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もしもし?

 子供の頃、自宅の電話に初めて出た時のことを、私はとてもよく覚えています。両親が商売を営んでいたため、忙しい大人達の代わりに自分も何か手伝いたいとでも思ったのでしょう。

 小学校1年生の夏休みが明けた9月、自分も「電話に出たい」と訴え、それが許可されたのです。大人の気分を味わいたかったキーワード、「もしもし」は言わなくていい!とストップが掛かりました(→言わば『もしもし禁止令』)。

 「もしもし」とは元々、「申し申し」または「モノ申し」という意味らしく、「これから私はモノを申し上げますが、聞こえていますか?」という発信の合図だったそうです。諸説あるそうですが、とにかく受話器を取った側が「もしもし」とは言いません。

 昔、2人がお互いに「もしもし?」「もしもし?」との掛け合いを繰り返した後で、「いつまでも話が始まらないじゃないか!」と言うツッコミの漫才があり、別々の漫才師で複数回見たことがあります。

 受話器を取った側が「もしもし」を言わない理由は、言う=申す=謙譲語で、「私が申し上げている」から。つまり、「もしもし」は電話を掛ける側が言うべきだ、という説明もできます。しかし、会社の場合は基本的にまず社名を名乗るはずで、「もしもし」の出番はありませんよね。しかも、受けた相手がいきなり「もしもし」と言うと、高圧的な印象も受けます。

 実は、私がかつて勤めた会社(&グループ会社全体)では、この「もしもし」を全社的に禁止にしていました(→本格的な『もしもし禁止令』)。そう、電話で一切この言葉を使ってはいけなかったのです。「無駄であり相手に失礼だから」という理由だったと記憶しています。とにかく、私はこのルールが大好きでした。誤った使い方を、少しでも多くの方々に認識してもらえる良い機会でもありましたから。

 個人の多くが携帯電話を持ち、SNSなどで個人情報がすぐに拡散してしまう昨今、自然と電話に「名乗らない人」が増えてきました。電話の受け答えも、ルールが定まっていませんよね。会話の運び方、持って行き方次第、と言えるのかも知れません。

 海外で、あるいは外国語で、「もしもし」に当たる言葉をもっともっと研究してみたら面白そうです。

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