趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.278 読書 飴村行「粘膜探偵」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は飴村行さんの「粘膜探偵」についてです。
エログロなバイオレンス、スプラッターホラーの「粘膜」シリーズ。
その最新刊の第五弾。
もうここ最近、この過激な「粘膜」シリーズに夢中になり、他の小説が読めなくなるほど。
「粘膜探偵」は6年ぶりに出たらしい。
期待して読んでみると、あれ?あれ?なんだかあっさりしている。
確かに世界観は戦時中で、爬虫人や軍人も出てくる。
主人公は、ナチスのヒットラー・ユーゲントみたいな組織が日本軍にもあるという設定で、少年たちが東京を見回りして不良分子を痛めつけている。
物語は分かりやすく面白いのですが、「粘着」シリーズの特徴である、エログロがない・・・・。
飴村さんは、数年行き詰まって書けなくなり、作風を変えたとインタビューにあるが、もちろん変えるのは作者の自由でいいですが、あまり成功したとは思えません。
ワサビのないお寿司というかスパイスのないカレーというか、飴村さんワールドなのに、全然あっさりして、薄味なんですよ。
まあ探偵というぐらい、謎解きの部分があり、それは新鮮ですが。
もう少しエログロ部分をたっぷりと味わいたかった。
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物語は、主人公の少年は念願のトッケー隊に入り張り切っていた。
トッケー隊は都内の治安を守る少年のグループ。
入隊した初日に班長が暴走して思想的に危険な本を持っていた大学生をボコボコにして、
それを止めに入った警察官でさえも、馬鹿にして追い散らす。
案の定、警察から苦情が来て、主人公のいるトッケー隊の班は自宅謹慎に。
主人公は医学博士の次男で、大きな屋敷に住んでいるが、親は離婚し兄と共に出て行ってしまった。
残るは医学博士の父親、寝たきりの祖母、それを世話する爬虫人の下女。
家には怪しい軍人の大佐が出入りしている。
どうやらナムールに父は行き、何もしていない自分もいくことになりそうだった。
主人公は日本に残る口実を作るために、トッケー隊で手柄を立てて、軍に認めてもらおうと考える。
ちょうどその頃近所で保険金殺人事件が起こる。
主人公は、探偵の真似事ながら、その事件について調べていく。
ただ調べていくにつれて、同じ隊の班長が関わっていることがわかってくる。
ある日自宅謹慎中に捜査をしていたことが、軍の大佐にバレて、
驚愕の秘密を明かされる。
そして事実を知ったからには、主人公にケジメをつけてもらうと言う。
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結構話はちゃんとしたミステリーで面白い。
そして「粘膜」シリーズらしく、戦時中の日本が描かれている。
またキャラとして爬虫人の下女が、嘘を言えないところが面白い。
もう性質なので、下女なのにそのまま、思ったことを言ってしまうところがこの話をユニークにしている。
トッケー隊、「ヒットラー・ユーゲント」みたいな組織、もちろん想像上の組織だが、少年たちが国の正義のために危険思想や風俗を乱すものへ暴力を振るう。
このアイディアはなかなか面白い。
そう、本当にいろいろと面白いんですが、飴村さんの特徴であるエログロがない・・・・。
「粘膜」シリーズの意味がなくなってしまったようです。
今までのエログロから脱却したいそうですが、どうかその部分は復活させて、シチュエーションだけを斬新なものにしたほうが良いと思います。
エログロこそこの粘膜シリーズの根幹です!
そうそう解説で中学生がこのシリーズを読んでいるそうですが、まあとやかく言っても読みたいものは止められませんがw
教育上おすすめできないものはそれはまた極上の味ですから。
今日はここまで。
やっと抜け出せました。原点であるバイオレンスに回帰しながら、新しい面白さを盛りこむことができた。ここから「粘膜シリーズ・第2シーズン」が始まるのかなという気がしています。この作品から、ペンネームの「飴」を略字から正字に変えたんですよ。これからはもっと多くの人に、刺さるものを書いていきたいと思います。動物園でたとえるなら、これまでの僕は爬虫類館の地下にいるトカゲだった。でも今は地上のパンダとも互角に戦えるような気がします。
/飴村 行