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最終回#326パピーとあゆむ道 〜我が家の挑戦Ⅱ

みなさん、いつもお世話になっております!!

2023年3月5日から盲導犬候補犬飼育ボランティア(パピーウォーカー)を引き受けていました。
我が家にパピコ(note上のあだ名)を受け入れてから、お別れするまでの2024年6月1日までで合計455日。

あっという間でした。

最終回

2024年6月1日、455日間一緒に過ごしたパピコとお別れしました。
その時の様子はこちらです↓↓

今回最終回は、お別れ後から先日の結果発表までの間の私たちの”気持ち”を中心にお届けし、むすびとしたいかと思います。
昨日の結果発表についてはこちら↓↓

なお、今日のヘッダー写真は、我が家に来て間もないころのパピコ♪
かわいすぎますね〜♪

お別れ後からの1週間程度

北海道盲導犬協会から帰る車の中で、みんなそれぞれおとなしく泣きました。
気持ちを切り替えるため、外食でみんな好きなものを食べました。
食べている時はいいのですが、またすぐ気持ちが戻っていきます。

その気持ち、なんて表現したらいいのでしょうか。

悲しいのか、さびしいのか。
ともすれば、達成感、開放感といったうれしさの類かもしれない。

ほんと、どうやって表現したらいいのかわからない気持ち。

でもやはり一番大きいのは、
「もう二度と会えないんだ・・・」
ということだと思います。

翌日6月2日から、候補犬になるための訓練/審査に入ります。
その中で、適性が判断されます。
ですので当然に、これから人の命を守るための入り口に立つのですから、厳格な環境に身を置き、これまでの甘い生活からは距離をとる必要があるのだと、素人的には考えています。
また、仮に盲導犬になったとすれば、当然に今度はそのユーザーさんへほぼ一生を添い遂げるわけです。
つまり、私たちの存在は余計な混乱を招きます。

混乱という点では、一般家庭へキャリアチェンジした後も同様でしょう。
新しい家庭の皆さんと生活する上で、私たちの存在が新生活へ馴染むことを阻害すると思います。

「もう二度と会えない」

これはある種、死別と同じです。
私は子どもの頃、2度の死別を経験しました。(犬についてです。)

「もう二度と、こうした経験(死に別れ)はしたくない。」
それ以降、私の”犬を飼わない”大きな理由となりました。

だから妻と次女が、”死に別れ”しない方法を探し、このパピーウォーカーのボランティアをすることとなりました。
最後の日に悲しい経験をするということは、最初からわかっていたはずです。
そして、比較論はよくないと思いますが、どっかで生きて頑張っているんだから、死別よりはマシだと思っていたのが正直なところです。

しかし、死別とはまた別な苦しみがあることを知りました。
それは、
「どっかで幸せに生きている」
「誰か別な人と幸せに過ごしている」

「どっかで会おうと思えば、会えてしまう」
という苦しみです。
嫉妬心とも言えるでしょうか。

死別は、心の整理にまでに時間がとてもかかると思いますが、もう絶対に会うことはできません。

しかし今回のケースの場合、厳密には可能性がゼロでない
協会の方は、先方の情報を我々へ提供することはありません。
でも、もしかするともしかして、奇跡的に、なんかの巡り合わせで会えることがあるのかもしれない。

そんな、微かでも可能性があると思うと、どっかでこの瞬間も頑張って生きていると思うと、これまたなんとも言えない気持ちになるということが、今回初めて身をもって経験し、わかったことでした。

さらにその後の1週間

少しずつ、パピコがいないことを受け入れることができるようになってきました。
パピコが来る前の生活に戻ってきた、そんな感覚が湧いてきました。

それでも、習慣とはすごいものです。
パピコは大き音が苦手だから、この1年間、朝はそっと静かに行動していました。
例えば、朝起きて一杯水を飲むのが私の習慣なのですが、その水を飲むためにコップを棚から取り出す時、ガチャガチャ音が立たないようにそっと取り出す。
そんなことが、つい自然と出てしまう。

パピコがいないにも関わらず、やっている自分・・・
「あっ、そうか、もうこんなことしなくていいんだ・・・」
と思う瞬間がなんとも切なかったです。

仕事をしている時、ご飯を食べている時、寝ようとしている時。
ふとした瞬間にパピコの存在が脳裏に浮かびます。

心に穴が開く。

そんな表現を時折見かけますが、こういったことなんだと実感しています。
この気持ち、想像するに自分たちの子どもが我が家から独立して出ていく時と同じなんじゃないか?
そんな仮説を持ちました。

そんなある日、先日授業にお邪魔した小学生からあるものが届きました。
(授業の様子はこちら↓↓)

児童一人ひとりの絵付きお礼状を冊子にしたもの

こんな素敵なものをいただきました。
でも正直、すぐに見ることが出来ませんでした。

なんだか心の穴が大きくなりそうで、ちょっと怖かった・・・

少し日を置いてから、一つひとつ拝見させていただきました。
涙が出るほど嬉しかったです。
いや、涙は出しましたw

パピコを書いたと思われる、かわいいワンチャン♪
こちらも上手ですね!
色々な見え方、表現の仕方がありますね!
恐竜みたいでカッコいいっ!!

