【新版】処刑場-TheExecutionSite-

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序「処刑場」

処刑場を知っているか。

 大砲の音が鳴ると、母親は耳をふさいだ。忌々しい儀式だ、忌々しい儀式だ、と、独り言をぼやいていた。
大砲の音が鳴って、しばらくすると、それまでは静かだった市場に静寂が訪れる。誰も出て来やしないのだ。その忌々しい儀式のある日には。
 少年は、耳をふさぐ母親の背中をずっと見ていた。目の前で小さく震える背中を、抱きしめることもできず、茫然と突っ立っていた。
大砲の音を聴くと震え

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第一章「承前」

(一)

「御社にテロの予告あり 業務を直ちに停止せよ」

 偽造文書機構。
 誰が最初にそう言い出したのかはわからないが、政府高官や報道関係者は「偽の情報を偽の情報として流布する」この機構をそう呼んだ。
この国において、検閲による表現や報道の規制がされるようになって久しい。それに伴って、検閲に引っ掛かりにくい情報操作の手法が暗黙の了解となっていったのは、必然と言えば必然と言えるかもしれない。

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