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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.362 読書 乙一「GOTH 夜の章 」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 乙一さんの「GOTH 夜の章 」についてです。


暗黒系青春ミステリー。

今更ですが乙一さんにハマりました。

殺人や死に対して興味がある高校生の男女が猟奇的な事件に巻き込まれていく。

3編からなる連続短編集。

もう残酷描写が半端なく、結構キツイ。

そして悪趣味な高校生の男女のキャラクターがとても良い。

感情が薄く、殺人や死に対して興味があり、ある意味シリアルキラー側に近いギリギリな存在。

黒に近いグレーな存在。

近いからこそ、殺人者が寄ってくるし、また殺人者の気持ちがわかるから事件も解決できる。

今までミステリーをたくさん読んできて、警察や探偵が犯人や殺人鬼を追う話はたくさん読んできました。

それは白と黒(正義と悪)の世界で、主人公は白(正義や一般側)だったんです。

どんなにひどい殺人鬼が出てきても、主人公の思想はまともだったんです。

しかし、最近読むようになってきたジャンルは、主人公がグレー側、下手したら黒(悪)側。

悪に対して境界線がなく、ある意味悪に対して共感する。

この作品が魅力的なのは、主人公たちが、ギリギリグレー、もしかして黒かもしれないと言うところです。

とんでもない物語を読んでしまいました。

面白く楽しんでいいのでしょうか。



物語は、第一話「暗黒系 Goth」

主人公の高校生の女の子森野夜は一冊の手帳を拾う。

その手帳には女性を殺害し、山奥で切り刻む過程が細かく書かれていた。

まだ新聞やテレビの情報では発表されていない女性のことまで書いてある。

巷で話題になっている連続猟奇殺人事件の犯人のものではないかと考えた森野夜は

同じ趣味(死や殺人に興味を持つ)を持つ「僕」にまだ警察に発見されていない死体を探しに行こうと誘う。

二人は死体を発見するが、警察に言うわけでもなく、ただバラバラな死体を見るだけ。

森野夜はその殺された女性たちと似たようなファッションをして遊ぶ。

ある日森野夜から「たすけて」とメールがある。

「僕」は森野夜が殺人鬼に狙われて殺されいるかも違いないと彼女の死体を探しに行く。

果たして、森野夜は無事でしょうか、そして殺人鬼を見つけることができるでしょうか。

第二話「犬 Dog」

町で飼い犬の連続誘拐事件が起こる。その事件に興味を持った「僕」は、調査をする。

それと平行に、少女と犬の話が描かれる。小さな犬を狙って誘拐し、橋の下で喉笛を噛み殺して犬の死体を穴に埋める。

「僕」の妹は昔から死の現場に遭ってしまう体質で、偶然に犬が埋められた橋の下を見つけ「僕」はそこでペット誘拐犯を見ようと待ち構える。

少女と犬は母親の愛人の男からひどい暴力を受けていて、力では勝てない男へ復讐のためにペットを練習台にしていた。

「僕」は橋の下を張っていて、少女と犬がペットを殺す現場を見る。

そしてついにその男へ復讐する日が来た。果たして復讐はできるのか。


第三話「記憶 Twins」

主人公の女子高生森野夜の話。

彼女は不眠症になると、眠りにつくため首に紐を巻き付けて寝る。

ある日「僕」といい紐を探しに買い物へ行く。

そこで彼女の過去の話。

彼女には顔がそっくりな妹がいて、幼い頃から死んだ真似をして周りの人を驚かせるのが趣味だった。

プールで溺死しているフリをしたり。

ある日そんな中、首吊りのイタズラをしようとして、支えるはずだった胴体の紐が緩み間違えて妹は死んでしまったと「僕」は聞かされる。

死を見学するのが趣味な「僕」は妹が死んだ祖父の家に行く。

そこで祖母や祖父から話を聞き、幼い頃姉妹が描いた絵を見て、首吊り現場を見る。

そして「僕」は森野夜に会うと、その妹の死の真相を話し始める。

森野夜はなぜ首に紐を巻きつけると眠れるのか。



もうかなりダーク。

特に最初の連続猟奇バラバラ殺人事件の死体の描写は半端ない。

またそれを冷静に見学している高校生の男女が末恐ろしい。

女子高生の森野夜は全身黒い制服の美少女で(ここからGOTHがイメージされたのでしょうかw)、学校では誰ともつるまない。

「死や殺人」に興味がある、「僕」を同類と思って話しかけてきた。

そしてそんな存在だから殺人鬼が寄ってくるフェロモンが出ている。

男子高生の「僕」。森野夜と違ってとりあえず表面的には周りに合わせて喋ったり笑顔を作ったりできる。

でもそれは演技で、趣味は「死や殺人」を見学すること。

この「僕」がまさに主人公だが、小説では内面が描かれて、ある意味殺人鬼に、かなり近い。

だからこそ、殺人鬼の心情がわかり、殺人事件の真相がわかってしまう。

ある意味、一番危ない存在。

でも、ここ最近こういう感情の気薄な人物描写が多くなったような。

そう言う心が存在しない人が増えたわけでなく、そう言う人も稀にいることに最近気がついたのか。

この暗黒面をエンターテインメントにしてとっても興味深かったです。

あまり子供には読ませたくないですね。

でもライトノベル風で、刺激的で、乙一さんは若い方に人気があるでしょうね。

今日はここまで。




彼女はいつも無表情で毎日を過ごしている。しかし発作的にそうさせるほどの感情が、彼女の中にはどうやらあるらしい。
おそらく彼女の無表情さは、魔法瓶の外側が熱くないのと同じなのだ。
内側に何かあっても、それが表まで出てこない。
/P.134 「GOTH 夜の章」より


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