冊子の表紙にもあるとおり、多くの方が「訓練がんばれ!」というメッセージを寄せてくれました。
パピコの、そして盲導犬及びその候補犬たちの歩む道がどのようなものが、少しは伝えることができたと実感しました。

ちゃんと授業内容を受け取ってくれた子ども達に、心から感謝です。

運命の2週間後

そしてまた数日後の先日6月14日、北海道盲導犬協会から電話が来ました。
その時の内容は前回#325の通りです。

結論は、
「一般家庭へのキャリアチェンジ」
でした。
要するに、ペットになるということです。

協会の訓練士さんから聞いた、訓練期間のパピコの様子や評価理由は次のとおりです。

  • 何事も楽しんで行う、とても犬らしい犬だった。

  • どこへ行っても興味津々で、人々が大好き。

  • 性格は、とっても素直

  • 散歩へ出かけても、周囲へ興味を持ち、楽しそうに歩く。

ということは一方で、

  • 仕事とプライベートの区別ができにくい。気持ちを切り替えられない。

  • 人々が好きであるが故に、そっちに気がいってしまう。

  • 素直であるが故に、言うことを聞かなかったりと自由奔放

  • 散歩中も、全然指示が通らない。

最初の4つよりも、次の4つが要素として大きかったことが、今回キャリアチェンジとなった理由だと、訓練士さんの話から見出すことが出来ました。

やはり訓練士さんは優しいので、あまりストレートには言いません。
というか、言いにくいに決まってますよねw

この結果を聞いて、これまたなんとも言い難い気持ちになりました。

  • この1年3ヶ月、なんのためにやってきたのか。

  • 自分たちの育て方がまずかったのか。

  • 盲導犬にならない方が幸せだったのか。

  • 盲導犬になるために生まれてきたんだから、残念な結果となったのか。

などなど。

結果として、良かったのか悪かったのか、いったい何が正解だったのか。
感情が混乱し、よくわからなくなりました。

当初から私たちは協会に対し、もし一般家庭へキャリアチェンジする場合も、再び我が家で飼うことを希望していませんでした。
それでも今回、協会の方が再確認をしてくださいました。

「当初からそう聞いていますが、本当にいいですか?」

私たちは、改めて我が家で飼うことをお断りしました。
お気遣いに、心から感謝しています。

妻は、協会の方にこんな質問をしました。
「引き取ってくださるご家庭と、連絡を取ることは可能ですか?」

答えは、やはりNOでした。
でも、
「もしも先方が、当方に相談があれば改めてご連絡させていただきます。」
とのこと。

加えて、
「頻繁に来られては困るが、一般家庭へ引き取られる前に協会で少しだけ顔を合わせるだけなら可能です。」
「おおまかにどの地域で、どういったご家庭に行った概要はお伝えします。」
というこの2点のご配慮をいただきました。

なんとっ!
もう一度会えるチャンスが少しだけあるとはっ!

一瞬嬉しくなった私。
でも待てよ・・・
せっかく2週間かけてようやく心が落ち着いてきたのに、会ってしまうと再び心の穴が大きくなるのでは・・・
そんな気持ちもよぎります。

それを含め、家族で相談しました。
結論としては、
「会う機会があるのに会わないのは、後々後悔しそう。」
ということで、”タイミングが合えば”会いにいくことを決意しました。

私たちが協会へ行けるタイミングと、一般家庭へ引き取られるタイミングが噛み合わなければ成立しないので、運を天に任せるしかありません。

総まとめ 〜パピコから得たもの

先ほど
「この1年3ヶ月、なんのためにやってきたのか。」
と書きましたが、これは決して後悔ではありません。

盲導犬として、候補犬として合格させることが出来なかったということが、果たして残念なことなのか、良いことだったのかという心の葛藤を表現したものです。

私たち家族は、パピコからたくさんのものを受け取りました。

  • 動物(特に犬)を飼ってみたいという子ども達へ、リアルな経験を与えてくれました。

  • 動物と共に過ごすという経験を通して、”愛おしむ”という感情をリアルに体験させてくれたと思います。

  • 一方で、”育てる”という大変さを感じ、そこから”生きる”ということの尊さを少しでも感じさせてくれたのではないでしょうか。この先の彼女らの人生の血肉になったのではないかと感じています。

