見出し画像

【映画レビュー】(500)日のサマー

※この文章は2019年9月23日にアメブロで書きました。noteに一本化するために記事を転載しました。

映画「(500)日のサマー」を見ました。
2009年公開のマーク・ウェブ監督の青春映画です。
 
運命を信じる男性と、運命を信じない女性の500日を、時系列順ではなく、「〇日目」と提示し、シャッフル形式で綴っています。
500日間の後半の方を見せてから、「数日前は最高だった」という感じで日付を遡ったりします。
 
男女のリアルなすれ違いと、人生は「いま、この瞬間」に起きたことが全てだと考えさせられる作品でした。
ネタバレ有りですが、端折っているところもあるので、まだ見ていない方はぜひ本編を観てほしいです。
サマーが可愛いです。
女性向けだと思ってましたが、出来れば男女で見てほしいです。
なぜなら男性にも見てもらいたいからです。
恋人と長続きしたい人は見るべきだと思います。

★★★以下、ネタバレ★★★

 1.トムについて

●この物語の主人公
物語には語り部がいて、トム寄りの三人称で進みます。
主人公のトムは建築家を夢見る青年で、グリーティングカード会社で働いています。
家族構成は両親・妹で、ごく一般の家庭のようです。社会人なので一人暮らしをしているんでしょう。
どちらかと言えば文化系男子です。特に興味があるのが、音楽・映画・建築。
思い込みが強いタイプで、傷つきやすく、思い込みによって自分を守るタイプ。
サマーを一目見て、運命の子だと思い、容姿や仕草など何から何まで賞賛しますが、サマーの気が自分にないと思うと、やっぱりあいつは性悪だ、と友達に愚痴ったりします。

●サマーとの馴れ初め
社員全員参加のパーティーでトムとサマーの関係が動きます。
傷心中のトムはパーティーに「行かない」と言いますが、結局参加します。
そんなトムを見かねたのか、彼と仲良しの同僚がサマーを呼び止め、三人でお酒を飲みながら話すことに。
同僚はトムがサマーに直接聞けなかったことを代わりに聞いてくれます。「恋人はいるの?」「君はレズ?」
サマーはシングルで、レズではないと答えます。
さらに、「愛や運命、人を好きになることがわからないから一人が好き」と続けます。
帰り際、泥酔した同僚が「こいつ、君にべた惚れ」とトムの気持ちをサマーにバラしてしまいます。
トムははぐらかすのですが、この一言がきっかけでサマーから「あなたと友達になりたい」と告げられます。

●恋人? 友達?
二人は親友と言いながら、手を繋ぎ、IKEAで夫婦ごっこをし、キスをし、体を重ねます。
二人のいちゃつきっぷりはどんどんエスカレートしていきますが、サマーには度々「恋人同士のような普通の付き合いは考えていない」「私達、友達よね?」と線を引かれます。
一方でトムは、ラベルのつけられない関係とサマーの心がいつ離れるかわからないことに不安を抱えながらも、結局、何もしません。
友達や、歳の離れた妹に「早めにけりをつけるべき」と言われますが、「彼女は運命の女の子なんだ」「ぼくたちはうまくいっている」「大人の関係だから平気なんだ。」と聞く耳を持ちません。
そして、二人の微妙な関係は出会ってから別れるまでの500日間の内に終わり、サマーは他の人と結婚します。しかも、決め手は「運命を感じた」から。
トムは「不安だ」「別れたくない」類のことは言いますが、最後までサマーに「好きだ」と言いません。
(誰か男性の映画評論家が「トムはこんなに好きだって言っているのに、サマーの気持ちはわからない」と仰っていましたが、女の私からしたらトムが告白をしているようには見えませんでした。ちょっと言葉が足りて無い気がします。)
私は、早めにその一言があれば、二人は恋人同士になれたと思います。
なぜなら、「初めはサマーのほうが、トムのことを好きだったのではないか」と感じたからです。

2.トムに理解のある人たち

●関係者から見たトムの人物像
トムとサマーを取り囲む人たちはみんないい人でした。妹、同僚、友達、社長、アリソン。
トムを心配したり、愚痴に付き合ってくれる人たちばかりです。
この人たちを見ていると、トムは恋愛においてはダメだけど、いい奴で、いいお兄さんなんだろうなと感じました。

●第三者だからわかることがある
サマーと関係を解消後に、トムは友達から女性(アリソン)を紹介されます。
彼女は会ったその日にトムに一方的に振られますが、初対面なのにトムが話すサマーの悪口に付き合ってくれて、最終的に目が覚めるような質問を投げかけます。
その子浮気したの?
あなたを利用した?
友達になりたいって言ったのよね?
あなたが先に彼女を傷つけたのでは……?

