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TENGAロケットはじまりの話

2019年7月、TENGA社の松本社長と初めて北海道大樹町で会った。ロケット打上げ前夜祭という関係者限定の小さなパーティで、打上げ見学のためにTENGA社の数名で来てくれたのだ。ロケット打上げ準備は現場の皆に任せて自分は社長として来客歓待の役割をしていた。

松本社長から最初に言われた言葉を覚えている。

「宇宙用TENGAを作りたいんだ」

挨拶もそこそこの一言目に何を言っているんだと思ったが、これ以上なく夢が広がる言葉だった。

TENGAロケットの企画はじまり

記者会見で詳細は話されているが、ロケット開発現場側からすると、突然湧いてきた話だった。そもそも企業コラボ企画はいつも突然くる。実際にはミッション実現性、打上げ機会の少なさ、時期、費用面など様々なハードルがあり、企画から実現までの打率は2~3割とかの感じ。

最初の企画名は「TENGA宇宙に行く」

認知度を上げたい目的ではない

ロケットやMOMOの説明をしている中で、言われた衝撃な言葉、「弊社(TENGA)としては認知度を上げる必要はありません」

えっ、ロケット丸々1機使って、宣伝の目的が無い?と驚いたが、認知度の話だった。調べてみると、TENGAの認知度は男性85.7%、女性63.4%らしい。

認知度の参考として、宇宙関係でJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)が89%。名探偵コナン・ウルトラマン・ドラゴンボールとかの認知度が80%代なので男性に向けてはそういうクラスの認知度らしい。

たしかに自分の周りでTENGAを知らない人はいないが、普段の生活で口に出すことは少ない単語なので、意外だった。

真面目なモノづくり企業

TENGAという商品のインパクトが強すぎて、全く意識していなかったがTENGA社は知れば知るほど面白い会社。

真面目なモノづくり企業なのだ。自社でプロダクトを磨き上げている。
前夜祭で社員の方に聞いた話では、商品開発のタイミングだと毎日20個試作品を持って帰って家で試して研究したりしているらしい。

毎日、20個、試す?

なるほど、極めてタフな仕事だ。
自社製品を自ら試し、製品へのフィードバックをするのは商品開発の基本であり王道。こういうことをちゃんとやっている。

成功したベンチャー企業としてのTENGA社

15周年企業であるTENGA社は成功したベンチャーのお手本になるなとつくづく思う。

社会の課題を認識し、
アンケートなどでは出ない顧客の真のニーズを捉え、
顧客が満足するプロダクトを作り、
プロダクトからブランドに成長させ、
マーケティングで販路を拡大し、
プロダクトを広めることで社会をいつのまにか変革させる。

こういう教科書的なベンチャー企業の理想をTENGA社は実現している。

TENGAと同系列プロダクトを考えるとよくわかる。同系列プロダクトにはデザイン性を考慮されたものは少ない、劣情刺激なピンクデザインはあってもオシャレでは無い。これに伴ってアングラな商品感があり、買える場所もかなり限られている。

これに比較して、TENGAさんはデザインと商品性を持ち、街のドラッグストアなどで買える。また福山雅治など有名人ユーザーによってイメージ向上している。TENGA社の活動によって「性を表通りに」というビジョン通りに社会が少しづつ変わっている。

デザイン・PR・遊び心

TENGA社のオフィスに打合せで数回訪問したが、キレイでオシャレ。

PRも非常にうまい。記者会見の準備の手際の良さはすぐには真似できないレベル。PRのクリエイティブに関しても面白く、素晴らしいプロを揃えている。大手広告代理店さんの仕事で同じぐらいのクオリティの仕事を見たことはあったが、自社で高いクオリティを出せるのはすごい。

遊び心も面白い。Webpage・変形玩具としてのTENGAロボ・変形するキグルミのTENGAロボ・ミッションマーク、全てが遊び心が満載でセンスもある。

真面目なモノづくり企業、なるべく自社でやる、遊び心。自分たちを近い文化を持ちながらレベルは高いTENGAの皆さん。

とても親近感が湧いたので社員さんを褒めてたら

「セルフが得意な会社ですから」

照れながら苦笑いされた。

宇宙の衣食住と

松本社長から言われた「宇宙用TENGA」という単語。考えれば考えるほど夢がある。

現在の人類の宇宙進出は宇宙飛行士というプロが地球近傍の宇宙ステーションに滞在するまでだ。月は50年も前に短期滞在したっきりだ。しかし、宇宙開発は前進していて、間違いなく一般人が宇宙に長期間定住する時代になる。そういう時代に向けて様々なプロジェクトが進んでいる。

