょっとずつサーブとかリターンとかのレベルを上げていって、チャレンジャーとか上に出ても、自分のスタイルで通用するようにテニスを作っていったっていうことですよね?

鈴木プロ そうですね。何よりも僕の中ではハードコートでまず結果を求めるところだっていうのはその時思っていたので。例えば、クレーコート回っていても、クレーコートでそんな勝てなくても、ハードコートに行けば自分のプレーが絶対できるから、そのためにクレーコート回ってる。で、まあサテライトではグラスコートっていうのはなかったですけど、その後少しランキングが上がってグラスコートに行っても、まあ勝てないとしてもまたハードコートシーズンになったり、日本のハードコートの所で勝負できればそれなりに結果は出るだろうっていう。サーブ&ボレーで、自分がネットプレーを得意とするっていうのに不思議だったのはグラスコートが全然合わなかったですね。

稲本 それは意外です。

鈴木プロ これがもう周りの人が、貴男はグラスコート行ったら勝てんじゃんみたいな、得意なんじゃないの?っていう。僕からすると勝手な思い込みだろって思ってたんですけど、全然心地良くないというか、シーズンも短いですし、グラスコートを全然経験してないので、正直戦い方が……。ネットプレーをやりたいんだけど、ハードコートで勝つためのネットプレーを僕はやっちゃってたので、グラスコートでのネットプレーは全く……遅かったですね、10年ぐらい経ってからですね。ほんとにこうグラスコートで戦う術をちょっと分かったなって思ったのは。

稲本 めっちゃ意外です。僕、いまだに覚えてます。僕がちょうどスペインに留学してる時に、鈴木さんがウインブルドン1回戦勝ったんですよ。当時はネットカフェのライブスコアで、すごいみんなで応援してたのを覚えてます。いやでも僕も全くその通りですよ。鈴木貴男だからウインブルドン強いみたいな感じの。全然グラスコート得意じゃない? やっぱりハードコート?

鈴木プロ 得意じゃないっていうか、クレーより嫌でしたね、僕は。

稲本 へえ!

鈴木プロ 一番おもしろくないんですよ。同じネットプレーを、グラスコートでやる場合でも、やはり単調というか、イレギュラーも多いし、なおかつイギリスでやるので雨も多いし、天気も良くないっていうのもあって、なんか気持ち良くプレーできないなっていうのは、ウインブルドンの予選や、グラスコートの前哨戦を戦ってる時にもずっと思ってましたね。

稲本 僕の鈴木貴男の印象は、プレーしててやっぱり楽しそうっていうのがすごくあって……。僕、大阪のチャレンジャーを見に行って、ドイツのパウ選手に勝って優勝した時の決勝も会場で見てたんですけど、パウ選手にトップスピンロブ抜かれたんですよ、鈴木さんは。その時にでかい声で「いいよ、いいよ。こっちのほうが楽しいよ」って言ったんです、声に出して。で、すごいなと思って。なんかやっぱりそういうやり取りがあるほうがおもしろいし、気持ちも上がってくるみたいな?

鈴木プロ はい。まさしくそうですね。どんなタイプの選手でもいいから、僕のプレースタイルだったり僕のこの考え方と駆け引きしてくれる相手がおもしろいですね。それが別にストローカーでもネットプレーヤーでもサーフェスがどこでも関係ない。一番駆け引きが多いなって思うのはクレーコートなので好きです。まずいろんな駆け引きをしてネットを取ろうとしたり、クレーが得意な相手にストロークを気持ち良くせないっていうことをやるので、だからそれに対して向かってくるタイプの選手がおもしろいですね。

稲本 なるほど。指導者の世界でも15年ぐらい前から急にテニスはオープンスキルだっていわれだして、元々40年前とかはフォームだったじゃないですか?ウッドラケットの時代とかかな? フォーム重視な感じからちょっとずつ変わってきて、オープンスキルだみたいな、やり取りが大切みたいな感じになって。すごく分かるんだけど、なんかこうみんなピンとこない。で、僕すごい意外だったのは、鈴木さんのテニスはどちらかというとサーブ&ボレーでシンプルな感じなのでやりとりがない方が好きなんだと思ってましたね。今、ジュニアの子たちに見て参考にしたらってよく言うのは、例えば西岡良仁選手のテニスがすごく駆け引きが分かりやすい。

鈴木プロ うん。

稲本 あれが基本でああいうのをやったほうがいいよっていうふうに言ってるんだけど、鈴木貴男のテニスがそうだっていうのはすごいおもしろいですね。

鈴木プロ 僕はもう、多分世界の中でも日本の中でも断トツだと思いますけど、いわゆるどれだけパッシングを抜かれてきたプレーヤーかっていうのが一番だと思うんですよ。で、しかもそのパッシングを抜かれて、スピンロブも抜かれる中で、それをもちろん悔しいとは思うけれども喜べる。いわゆる、そこからそう抜くんかいっていうのを。ほんとに僕は全然嫌じゃないし、逆に自分でボレーをミスったりアプローチのミスをするとかいうほうが嫌ですね、気分的には。もうどんどん何事もなかったかのように抜いてくれる、サーブを返してくれるっていう相手とぶつかって、それでどうするかっていうことなので、結局は。なんか僕は試合とかやってもあんまり簡単に勝ちたいとは思わないんです。スコア、数字的にただ6-0、6-1とかで全然セット取りたいと思わないですよね。別にワンブレークできるところをちゃんと間違わなければいいやって思ってるし、ワンブレークされちゃったらツーブレークするか、タイブレークに行けばいいんじゃないっていう感覚で、どんな相手とやっても考えてるので。なので逆に相手にゲーム取られたくないとか、ポイント取らせないとかいうふうにはあんまり思えないというか、それが窮屈ですね、僕の中では。

