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地方自治体の宇宙予算2023年度

県レベルの自治体(都道府県、広域自治体)の宇宙と名前のつく予算を調べてみた。2023年7月時点

背景

宇宙企業の代表者として、宇宙系イベントに登壇依頼を受けることが多い。
事業者代表、スタートアップ経営者、技術者、世界の宇宙開発ウォッチャー、地方創生の一例などなど呼ばれる文脈は様々であり、それぞれ意見を求められる。
呼ばれるのも国、自治体、業界団体、企業、大学それぞれ多方面にわたる。

その中で、各自治体の取り組みの違いはいつも興味深く見ているし、発言もしてきている。
宇宙事業をやるイチ事業者としては宇宙に深く取り組む自治体とは一緒になりたい。求められてない場所では動けないので当然だ。
見聞きして自分が肌で感じている各自治体の雰囲気や予算の世界と、一般の人たちの印象からくる感覚の違いは大きい。この違いは、広報の上手い下手や目立つ事業者がいるかどうかが大きい。
定量的に見るためにも、広域自治体の宇宙関係予算を簡単にまとめてみた。

調べ方

各自治体の予算ページから宇宙と検索して予算項目に「宇宙」と書かれているものを抜き出しまとめた。予算は一般会計予算だけであり、当初予算のみを対象とした。急いで調べているので多少の漏れ抜けはあるかもしれない。

予算内容

宇宙関連予算といっても、その内容は多岐にわたる。

  • 理解促進のイベントやセミナー開催

  • 産業振興の研究開発支援

  • インフラ整備

  • 教育

注意事項

宇宙予算といっても上記のように内容は各自治体で全く異なる。
また、「宇宙」と予算名目が付いてないだけで、隠れて宇宙関連企業や関係者が恩恵を得ていることも多い。産業振興だったり、インフラ整備だったり、中小企業支援、スタートアップ支援、基盤となる技術センターや経済団体予算、工業用地整備だったりと、単純に名称が違うだけのものもある。
また、予算以外の部分で役所職員さんの貢献や中央省庁などへの人材出向で人材と情報による振興を図るもの。
加えて、一般会計予算だけではなく、2019年に和歌山県が無利子融資制度を用いてロケット射場を建設する企業に無利子融資制度で融資を実行した例もある。
このように財源や予算の出し方自体も多岐にわたる。

財源・出し先・目的等々、各自治体で統一的に整理するのは難しいので、簡単のために、予算名に「宇宙」とついている一般会計予算(当初予算)の予算だけで比較している。
その点に注意して読んでもらいたい。

まとめ

2023年度(令和5年)各自治体の宇宙関連予算

自治体の選出は内閣府がすすめる宇宙ビジネス創出推進自治体(S-NET)に加えて、宇宙事業を明らかにやっている自治体を選んだ。抜けている自治体があったら、ただ単に忘れているだけである。

福島県が1.68億円とダントツで多い。福島県は復興予算と呼ばれる予算があり、産業育成は働く場所の復興の意味でもしっかり予算がついている。また、宇宙の名前こそ無いが、地域復興実用化開発等促進事業という名前の大きな予算があり、スタートアップ企業で認められたところはかなりしっかり支援が入る。我々の会社もその恩恵を受けている。
そのため他の自治体と比較するときはまとめると少し気をつける必要がある。

福島県の宇宙予算

また、一番予算が少ないのは北海道である。665.5万円である。
北海道の鈴木直道知事は2019年の選挙時点や2023年の選挙公約に宇宙産業を公約に入れているが、現実の2023年度予算は665.5万円である。
知事の公約は665.5万円分の価値がある。

北海道の宇宙予算
北海道の鈴木直道知事が2023年4月に発表した選挙公約
この公約が実現するのは2024年度からなので来年度への期待が高まる

北海道では自治体としての人材面での支援や大学や財団など様々な公共部門が宇宙産業に大きく貢献してもらっている。また、基礎自治体や草の根的な活動の多さはでは他から群を抜いている感じはある。(自分が住んでいてよく知っているというバイアスはあるが)

しかし、予算は他の自治体に比べて少ないのが現実である。
北海道の一般会計予算2.8兆円のうちの665.5万円である。一般会計予算の0.00023%である。

一般会計予算に対する割合

各自治体毎に財政事情は大きく異なる。取り上げている自治体の予算規模が大きいのは北海道2.85兆円、福岡県2.20兆円である。逆に小さいのは鳥取県3350億円である。最大で8倍ほど財政規模に差があるので、金額の大小だけで比較しては解釈を誤る。
先程のグラフに一般会計予算に対する宇宙関連予算の割合を追加した。割合はパーセント(百分率)では小さくなりすぎるのでppm(百万分率)で表示した。

2023年度(令和5年)各自治体の宇宙関連予算、一般会計予算割合を追記

こうしてみると、福島県の予算の多さは変わらずであるが、大分県や山口県、鳥取県、和歌山県の予算の多さが際立つ。割合としても80~130ppmである。

一番少ないのは北海道である。
2ppmである。一般会計予算の百万分の2が宇宙に当てられている。
自治体予算は規模が分かりにくいので例えてみると、日本の年収中央値の350万円の2ppmは700円である。
ありがとう北海道。

民間企業側が考えること

企業としては応援される自治体に居を構えたい。
自治体の予算目当てで場所を決めることは無いが、予算が向けられている自治体はその他の面でも良いことが多い。
意思決定には雰囲気・勢い・ノリが大事である。それらは予算の大小と相関する。
つまり、総合的な判断をするときに定量的な数字としての一般会計予算は判断基準となりうる。


各自治体の詳細

具体的なことを知りたい人向けにスクリーンショットを貼っておく。

北海道

665.5万円
推進体制整備や人材確保支援 URL

北海道

福島県

1億6841.5万円
コーディネーター設置、サプライチェーン構築支援、産学官連携、認証支援、研修、設備導入補助、イベント開催、商談会出展支援 URL

福島県

茨城県

6400万円
コーディネーター増員、イベント開催、県のセンターとの共同研究、中小企業支援、拠点設置補助 URL

茨城県

群馬県

1080.4万円
アイディア事業化・実証支援、セミナー開催 URL

群馬県

福井県

3046.1万円
衛星製造打上の補助、衛星画像活用研究、研修、マッチング URL

福井県

岐阜県

4319.4万円
マッチング、商談会、商談サポート、研修、セミナー、工業高校での教育 URL

岐阜県

和歌山県

4773万円
射場周辺活性化、高校での宇宙教育 URL

和歌山県

鳥取県

3200万円
鳥取砂丘でのフィールド運営事業 URL

山口県

7554.6万円
衛星データ活用事業、産業の受注獲得・研究開発支援 URL

山口県

福岡県

5848.2万円
展示会、衛星データ活用支援、宇宙食認証支援 URL

福岡県

大分県

6403.5万円
スペースポート関連 URL

大分県

鹿児島県

2032.1万円
イベント開催、マッチング、研究開発、衛星データ実証 URL

鹿児島県①
鹿児島県②

番外:佐賀県

佐賀県は実は宇宙関連予算が一番多い。宇宙科学館という設備整備事業として4億7690万円がある。これは科学館整備として宇宙そのものでは無いとして除外した。
佐賀県の人たちごめんなさい。

番外:愛知県

愛知県は「航空宇宙産業振興事業費」に7400万円の予算をつけている。実際には航空分野が多そうな印象なこと、航空まで入れると他県との比較ができないことから、予算規模は大きいが除外した。
愛知県の人たちごめんなさい。

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