見出し画像

気配りの日本語

 今で言う「シェアハウス」、ずっと昔からありました。リビングなどの共有スペースで、他の滞在者と交流が図れるのです。特に、日本に来た外国人が多くいる格安アパートを昔は「外人ハウス」と呼び、渡り歩く旅行者からそのリストをもらったこともあります。私自身、数ヵ月間ですが、その一つに住んでいました。

 その滞在中、建設現場でアルバイト中だと言う、日本語が堪能なある韓国人青年と出会いました。「あなたの日本語は9割分かりますが、現場のおじさんたちは6割ぐらいです」とのこと。実は私、彼に合わせて話すスピードを調節し、言葉を選び、ゆっくり繰り返し、相手の理解度を確認するなど、工夫していました。

 正直な話、今にして思えば、私には当時から日本語を教える「素養」があったのかも知れません。ただし、一般にどんな職場であっても、仲間との性差、年代差、騒音、話すスピード、そして業界の専門用語など、数々の要因によって日本語の難度はぐんぐん上がってしまうものです。

 例えば日本人が外国人に話しかける場合、相手に配慮した話し方を「フォーリナートーク」と言います。「ナニが、スキですか?」「エキは、ミギです」「ナットウ、大丈夫ですか(=食べられますか)?」などなど、簡素化した言葉をゆ~っくり話そうとしますよね。

 ただ私の場合、できれば「自然なスピード」で話すことを心掛けています。「私は日本人です」と言う時も、「私は」をむしろ早口かつ低い声で始め、「日本人」をゆっくりハッキリ言うと、逆に言いたいことが引き立ちますよね。

 一方、少し似た概念ですが、「教師」が学習者のレベルに合わせて分かりやすい話し方をすることは「ティーチャートーク」です。英語のレッスンでも、スムーズに会話が弾んでいる時は、「この教師は話の『運び方』が上手だな」と感じるものです。

 生徒の言語能力は勿論ですが、個性や興味や得意分野などを知り尽くした上で、さらに伸ばせる方法が工夫できる日本語教師に・・・・なってみたいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?