稲本 なるほど。それはすごいおもしろいな。それは鈴木さんと対戦した選手から聞いたことがあって。

鈴木プロ ああ、そうですか(笑)

稲本 H/K君(仮名)っていう全日本ジュニア優勝したジュニアの子がいて、彼がまだジュニア上がりすぐの頃かな? プロ選手何人かと練習してもらった時に、鈴木さんはワンブレークすればいいっていう考え方だから、たまに俺でも1ゲームは取れることがあるって言ってました。

鈴木プロ そうですね。僕はジュニアとか学生とかと例えばゲーム練習でワンセットやろっかなんていう時も、相手のサービスゲームに関してはそれほど圧倒しようと思いません。別にジュニア相手でも6-4でいいんじゃない? 2、2、3、3、4、4行って、ブレークしてキープするとか。タイブレークまでお互い気持ちよくサービスゲーム取って、よしじゃあタイブレークでちょっとお互い駆け引きしようかっていうぐらいの感覚でいいかなと思うので。あんまりなんかプロの壁を見せてやるとかそういうのは、僕は数字ではできないんです。6-0でプロにはゲーム取れねえだろとかっていうのを。結果的にそうなったら別にそれはそれでいいですけど、あんまりそれを自分の中で目指してないというか、逆に僕のそういう(4−4になった状況の)サービスゲームに対して、「どうする? このキープキープつながってきたところでどれだけジュニアのトップの選手が、プロのプレッシャーに耐えられる?」っていうほうが僕は好きですね。

稲本 なるほど。

鈴木プロ ブレークポイント握られたときに俺がこうチャージかけようとしているところでダブルフォルトしない勇気ある?っていう。もっと上のステージに行ったときに、そういうところで勝敗が分かれると僕は思っているので、別にプロに対して1ゲーム取ったやったーなんて言ってるよりは、もっと対等な感じでいますね、ジュニアとやっても。いち選手として認めて、ジュニアでも日本の中でもそれなりのトップにいたらやっぱりそれなりの武器があるだろうし、そういう人に対して、どうする?っていうのを楽しんでますね。

稲本 駆け引きというと、僕らレベルの選手だと駆け引きに、上も下もないみたいな感じで思っちゃうんですけど、やっぱり駆け引きが強い選手とかっていうのはいるもんなんですか?

鈴木プロ そうですね。やっぱり相手のことをしっかり観察できるっていうのが重要だと思います。どういうフォームだとか、どういうボールのスピード・回転量とか、フォアバックでもこういうところが得意なんだなとかっていうのをできる限り観察する。でも長く見るのはあまり好きじゃないんです。例えば知らない選手を見るとすると、長くても見ても5分です。逆に相手のことを分かりすぎちゃって駆け引きがおかしくなることも結構あるんですね。何よりも駆け引きの中で自分のスタイルがある、例えば自分の得意なもの、苦手なものだったり、ストレートで勝ちたい、いや俺は挽回型だとかいろんなものがある中で、自分があるから相手はどうしてくる?っていう考えにしてほしくて。あまりにも相手のことを見すぎちゃって相手がフォアが得意だから全部バックに集めようなんていうあまりにも単純。僕からするとそれは駆け引きじゃない。だから、瞬時に5分くらいででパッと見て、ああこういうタイプなんだなっていうのを自分でイメージする。で、結局自分と戦ったら他の選手と戦ってるときと同じようなことは絶対しないから。だから僕はあんまり試合前とかも、例えば次当たる選手の試合を見に行くときにももう数ゲームだけにしてます。あんまり1セットとか見ると逆に頭でっかちになっちゃって疲れちゃいますね。

稲本 一瞬の観察力が駆け引き力になってくるっていう。

鈴木プロ なりますね。例えばジュニアでも一般の方でも、4球ずつのサービスしかないだろうっていう状況で自分が打つことばっかり気にしてませんか? 自分のサーブを入れようとか、ちょっと速いの打ってやろうとかっていうよりも、相手のサーブのモーションを見て、相手がどういうタイプで、例えばスライス系が多いだろうなとか、結構スピードがありそうだなとかっていうのをちゃんと見てますか?っていうのが大事です。プロだったら5分のアップで自分が打ちながら相手をなんとなく見て、結構スライス多く使うなとか、意外とバックうまそうに見えるけどフォアに回り込むタイプなんだなとかっていう、そういうのをほんとに観察してるのかなっていうところですね。

(次回に続く)


編集後記
とにかく自分自身が、鈴木貴男選手から感じていたことを率直にぶつけました。現役時代の鈴木選手から感じていたのは、「鈴木選手は勝つためにもやっているけど、自分のスタイルを貫くことに重きを置いている様に見えていました。」という僕の質問に集約されています。

興味深かった答えとしては、

・どれだけパッシングで抜かれてきたプレイヤーか
・6−0などで簡単に勝ちたいとは思わない
・ジュニアとやっても対等に考えている
・自分があるから相手はどうしてくるっていう考えにして欲しい

などが挙げられます。どの言葉をとっても、テニスがゲームであるということを本当に理解できているなぁと感じます。頭でそうだとわかっていても、高いレベルの勝負をしていく中で、それを実行して行くことはものすごく困難なことだと思います。
僕自身、「テニスはゲームだから」ってジュニアや大人の方に言いますが、鈴木選手にこのように言われると、その理解度をもっともっと高めていかないといけないなと感じます。

何よりすぐにテニスがしたくなりました。次回は、鈴木選手の後悔なども聞いていきます。お楽しみに!

第2弾公開されました。

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第4弾公開されました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。ジュニア育成に関するご質問お待ちしております。


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