大原美術館(1) ピサロのりんご採り

 約2年半ぶりくらいに、我が地元の宝・大原美術館へ行ってきました!
 これほどの名画が日本の地方都市にある意味が分からないという奇跡の美術館です。
 いまの倉敷があるのは大原さんのおかげですし、大原美術館はたとえ街が壊滅しても守り抜かねばならない超重要施設と認識しています。万一水害などが発生した場合にはボランティアとして駆けつけると心に決めております。

左上の建物が大原美術館

 この頃な騒動のおかげですっかり美術館に行かなくなり、名画の実物を見るのは本当に久しぶりです。
 最近はなにか写真に活かせることはないかという視点で絵画を見るようになりましたので、絵を見て感じたことを少し書いてみたいと思います。
 いまはコロナの影響があり短縮営業中で15時閉館なのですが、ゆったりとお昼の12時半ごろに入館しました。なんと今回は招待券を頂いておりまして、無料なのです(ゆとりが違うわ〜)。
 まぁ、実際は体力と集中力の問題で、休憩しながら2時間くらいが鑑賞する限界なのですが…。今回は2時間で3作品をガッツリ見てきましたので、全3回で書きたいと思います。
 なお、感想は全て私の妄想でして、史料研究や専門家の分析などは一切踏まえておりませんので悪しからず。

 第1回目はカミーユ・ピサロの『りんご採り』という作品で、1886年制作です。

りんご採り カミーユ・ピサロ(1886)

 ほぼ正方形のInstagramアスペクト比の作品です。もうこれだけで参考になりそうな予感です。
 まずぱっと見、主役脇役その他キャスト全てに『光が当たってない』という、逆スポットライト作品だなという印象です。写真を撮るときに、光が当たっている部分に面白いものがないかと探してしまうのですが、逆もアリなんですね。難しそうですが。
 とくに注目は右下のリンゴで、キッチリと影に納まっています。これはもう明らかに意図的に、リンゴに光が当たらないようにしてますよね。大きな三角形の影は、おそらく画面左手に建物があって屋根の影が落ちているのでしょう。では、このリンゴの部分の葉っぱの影は? 屋根より高い木なのか。そんなに遠くにあるにしては影がハッキリしすぎる。画面右手の木の影だとすると方向が変な気がする。きっと画面のバランス上、ここにリンゴがなければならなかったけれど、そのリンゴには日が当たってはいけないので、影を足しときましたってことなんじゃないでしょうか。
 このリンゴと影が画面右上の木と連続になっていて、画面右手を包むようにおおきな弧を描いています。三角形の影で視線が右側に引っ張られて抜けそうなのを、この弧でパーフェクトブロックって感じでしょうか。

 左下のリンゴの入ったカゴは、これなんかおかしくない?って感じで、わざと間違えて描いていると思われます。カゴが手前側に倒れちゃってますよね。中身のリンゴを見せるためだと思います。ここがちょっとウソの分、その後ろにある太い緑色の畦も、絵全体のパースからするとちょっと変にしてバランスを取っているのじゃないかなと想像します。
 こういう美しいウソが写真だとやりづらい…。というか、ほぼ絶望。合成写真にするしかなくなります。絵画は複数の視点と時間の流れを1枚の中に閉じ込められるのが特徴だと思いますが、写真は一視点かつ一瞬です。このあたりはもう少し突っ込んで考えてみたいところ。

 さて、今日はこんなところで。全3回と書きましたが、ひょっとすると3回では終わらない…?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?