趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.025 映画 スティーヴン・スピルバーグ「続・激突! カージャック」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は映画 スティーヴン・スピルバーグの「続・激突! カージャック」 (1974/米)についてです。
この映画今まで何回も見る機会がありましたが、なんとなくあまり評判?が良くないので避けてきました。
あの有名な「激突」とは関係ないらしいよ、と。
それでもスピルバーグはほとんどの作品を観ていますし(27本ほど。)
黒澤明(41本)、山田洋次(32本)の次に多い監督です。
このまま観ないのも気になるので、ちょうどテレビ放送をしたものを観ました。
脱獄した夫婦が警官を人質にとって子供へ会いにいくロードムービー。
全くあの「激突」の狂った運転手は出てきません。トラックに追われる主人公も。
原題は「The Sugarland Express」 シュガーランドエクスプレス
なんでこの題名で公開しなかったんだろうと思いますが、
確かにこの題名だとロマンチックでアメリカンニューシネマの香りがするので
売るために話題になった「激突」に”続”を付けたかったんでしょう。
やっと観れたお陰で何十年も、もやもやしたものは解消されました。
評判が悪い印象でしたが、それは日本の邦題が悪いだけで、割と楽しめました。
いや意外に面白い作品でした。
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物語は服役中の夫の元へゴールディー・ホーン演じる妻がやってくる。
裁判所の判断で一人息子が取り上げられてしまう。
夫を刑務所から脱獄させ(めちゃくちゃ簡単にw)、老夫婦から奪った車で子供のいるシュガーランドへ目指す。
途中若い警官に職務質問されたとき、パトカーと警官を人質に取り、旅を続けるが
次第に大人数の警察を巻き込み、野次馬やマスコミや自衛団も追っかけ、大行列に。
実際にあった事件を元に映画化したそうです。
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こういう犯罪逃避行の作品はいっぱいありますね。
逃走劇ってそれ自体でもう映画として面白くなりますね。
必然的に動かなければいけないですし。
一番有名なのはボニーとクライドの「俺たちには明日はない」
テレンスマリックの「地獄の逃避行」
タランティーノとトニースコットの「トゥルーロマンス」
リンチの「ワイルドアットハート」
スピルバーグもこういった逃走劇を撮っていたなんて意外!
他の逃走劇の作品と違うのは割と明るくのんびりしているところか。
警察官たちもゆっくり行列を作って、追うというより、一緒に旅をしているような。
そして大体こういう逃走劇は男がキレやすく暴力的で女が感情的というパターンが多いが
この映画の魅力は妻役のゴールディー・ホーンでしょう。
コケティッシュな魅力。
明るく人懐っこく人質の警官にも優しさを見せる。お互いに子供の写真を見せたりする。
途中でおしっこをしたい!と言い出すシーンは好き。
彼女のおかげで、明るい印象の映画になりました。
スピルバーグがこの後にジョーズ、未知との遭遇、レイダース、E.T.と撮っていきますが、
唯一この作品だけ、アメリカンニューシネマな感じがするんです。
もちろん天才映画監督のスピルバーグなので、アメリカンニューシネマのセンチメンタルな感じ、無常感もお茶の子さいさいだと思いますが。
この一作でセンチメンタルは封印して、80年代90年代に映画の歴史を変える
エンターテイメント作家になりました。
やはり彼の中にも、映画青年としての顔もあったんでしょうね。
今日はここまで。
すべての良いアイデアは悪いアイデアからスタートする。
だから良いアイデアが生まれるには長い時間がかかるんだ。
/スティーヴン・スピルバーグ