サマーのことで仕事が手につかないトムに、社長は、悲しみを仕事に向けられないかとお悔やみのグリーティングカードを作ることを提案します。
トムは本当のことは自分の口で言わなきゃダメだ、もう嘘はたくさんだと言って、会社を辞めます。

3.サマーについて

●サマーのプロフィール
サマーは、社長秘書として中途採用で入社し、そこでトムと出会います。
美貌やスタイルに特筆すべき点はないようですが、サマーのいるところは必ず何かが起こる(サマー効果と呼ばれる)、周りがほっとかない女性。
トムが会社を辞めた事で夢に向き合うようになったのもサマー効果でしょうか。

サマーの両親は離婚しているようです。家族の話はこれ以上、詳しく語られていなかったと思います。
学生時代からとりあえず気になった人と関係を持っていたらしく、トムと違って即行動派の印象です。
 
●トムを気に入ったサマー
サマーは職場のエレベータでトムに会い、ヘッドホンで音楽を聴いている彼に自分から話しかけます。
また、友達になりたいと言った翌日にコピー機の前でトムにキスを仕掛けてきます。
やっぱりサマーはトムのことが好きだったし、恋愛や運命を信じさせてほしかったのではないでしょうか。
「愛なんて信じない」彼女だったからこそ、それを身をもって検証しようとたくさんの男性と経験を持ったのではないでしょうか。
だから、いちゃつきもどんどんエスカレートして、投げやりな感じになっていったのではないでしょうか。
 
●心が重なった雨の日
或る夜、サマーはバーで酔っ払いにナンパされます。
隣のトムは馬鹿にされるも何も言い返せず、一発殴りますが、相手にも殴り返され倒れてしまいます。
サマーは「ダサい」「二度としないで」とトムに言い、そこからケンカに発展。
その勢いで、トムは不安定な自分たちの関係についての不安をサマーに吐露します。
トムは怒ってサマーの部屋を飛び出しますが、サマーがどしゃ振りの中、謝るために彼の部屋を訪ねます。
どれだけ自分を必要としているかを彼の口から聞くことが出来、サマーの心は少し動いたのではないでしょうか。
でも、本当はサマーだって聞きたかったはずです。二人の関係がどこに向かうのか。
自分だってやることやっておいて、被害者ヅラをするトムに少し呆れてしまいました…
(でも、これがこの映画のおもしろいところ)
 
●すれ違いが止まらない
トムを初めて部屋に招いた日にひどく寂しい夢を見ると吐露したサマー。
映画「卒業」を見て号泣したサマー。
そんな彼女の姿を見て、トムはなんとも思わなかったのでしょうか。
逆の立場なら、サマーはトムの話に付き合ってくれたのではないでしょうか。

トムが号泣するサマーに「大丈夫?」と聞くと、サマーは「今日は疲れた、帰りたい」と言います。
そこで「夕飯食べないの?」と続けるトムに、渋々パンケーキを食べる流れに。このパンケーキ屋さんで別れを切り出されます。
トムは話の途中で店を飛び出し、サマーはいつの間にか会社を辞め、同僚の結婚式まで再会することはありませんでした。

この「大丈夫?」って聞いている光景なんですが、めちゃくちゃ見覚えあってびっくりしました。
「大丈夫?」と気にかけてはくれているんですけど、とりあえずの「大丈夫」と言うか、「コーヒーでも飲んで落ち着こう」とかそういう気の利いたことは出来ないのかと。たぶん、こういうことの積み重ねもあったんでしょうね。

4.最後に

会社を辞めてから、トムは建築家になるために面接を受け続けていました。
街が一望できるベンチ(トムのお気に入りの場所)でたたずんでいると、サマーが現れます。
ここはトムに教えてもらってからサマーにとってもお気に入りの場所で、ここでなら彼に会えるかもしれないと思って何度か来ていたのだと言います。
彼女なりにけじめをつけたくて、トムを待っていたのでしょう。
出会った頃とは対照的に、トムは「運命なんてない」と悟り、サマーは「運命はある」と感じていました。
動き出せば、その瞬間に「偶然」は実を結び、「運命」になるのではないでしょうか。
見た人を少し前向きにして、物語は終わります。
 
ちなみに、この映画は見る前からサマーのファッションが有名でした。
トップスをボトムスにインしたり、ワイシャツの着こなしだったり、ボトムスのブーツイン等、上品でとても素敵でした。
ブルネットの髪と、そのアレンジも素敵で、ポニーテールの角度も絶妙でした。
私は夏になる前に髪をバッサリ切ってしまいましたが、またロングヘアにしたいなと思っちゃいました。
トムの格好も、サマーと親密になってから洗練されていきますが、関係解消後に元のダサ坊に戻っていました。
シャツ・ネクタイの上にジップアップのパーカーって、「大学生の一張羅じゃん」と笑ってしまいました。こんなところまでリアルなのか。

★★★ネタバレおわり★★★

冒頭でカップルで見てほしいと言いましたが、恋人がほしい人も見たらいいと思います。
アドラー心理学と恋愛指南本を読んだ後だったので、めちゃくちゃ刺さりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?