見出し画像

天秤2-2[短編小説]

 ふらり、ふらり、今にも焼けた地に膝がついてしまいそうになりながらもなんとか歩を進める僕の足は、道端に落ちた石ころに呆気なく躓いた。端正な顔をした2人の綺麗な女の人にくすくすと笑われて、いとも簡単に消えたくなった。躓いた上にしっかりと転んでしまっていた。消えたくなった気持ちと足の傷は当分消えないだろう。

 心の底に眠っている熱い気持ち。その存在は確かに感じているのだがひどく漠然としている。僕は何に対して熱くなっているのだろうか。この気持ちはいつまで保存できるのだろうか。温かいまま保存しておくには保温性のあるナニカで包まなければならない。そのナニカが僕の中にあるとは到底思えない。もしかしたらもうとっくに冷え切ってしまったのだろうか。それでも尚、唇を開くと出てくる薄い言葉をもう1人の僕が呆れた顔をして聞いているのだ。

 転んだ後に立ち上がったり、疲れて座ったり、夜に起きたり、朝に眠ったり、健全そうなあの子と、不健全そうなあの子を比べてみたり、死んだように生きてみたり、生きたみたいに死んでみたり。君の言葉を噛み砕いて食べたり、またそれを吐いてみたり。どうしようもない僕と、フツウなあの子で比べたり。

 刻々と進む時計の針は僕を置いていっては、また迎えにくる。着々と前に進んでいく君を僕は後ろから眺めている。辛い気持ちばかりのあの子と、もっと辛い気持ちのあの子、そんな彼らとさえも僕は仲間になれない。燦々と照りつける太陽は何を照らしているのだろう。僕が照らされる瞬間はあるのだろうか。太陽熱の熱さは感じるものの、僕に光が当たっている瞬間はあるのだろうか。それでも必死に、躓きながら、転びながらも黙々と歩き続ける僕と痛い思いも知らなそうなあの子とを交互に照らしてくれているのだろうか。天秤の上に乗った僕らはどちらが重いのだろうか。僕は誰と天秤に乗っているんだ?他人なのか?僕自身なのか?考えているうちにわからなくなってきて悲しいとは違う涙が流れてきた。けれど、その様子がなんだか可笑しく思えてきて笑いが込み上げてきた。泣いたり、笑ったりと、忙しい僕の感情はきっとまだ熱を帯びている。感情は踊っているのだ。天秤の上で泣いた、天秤の上で笑った、そして天秤の上で踊った、そんな僕の後ろには2本の足でしっかり立っている影ができていた。

ふらりふらり歩く僕の足は
道端に落ちた石ころにつまずいた
2人の綺麗な女の人に笑われて
消えたくなった気持ちと足の傷

心の奥底に眠る熱い気持ち
いつまで保存できるのかな
唇開きでてくるうすい言葉
呆れた顔して聞いてるの

立ったり座ったり
起きたり眠ったり
あの子とあの子で比べたり
死んだり生きたり
食べたり吐いたり
僕とあの子で比べたり

刻々と進む時計の針と
着々と進んでいく君と
辛い気持ちばかりのあの子と
もっと辛い気持ちのあの子と
燦々と照りつける太陽と
黙々と歩き続ける僕と
痛い思いも知らないあの子と
転んでばかりの僕と
天秤の上で泣いた
天秤の上で笑った
天秤の上で踊った

天秤/いむいぱぴ子

完!
いむいぱぴ子の「天秤」という曲の歌詞から広げる物語第一弾でした。たのし。
これ、友達とか仲間とか人様の楽曲でやるのも楽しそうだな!(許可が降りればね笑)
これを朗読と音楽合わせて作ってみますね。
これを書いていると自分でも新しい発見があります。あ、この歌詞もしかしたらこうとも取れるよな、とか。そうやってあれこれしている時間が至福。楽しいなぁ。考えて文字を打っている間も楽しいけれど、読み返して推敲している時間も楽しい。私がやりたいことってこれなのかな?とも思う。書くことだけは本当に小さい時からずっとずっとやっていることだから。もっと勉強したいなと思う。
今は音楽家いむいぱぴ子としてやっているが、そのことについても最近とても考える。話すと長くなるのでこの話はまたいつか。

そいでは、読んでくださり有難うございました!!お気楽エッセイも書いていこうと思います!

良い一日になりますように。
ありがとう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?