夏
いやなことがあった帰り道。
上京して初めてできた友達に電話をかけた。
味気ない状況説明と遣瀬ない愚痴をこぼし、最後に「ありがとう。じゃ、また」と言って終話ボタンを押した。今夜はこのブログを書き上げるまで帰らないつもりだ。
咄嗟に出た「じゃ、また」には何の意味も信憑性もなかったはずなのに、自分のその言葉を反芻すると、本当にまた会いたいと思った。田舎臭かった彼の言葉づかいももう随分と東京の匂いに染まってはいるけれど、聞くと心が深呼吸するようにふっと軽くなる。彼にそんなつもりは一切ないし、そんなのは脚色だって笑うだろうけど。
ライブ帰りのツアーTシャツ、花火帰りの浴衣、飲み会帰りのスーツ、公園に捨てられた缶ビールとパピコ。見渡せばどれも二つずつだ。
そろそろ帰ろう。四肢に汗の流れた跡、虫の這った跡が痒くて仕方ない。
近所なのに初めて見つけた路地裏の急階段。そこから腰を持ち上げた。東京は実は坂が多い。
また書きたい。読んでくれますか。
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