おばあちゃんの世界とは


1.嬉しかった

先日スーパーに買い物に行った。ショッピングカートを押して中に入ろうとした。その時ちょうど出ようとしたニコおばあさんが、「お先にどうぞ」と、にこにこして譲ってくれた。「ありがとうございます」と会釈して先に入った。出る方が先なのに、申し訳ないと思いつつ。真っ白な髪の毛と、杖をカートにつけている私に譲ってくれた。とても温かい気持ちになった。
翌日近くの整形外科へ、歩く訓練のために杖をついて出かけた。小さな交差点で少し休みたいと立っていると、自転車に乗ったエッチラおばあさんが「すみません」と言って、通り過ぎた。私は笑顔で会釈した。エッチラばあさんは、えっちらえっちらと自転車を漕いで行った。
整形外科の前まで行くと、ヨチおばあさんが二本杖をついてよちよち歩きながら出てきた。「こんにちは。どちらへ」と声をかけてきた。「私も整形です」と答えると、そこから立ち話が始まった。ヨチばあさんは転んで右手の中指の骨にひびが入っていると先生に言われたそうだ。二週間も前の出来事なのに、今日初めて整形に来てレントゲンでわかったと言う。帰り際に「また行き会ったらお話をしましょう」と言う。「そうしましょう」と答えた。嬉しそうに帰って行った。
みな見知らぬおばあさんたちだ。でも今日は何だかとても嬉しかった。


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