Web担当者さんは困っている。特に地方企業の担当者さんは。
ぼくは長野県のWebサイト制作会社で働いています。
長野県の大学、企業、JAなどの組織といったコーポレート系のWeb制作が多く、戦略策定・制作・サイト運用を顧客と共創ベースで行うことを得意としています。
Webサイトは企業の経営戦略を実現するためのひとつのツールです。
そして、企業は経営戦略を実現するためにさまざまな課題を抱えています。
たとえば見込み客の獲得。
しかも、より質の高い見込み客の獲得。
そのうえで、見込み客の育成およびファン化への取り組み。
たとえば採用における希望者の獲得。
しかも、より熱意のある希望者の獲得。(内定辞退されないように)
たとえば中長期計画をみすえた新規事業のマーケティング。
しかも、思考錯誤な段階なので、リアルな現場のプロジェクトチームと足並みを合わせる必要がある。
企業のWebサイトはやるべきことが沢山ある。
というか、サイトを作っただけではスタートラインに立っただけで、サイト公開後こそが本番というのはもう当たり前の話になりました。
本棚を作るために金槌を買った。
それだけで本棚は完成しませんよね。
金槌は使われなければいけません。釘を打ったり、板をとんとん叩いて調整したり。
金槌は本棚を作るための道具であり、Webも経営戦略を実現するための道具です。
道具は使われなければならない。
と、ここまで書いたことは企業のWebサイト活用にとっては本当に当たり前のことで、ネットで調べても、本屋さんでぱらぱらと本をめくっても、どこでも書いてあることです。いまここでわざわざ書いているのもちょっと照れるくらいです。
だけど。
そう、だけど分かってくれないという声が多いんですね。
企業のWeb担当者さんに。
彼らはWebに対してやっぱり責任を感じているし、もっと活用したいと思っているし、今のままだと難しいと思っている。
でも、Webへの決定権をもっていないのがほぼ実情です。
実務担当者ではあるが、決定権者ではない。
ほとんどの企業のWeb決定権者は経営者です。
それ自体は間違いではないですが、経営者の方々はどうにも経営に忙しいらいく、Webについてあまり興味をもっていないようです。
だから、Webサイトは道具である。道具は使わないと意味がない。という、とても当たり前のこと、ちょっと調べればわかることも把握されていないのが実情です。
そういう決定権者は、ふと思いついたときに、Web担当者を呼び寄せ、
「今、ホームページはどれだけアクセスがあるんだ」
「それだけか」
「もっと見られるようにしろ」
「そしてホームページで仕事を取れるようにしろ」
「ホームページが古くてダメなのなら新しくしろ」
といった視点で語りがちです。
でも。
Web担当者さんは思います。
そう。
でも、です。
金槌が古くなったから、新しい金槌を買ったとしても、本棚は出来上がりませんよね?
Web担当者さんはそう思います。
でも、言えない。
なかなか言えない。
雇用関係というのはなかなかやっかいな環境だと思います。
「いや、社長ちがうんです」といえる労働環境なら何の問題もないんです。
そして、そういう労働環境の企業はそもそも、この問題に陥っていません。とっくに本棚を完成しています。金槌を有効に使って。
そうじゃないから。
言えないから。
言っても分かってもらえないから。
分かってる風で、実はやっぱり分かっていないから。
この、「わかってる風で、実はやっぱり分かってない」が一番やっかいです。
だからWeb担当者さんは困っているんです。
特に地方の中小企業のWeb担当者さんは。
困っているWeb担当者さんはたいてい孤独です。
困って、無力感を感じて、そのうち諦めてしまいます。
これは仕方がない。
Web担当者さんを責めるのは酷です。
地方の中小企業のWeb担当者さんの悩みは端的にいって、
どんな風に説明したら本当に分かってもらえるんだろう?
につきると思います。
やっぱり有効なのは講座やセミナーで、長野県でもWebセミナーはさまざまに企画されるようになりました。
本当はそこに経営者さんが参加してほしいのですが、多くはWeb担当者さんや総務、または広報部の方が来られているようです。
ぼくの会社でも、企業のWeb活用のためのセミナーや講座を定期的に開催しています。
ここでもWeb担当者さんの参加が多いのですが、「なるほど、これなら分かってもらえるかも」と感じてもらった方から、「自社に来てもらって、Webセミナーを役員たちに向けにやってもらえないだろうか?」という相談をいただきます。
もう、望むところです。
ぼくだちはそれを出張セミナーと呼んでいます。
会社に訪問して、社長や取締役がずらりと並ぶ会議室で「企業にとってのWeb活用とは」というセミナーをします。
タイトルは「企業にとってのWeb活用とは」ですが、言っていることは「金槌は使いましょうね」ということです。
最初はあまり興味なさそうな社長・役員さんたちも、三十分もすると熱を入れて聞いてくれるようになります。
でも、当たり前なんです。
Webのことを話しているんじゃなくて、経営戦略の実現のためにWebが貢献できることを話しているんですから。そこに興味がない経営陣なんていません。
そうか。ホームページのことを考えるんじゃなくて、経営のことを考えて質問したり、相談したりすればいいのか。
そう思ってくれたら、もうOKです。
Web担当者さんもうれしそうです。
きっと、おなかの中で、「そうそう。そうなんです!」と思っています。
ぼくたちもうれしいです。
よーし、金槌を使って、立派な本棚を作ろうね。
と、みんなが同じ気持ちになります。
チームの誕生です。やった。
(顧客とぼくたちがチームになって、サイト運用を共創する取り組みが長野県の新聞でも取り上げられました。信濃毎日新聞2018年5月30日版)
ぼくたちはそんな風にして、地方企業の方たちとお会いしています。
千里の道も一歩から。
※ ※ ※
5月18日に開催した『「成果」につながるインターネット・メディアの活かし方』では約50人の参加者が集まりました。
ゲスト講師は塩谷舞さん、徳谷柿次郎さん。
Webを通じた共感の輪を、独自の手法で広げ、たくさんの人の心を動かし続けているお二人のマジックをたっぷり聞ける講座になりました。
ぼくたちスタッフ、参加者、講師、皆さんがフラットに同時進行で「今ここで起きていること」「思ったこと」「感じたこと」「終わってから思ったこと」を投稿・共有したコンテンツをまとめました。
SBW Twitter 塩谷舞さんお話まとめ。
SBW Twitter 徳谷柿二郎さんお話まとめ。 まとめその2。
参加者さんによるTwitterのモーメント(@kanaconoさん)
よかったら読んでみてください。
そして、長野県以外の地方企業のWeb担当者さんで、困ってしまっている方がいたら、制作会社を探す目をちょっと変えてみることをおすすめします。
「かっこいい金槌を作りますよ」という制作会社だけではなく、
「金槌は使いましょうね」と経営陣にいってくれる制作会社もあるはずですから。
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