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夏の幽霊

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クラスの同級生、彼女は僕が見えない。他のクラスメイトは見えているのに。  それを良いことに僕は後をつけたり、彼女の私物をさりげなくもらったりしている。それもこれも、自身の鬱屈した…
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#三角関係

夏の幽霊(9)

 うわー、これは足の踏み場がないな、と久々に帰ってきた母になじられた。空き缶は前に母が来…

千羽稲穂
2週間前
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夏の幽霊(8)

 泊まれるところなんて僕は知らない。行き先も決まっていない。現実から逃げられるならどこだ…

千羽稲穂
2週間前
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夏の幽霊(7)

 ウォークマンから流れてくる、ドラマ主題歌が途切れた。機嫌良く歌っていたボーカルが突然す…

千羽稲穂
2週間前
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夏の幽霊(6)

 夏休み一歩手前の、終業式当日。倉田は教室にいた。彼女の隣に陣取り、僕をそっけなく一瞥す…

千羽稲穂
2週間前
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夏の幽霊(5)

 日向葵のドラマが中盤にさしかかったのか、友達が大きな声であの展開はすげぇわ、と会話して…

千羽稲穂
2週間前
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夏の幽霊(4)

 夜更けに、家の玄関からとりとめもなく母が帰ってくることがある。今日がそうらしい。ずいぶ…

千羽稲穂
2週間前
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夏の幽霊(3)

 放課後の昇降口で、僕は彼女の靴箱を開けていた。傍らには、倉田がいて同じように中をのぞき見る。靴箱のほこりっぽい匂いと倉田の女の子の匂いが鼻腔をくすぐる。むずむずしつつ、彼女の荒らされた靴に顔を向ける。朝っぱらに僕がいじったつやめく彼女のローファー。磨きあげられて光の筋が輪郭をなぞる。橙色の光が足下を這いずった。  すると、階段から彼女が下りてくる。僕たちは彼女が今日はいち早くこの昇降口にくることを知っていた。今日は彼女の習い事の日だった。倉田は靴箱の影に隠れて、彼女を遠くか

夏の幽霊(2)

 プール後の生ぬるい風を女子更衣室で感じていた。  棚があるのは左手。僕たち男子が使って…

千羽稲穂
2週間前
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夏の幽霊(1)

あらすじ  クラスの同級生、彼女は僕が見えない。他のクラスメイトは見えているのに。  それ…

千羽稲穂
2週間前
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