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私が棄てた女

これ読んでみてよと患者さんから一冊の本を渡された
題名は私が.棄てた.女
遠藤周作さんの作品だ

いや、気軽に読んでみてなんて言うけど
まず、興味がないし
そして時間がない。
なので遠回りに読めない理由を言って本を患者さんに返したのだが
アンタ、絶対この本好きなはずだから読んでみろよと
患者さんもなかなか引かないので私は渋々この本を家に持ち帰った。
持ち帰ってからずっと机の上に置きっぱなしだったのだか返すにしても少しくらい読んでおくかと思い3日たって初めて目を通した。

わたしが、棄てた、女

なんだこのタイトル。へんなタイトル。

そう思って読んでみたら面白くて全部読んでしまった。

ひとりの男が主人公。
この男は初めから遊びと決めて付き合った女と
初めから真剣に付き合おうと決めた女がいる。

遊びと決めて付き合った女にも好きだと言う
自分が可哀想だと思えるようなエピソードを話すとすぐに女は同情して身体を許す。そのことも男はちゃんと分かっていた。女は子犬のように男を追いかける。男はその子犬のような様子に嫌悪感を覚える。不潔だとさえも思う。
遊びだから次の約束はしない。
でも女の方は会えない男のことを病気になったのではないか、なにかあったのではないかと心配を募らせる。

真剣に付き合いたいと思った女にも好きだと言う。男の失敗したところを見て女は好意から好きという感情に変化していく。
真剣だから男はなかなか手を出さない。
真剣だから信頼関係を築くために手を出さないでいる。女は急に冷たくしたり甘えてきたりする。
男はその態度に愛しさを覚える

遊びと決めていた女なのに男はなにかとこの女を思い出す。

遊ばれた女にとって男は一目惚れの存在だった。
最後の最後まで男のことを忘れなかった。

大まかに言うとこんな話しだった。
これは大まかであって読んでみるともっと深くて
もっと悲しくもっと浅ましい。人間って慈悲深くて自分勝手で冷たくて温かい。

変なタイトルと思ったのに
人生観が変わってしまった。

わたし、いろいろなんだか間違えていたかも。

人を愛するってなんだろう。

ここまで無理やりにでも貸してもらわなければ一生手にすることもなかった本が
出会えてよかった本になった。

あんた、この本絶対好きだと思うから。
って患者さん言ってたけど
あー。好きだったわ。本当に。

神様って平等のようで平等でないね。
努力したからって報われないことが多いよね。
神様っているの?
でも、幸せはすぐそこに絶対あるから。
それに気づく人と気づかない人がいる。
無理やりにでも不幸の中でも人間はその中に幸せを感じる力を持っている。神様が与えてくれたものがあるとしたならばその力なのかもしれない。

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