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知らないことに近づいてみる

7月31日39日目。

ぼくの住んでいる町ではベトナムからの技能実習生が50名ほど暮らしている。主に漁業に従事している技能実習生は、20代〜40代くらいまでの幅広い年齢層。なかには家族がベトナムにいる、という二児の母親の方もいた。

今のような動きが、さかんに行われるようになったのは、2年程前からで(以前にも外国人技能実習生が来ていたこともあるそう)チラチラと見かけたりはしていたものの、積極的に関わることはなかった。

と、いうのもそれぞれが所属している漁業部の宿舎で、数人で寝泊りしている技能実習生とは、ほとんど会うこともない。町ですれ違うことがたまにあるくらい。いることは知っていても、接点がなければそれ以上近づくことがなかった。

多くの技能実習生は約3年程でベトナムへと戻ることになる。最初の1年半くらいで技能実習に関わる費用を返済し、残りの1年半で日本の文化や楽しみにしていたものを経験し、ベトナムに戻る。

「この町でなにがしてみたい?」

という、問いには「日本語を勉強したい」と、ほとんどの人が答えた。日本語を身につけて、ベトナムに戻ると良い就職先が見つかるらしい。言葉の通じない土地で粛々と、自分のやるべきことをやっている実習生に頭があがらない。

「ハラチャンはなにがしたいですか?」

まっすぐと向けられた眼と質問には、即答できず、「今はビールが飲みたい!」とおどけて答えた。そのグループの中で、比較的日本語が得意なクック(たぶん?)は、「自分もビール飲みます」と良い顔で答えてくれた。来ているTシャツはワンピースのTシャツ。日本のアニメが大好きなクックは来年の5月に遠別を離れてベトナムへと戻っていく。

わからない、言葉も通じない、3年経てばいなくなる存在としてやり過ごすのは簡単だけれど、すこしだけ近づいてみたいと思った。国際交流だとかそういうことではなくて、自分の知らないことを知る存在として、お互いに与え合えるものがあるかもしれない。

最後に、「結婚はしていますか」と聞かれて、「結婚はしていません」と答えた。していません。

今日の一枚。まだ暗くなり切る前の町。交流会は朝の早い技能実習生のために早い時間に終わる。

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