千葉の高倉健
出会い
用があって千葉駅の周辺を歩いていたときのこと。
ぼくの方に飛行機が突っ込んできた。
あぶない。
そう思う暇もなく、僕の目には驚きの光景が広がっていた。
ゲーセンだ。いや、上に飛行機もある。飛行機とゲーセンのハイブリッド。
一体これは何なんだ。ぼくは一瞬にしてこの飛行機ともゲーセンともいえない謎の建造物に魅了されていた。
まず、この絶妙な傾き加減がいい。落ちそう、だが、落ちない。なんともいえない角度で均衡を保っているのである。この角度のおかげで、あたかもぼくに飛行機が迫りくるかのような、そんな臨場感が生まれている(風に感じた)。
それに、芸も細かい。コックピットの中を覗いてみると……
なんかいるのである。
この「なにものか」はコックピットの中でじっと潜んでいる。かつてこの飛行機を操縦して大空に羽ばたいていたのだろうか。しかし、このゲームセンターに飛行機ごと補足されてしまって、コックピットの中で窒息してそのままミイラ化したのだろうか。なんともあわれな生涯。
そんなかつての飛行士のつぶらな瞳がぼくをつかんで離さないからこそ、ぼくはこの謎のオブジェに魅了されたのだろうか。
これから綴られる文章は、なぜぼくがこの千葉のゲーセンのオブジェに魅了されたのか、ただひたすらそれを考えている5000文字である。だからあらかじめ断っておくと、これを最後まで読み切っても本当に得るものはない。分かるのは、ただ、ひたすらに、ぼくがこの千葉のオブジェが好きなんだな、ということだけである。
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