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寄せては返す

3月22日77日目。

どうにも年度末はデスクワークに偏りがちで。北海道のひだりうえの季節は少しずつ春へと向かっていて、うずうずとした気持ちを抑えるのに必死だ。例年より少しだけ雪解けの早い今年、もうすぐ谷にはエゾノリュウキンカが黄色い花を咲かすだろう。

一年を振り返り、報告書を作りながら、何ができて何が足りなかったのか、小さな諦めが多かった年だったなあ、と思い返す。沈んだ気持ちそのままに、楽しいことを考えることは難しい。窓をのぞくとちょうど、夕暮れ時だったのでカメラを持っていつもの海岸へと車を走らせた。

水平線に沈んでいく太陽が、海面に近づくほど空が色を増していく様子を車窓から見る。5分ほどでいつも夕陽を見るお気に入りの場所に到着、雪が積もる冬は通行止めになる場所だ。出発した時よりさらに色を増した夕暮れの空に心の躍動を感じながらまだ雪の残る海岸の砂浜へ歩みを進める。

風のないおだやかな夕暮れに見えるウツツ川は水鏡のようになり、そんな日は「あたり」の日だ。

この日はさらに「あたり」だったようで、この頃気温が上がり解けだした川の氷片が海へと流れ込んでいた。

砂浜に横たわる氷片を立ててみたり、角度を変えてみたり、手を加えながら気の向くままに撮影をする。

夕暮れの色がピークをむかえる数十分の時間、無駄にしないように小走りで写真を飾り立ててくれるものがないか探しながら、シャッターをきり続ける。冬場は活躍の場がなかった長めのレインブーツを履いて海に足を進める。暖かくなってきたとは言ったものの、日没が近づくにつれて気温が下がり、足と手がかじかんできた。

寄せては返すように、今年も春が来る。

春を告げる白鳥が、夕暮れの空をにぎやかに飛んでいた。


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