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口から考える街の顔

私たちの口

私たちが口と聞いて最初に想像するものは、大半がこの記事の最初に書かれている消化器官としての口だろう。きっと、それは消化器官としての口が私たち生物にとって一番身近で意識しているものだし、身体的にとても重要な器官であるからだと私は考える。


一般的に、消化器官としての口には「食べ物を取り込む器官」と「声を発声する器官」の大きく分けて二つの役割がある。例えば食事をしたり、誰かと会話をする時だったり… 日常を振り返ってみると、全く口を使わない日なんてないのではないだろうか。朝起きて、眠かったら欠伸が出る。ちょっと喉の調子が悪かったら咳が出る。「食べる」と「話す」行為の外でも、口は自身の身体的影響から自然と使われている。口は私たちの生活に大きく関わっている。

口を解いていく

口の役割を、「食べ物を取り込む器官」と「声を発生する器官」と大きく分けたが、共通の役割として「情報の通り道」の役割があると考える。


食べ物を食べる時は、口に物を含んで舌で味を感じる。甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の五種類を、その度合いや比率など多くの情報を瞬時に判断する。それに加え、温度や感触、辛味や渋味などの刺激を感じとる。普段は「食べ物」と一括りにしているが、その中身は様々な情報が集結している。


声を発声する際も、様々な情報が口を解して伝達されている。音の振動、音量、伝達する内容、脳でこれを話そうと決めた瞬間、文字に起こすよりも早く伝えたい言葉を頭の中で様々な情報に変換し、音として口に出すことができる。こちらも、食事と同様、言葉、音、声色などが集結した情報の塊が口を通っていく。

出入り口としての口

口を「情報の通り道」と考えたとき、意味合いだけでみると、教室の扉や駅の改札口も、大きな口の括りに入るのではないかと思う。扉や改札も、毎日違う人間が出入りする。全員が違う顔をしていて、違う服装、性格をしている。たくさんの情報が、毎日この口を通っている。


上のように考えると、「口」いう単語には、情報の通り道と言う大きな意味合いの中でも、顔の一部である身体的な意味と、ものが出入りする出入り口としての意味、二つに別れるのではないか。
このような仮説をたてた時、下の写真のような面白いアイデアを見つけた。

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大きな人の口が建物の出入り口となっている。最近だと、テーマパークなどでよく見られる。迫力やキャラクター性が出る建築であるが、口の意味から考えるとどうだろう。この建築は顔の一部でもあるし、人々が建物へ出入りする口でもある。二つの意味合いを兼ね備えた面白いアイデアである。

街を顔として観る

上文では、口という大きな括りの中に扉や改札も出入り口の意味として含まれるのではないかと記した。そこで、改札口を口=街の口として捉えるならば、街の目を探して街の大きな顔を捉えられるのではないだろうか。
この仮説において、街における目を上文の口の意味と同様に、そのパーツの身体的役割の意味ではなく、口を「情報の通り道」として捉えるように抽象的な意味を捉えようと思う。

生物の、物を見る働きをする器官。また、その様子・働き。見える姿・様子(Oxford Languagesより)

口は味や温度など、触覚的な情報を触れて読み取っているが、目は光などが空間を挟んで間接的に風景などの情報を読み取る。目に近すぎても見えないし、遠すぎてもわからない。ちょうどいい空間を挟んでやっと情報を読み取ることができる。空間と言うフィルターを通って視覚する。空間に霧がかかっていればぼやけて見えるし、赤い光に照らされれば赤味を帯びて見える。通り道よりも、私はそれを「窓」と捉えた。

渋谷の顔を探る


初めに、渋谷の街の顔を探ってみようと思う。

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まず、渋谷の目はどこだろうか。空間を介して、間接的に視覚的情報だけを取り込める場所。私は、そこを展望台だと考えた。大きなガラス張りの展望台から見える渋谷の街は、窓が曇っていればぼやけて見えるし、綺麗に拭かれていれば澄んで見える。夕日に照らされれば街は赤く染まって見えるし、夜は電飾の灯を写す。少し安直ではあるが、SHIBUYA SKYを右目とし、Mag's Park / CROSSING VIEWを左目として捉える。

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そして、この目に改札の口をつけると下のようになる。この顔が、私が今回立てた仮説での渋谷の顔である。


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渋谷-顔


色々な街の顔

渋谷以外の顔も見てみよう。

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これは新宿駅の改札を口、東京都庁の北展望台、南展望台を目として捉えた時の新宿の顔である。忙しない新宿の街とは裏腹に、なんとも間延びした顔が見えてきた。

地図-顔

地図-顔3

私が訪れたことのある町で最も山奥だった町、新潟県十日町。最寄りの大沢駅には、神社とお寺が近くにあるだけ。

だが、丘の上にある神社とお寺からはのどかな景色が探訪できる。役割としては展望台ではないが、ここを目として選んだ。


今回のコラムでは、口の抽象的な意味に着目して街の顔を捉えた。だが、これを目や鼻、あるいは眉毛など、他の部位を中心にしたらもっと違う顔ができるかもしれない。口を改札と捉えたが、他の考え方をしたら全く違う顔が見つかるかもしれない。私たちが過ごしている街に、様々な顔が存在する。是非あなたにも、自分の街の顔を探してみてほしい。


書いた人


profile-秋山智郷



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