  • 生きる/育てる を実現するためにしなければならないこと、そしてそれをするための段取りを知ることができたと思います。つまり、私たち人間を含む動物がどのように生きているのか、生きるために何が必要で、それをどのように実現するのかという手段とその実践方法を学ぶことができたと考えています。

  • 娘たちの将来のキャリア選択に、一つの判断材料・判断軸を与えてくれたのではないかと思います。

まだまだあると思うのですが、私の言語表現及び認識の解像度としては、とりあえずこんな感じです。

そして次に私はと言うと、私の今後の人生を決定付けると言っても過言ではない、とてつもなく大きなもの(認識)を得ることができました。

それは、
「私は、ボランティア活動が好きで、その活動を通して生きがいを得ているという自覚
です。

先日始めたマガジン「温故知新」は、間違いなくパピコが私に与えたものの一つの現れです。

なぜ、パピコを通じてボランティアが好きだと自覚したのか?
その理由について触れたいと思います。

自己紹介vol.2で書いたこととかなり重なります。

私は長らく、自治会役員PTA役員をしてきています。
そのほかにも、

  • 消防団員

  • 職場の労働組合役員 〜今はいったん退いていますが汗

  • 野球連盟部員 〜子どもたちの試合の審判をしたり。最近はほとんど行ってませんが汗

  • 部活動保護者会長 〜娘の部活動の会合/意思決定組織

  • NPO法人理事 〜子どもたちの遊び場支援団体

あとは単発でイベントを開催したり、といった活動をしています。
そして、先日までやっていたパピーウォーキング

こららの共通点は何か?

そう、『ボランティア』なんです!

一部で少しだけ報酬めいたものをもらっていますが、時給的に発生するものは一切ありません。
私がやりたくてやっているものです。

これを気づかせてくれたのが、パピコの存在です。
パピコと過ごす1年ちょっとの中で、私はパピコも好きだけど、そもそもボランティアをすることが好きなんだということに気付かされました。

先述したメリット(パピコから受け取ったものとして上で整理したこと)もありますが、私はそれ以上に、
・何かのためになっている
・誰かのためになっている

という”可能性”を感じることができるということ。

つまり、報酬や評価をもらう仕事以外にも、
「社会の一員になっているという実感を与えてくれる」
ことが私にとって最大の喜び・価値であると自覚したのです。

事実として役に立っているかは分かりません。
自己満足で終わっている可能性は、大いにあるでしょう。
特に、今回のパピコの結果はそうかもしれません。

でも、そこに向かって
チャレンジしてみる
行動すること
が私の一つの人生として、社会の一員の一人としてとても重要なのではないかと自己肯定しているところですw

私が大好きな歴史上の人物、吉田松陰先生はこういった趣旨のことを言っています。
「知ると行うは同じことだ」

要するに、
・行わなければ、真に知ることはできない
・知るとは、行わずしてできない

ということを言っていると私は理解しています。
陽明学の「知行同一」という考え方が源流だとも認識しています。

パピコを預かることで、実際にパピーウォーカー/パピーウォーキングがどういうことか、TVや本を見て知っているということよりも圧倒的な解像度で理解することができました。
まさに ”知” と ”行” が ”同一” となりました。

こうした体験が、人生を豊かにする。
世の中を解像度高く理解することができる、見ることができる。

間も無く40歳になりますが、遅きに失するということは全くない。
これからどんどんアクションしていこうと思うことができました!
つまり、この先の人生の大きなモチベーションエネエルギー源を得たという気持ちです。

その意味では、
・心のある一部には穴が空いた一方で、
・別の部分はとても大きくなった・強くなった、
・空いた穴が超回復していっている
とも言えるかもしれませんね!

パピコ、本当にありがとう!!
きっと、新しい家庭に行っても、あなたは楽しく過ごすことができるでしょう。
そして、新しいご家族やその周りの皆さんを幸せにすることができるでしょう。

私たちパピーウォーカーは、パピコのお母さんを育てパピコたちを産ませてくれた繁殖ボランティアの方々とともに、あなた方の幸せをいつまでも遠くから願っています。

どうか元気で。
どうか幸せに。

「決して誰かを傷つけることがないように。」
それが、盲導犬にならなかったとしても、あなたが一生抱えた使命だと私は思います。

以上です。
長きにわたりお付き合いいただいたnoterの皆さん、そして毎回Facebookから入ってご覧いただいたリアル世界でのお知り合いの皆さん、本当にありがとうございました!
皆さんのこれからが、どうか幸せでありますように。

もしパピコと再会できたら、何か書きますね!
本日まで、ご覧いただき本当にありがとうございました、さようなら!!


もしサポートしていただけるならば、現在投稿の軸にしている本の購入やパピーウォーキングにかかる経費に充てさせていただきたいと考えています。