定住時代に向けて宇宙の食の問題を解決しようとしているプロジェクトもあったりする。

また宇宙建築コンテストという賞レースが実施されていたり、世界では新しい民間ロケット用の宇宙服が開発されるなど衣食住を様々にアップデートしようとたくさんの人が努力している。

キレイな話だけではなく、生きていくためにはトイレも大事で宇宙でのトイレ開発は失敗の歴史も含めて面白い。

宇宙での性

宇宙空間での性の話はタブーにされている。宇宙飛行士に宇宙での性行為をしたらどうなるかとの質問にNASAの宇宙飛行士はこう答えた

「われわれは互いに敬意を払っており、最高の職務上の関係を持っている。個人的な関係は問題にはならない。そういった関係は無いし、今後も無い」(アレン・ポインデクスター飛行士)

うん、中高生のときに聞いたら宇宙飛行士への敬意が増す素晴らしい回答だ。しかし、現在聞いたときにキレイゴトいいやがって、とモヤモヤする気持ちになる。少なくても持続可能には思えない。

国のプロジェクトでは子供への教育という側面があるために性について取り上げるのは難しい。

民間がやるべき仕事なのである。

宇宙用TENGA

今回のTENGAロケットが単発か継続プロジェクトになるかはわからない。しかし継続して宇宙用TENGAが完成したら、そのポテンシャルは大きいと思う。宇宙食・宇宙建築などと並んで重要な位置を占めていくと思う。技術的な難しさとしては高粘性流体の取り扱い・水を使わなくての再利用性などであり真面目に考えれば興味深い技術課題ではある。

宇宙開発は信仰であった

宇宙開発にはお金が必要、国が必要、大きなストーリーが必要と言われる。まさにそのとおりだと思うが、これら全てサピエンス全史でいうところの虚構と呼ばれているものである。サピエンス全史を読んだ人なら分かる通り虚構と言ってもネガティブな単語ではなく、人類が発展した理由となる共同幻想のことを指す。

かつての自分もそうだが、これまでの国主導の宇宙開発のファンは共同幻想に魅せられていると思う。ロケットや人工衛星を御本尊のように崇め奉っている。宗教の信仰のようにピュアな気持ちで応援している。

ただし、最前線の現場では、国主導の宇宙開発の限界がわかりはじめていて、どうしたら改善できるか議論されている。ざっくりした話では、国に加えて民間やビジネスという観点が必要だということである。虚構(共同幻想)側ではなく、実利側の重要性が強調されている。そういった文脈で、多くの人に宇宙開発が共同幻想に加えて実利も重要だと認識してもらう必要があると考えている。

信仰の破壊としてのMOMOロケット

これまでMOMOというロケットはピュアな共同幻想の信仰に対して波紋を呼ぶようなことをずっとやってきている。「機体に大きくDMMの文字」「機体にゆるキャラの顔」「賛否ある機体名」今回のTENGAロケットもこれまでと同様に信仰を大きく揺さぶる名前とミッションになっている。

アンカーテナンシー

民間宇宙開発は最終利用者として政府が大きな割合を占めることから、政府が先行的な補助を出す例が多い。補助で育成することで最終的に得をしようという戦略である。

観測ロケットMOMOはサイエンスや宇宙工学の発展に寄与するものあり、政府からの補助やサービス調達が早めにされれば、諸外国と同等のスタートが切れる。特にアンカーテナンシーと呼ばれる、リスクのある初期ロット等を政府が購入することで産業育成促進することは米国などでは非常にうまくいっているので多用されている。日本ではまだまだこれから。

先方はそうは思ってないであろうが、TENGAロケットはMOMOというロケットのアンカーテナントの一つになってくれているのである。本来、国や政府がやるべき役割をTENGAさんがやっている。

つまり「チンは国家なり」なのである(最悪のオチ

(蛇足)8年前のTENGAロケット

大学ではロケット作るサークルを立ち上げていた。修士卒業のタイミングでサークルの追いコンを開いてもらったときに後輩からプレゼントでTENGAにロケット装飾をつけたものを貰った。なぜこれがプレゼントされたのか完全に意味不明なのだが、8年前のこのTENGAロケットを経て、本家様とコラボできることになったと思うと感慨深い。

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クラウドファンディング

もうまもなく、TENGAロケットのクラウドファンディングをTENGA社企画で始まります。面白いと思ったら応援お願いします。

https://camp-fire.jp/projects/view/242583

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